お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

ゆらゆら。

今更ながら、お盆の話。沖田と桂さん。
ミツバ編回想のつもりが、失敗ぎみ(死)。






 盆も正月もなく仕事がある職業は、意外と多い。
 たとえば病院の看護婦。急患は、いつでもやって来る。(ちなみに医師は待機中は休みも同然である←偏見)
 たとえば鉄道員。休日でも電車に乗るヤツはいる。
 たとえば宿屋。休日なんて言うのはむしろ稼ぎ時だ。
 たとえば武装警察。盆だからといってゆるむ態度を見せれば、テロリストをつけあがらせることになる。
 そんなわけで、沖田はお盆に帰省することができなかった。
 平隊士ならともかく、一番隊の隊長ともなれば、彼にしかできない仕事が増える。何より、沖田がいるかいないかで、戦力そして抑制力が格段に違ってくるのだ。

『すまねぇ。本当にすまねぇなぁ、総吾。』

 姉の初盆に帰省できない沖田に、心底申し訳なさそうに、近藤は頭を下げた。土方が止めなかったら、部下の自分に土下座する勢いだった。
 参謀がテロリストに抱き込まれ、真撰組を頭からひっくり返すような事件が起こってから、まだ日は浅い。出した犠牲も少なくはない。
 その状況で、自分に半休を出すだけでも精一杯だったのだろう。局長の近藤と副長の土方は、休みも取らずに働いているのだ。
 それ以前に、沖田の中に近藤を恨む思考など、かけらも存在しなかった。
 むしろ、半休だけでも自分に許してくれたことに、感謝したい気持ちでいっぱいで。
 いや、訂正。
(なんでアイツは仕事にかまけて、姉上に手を合わせることもしやしねーんだ土方死ねコノヤロー。)
 自分の生き方を曲げられず、だからこそ不幸になるかもしれない道にミツバを添わせなかった土方らしいっちゃらしい。
 一方で、ミツバの死後にまでその姿勢を貫かなくてもいいだろうとも思う。
 位牌を胸に抱いて、聞こえてくる念仏を右の耳から左の耳に流しながら、ぼんやりと沖田はそんなことを考えていた。
 屯所にも、近藤の指示で山崎が用意したナスやキュウリの牛馬がある。けれどそれは、殉職した隊士達のものであって、ミツバのものではない。
 半休では、ミツバの墓のある武州に帰ることも難しい。
 だからこうして、姉を荼毘に付してもらったこの寺で、唱えられる念仏を聞いているのだ。
 不謹慎とは思ったが、欄干にもたれかかって外を眺める。念仏はさらに遠くなり、耳をヒグラシゼミの鳴く音が満たす。
 太陽はとっくに西に傾き、世界は朱に染まりつつあった。
 傾いた日差しが作る長い影。気だるい暑さ。
 時折吹く風に煽られながら、沖田はだんだん眠気を感じてくる。
(姉上………。)
 頭の中に、ぼんやりと姉の姿を思い浮かべる。 
もともと信心深いタチではない。こうやって、思い馳せる方が、念仏を唱えるよりよっぽど供養になるのじゃないか、と、眠りの世界に引き込まれかけながら考えたとき。
「っ!」
 閉じかけた視界の先に映ったものに、沖田の意識は急激に覚醒した。
 なんで。
 まさか。こんなところに。
 でも、目の端にとらえたのは、確かに。
 次の瞬間、沖田は走り出していた。


 寺の裏手は墓になっている。
 が、この時間に墓参りにこようなんてヤツは、よほど物好きか、さもなきゃ明るいうちに参れないほど後ろ暗い何かがあるのだろう。
 沖田が見つけた後ろ姿は、前者でも、後者でもあるように思えた。
 影を追って、墓のさらに奥まで走る。境界を示すかのように生い茂った茂みをぬけると、意外にもそこは空き地になっていた。
 飛び出しそうになった体を、慌てて引っ込め、茂みに隠れようとしたが。
「………なんだ、お前か。」
 時すでに遅し。
 錫杖を右手に身構えた桂が、沖田の姿を確認して、すっと緊張を解いた。………って。
(解いてどうすんでぇ。)
 沖田は敵だ。攘夷志士・桂小太郎を捕らえようとする、幕府の手の者だ。
 それなのに。
「奇遇だな、こんなところで。」
 桂は警戒する風でもなく、地に膝をついて何かの作業を続ける。その側には、いつものように、白ペンギンが風呂敷を持って付き従っていた。
「………何やってんでぃ。」
 不機嫌にそうつぶやきながら、沖田は桂の側に寄った。
 白ペンギンの視線が自分に注がれる。何かおかしな動きがあったら、すぐに対処できるように、意識が向けられているのが判る。
 ペットですらこうだってのに。
「火を焚くのだ。これからな。」
「はぁ?」
 警戒のけの字すら見せずに、桂はさらりと、しようとしている事を口にした。ってちょっと待て。
「ここで放火かぃ。そいつは見過ごせねぇなぁ。」
 腰の刀に手をやった。にじみ出る殺気に、けれど桂はこちらを向いて顔をしかめたのみ。
「今日は、止めておけ。」
「なんでぃ。目の前で犯罪を見過ごせってのかぃ?」
「犯罪じゃない桂だ。」
「意味がわかんねぇでさ。」
 剣劇を期待して昂ぶった空気も、桂のマイペースっぷりに霧散してしまう。はぁ~っと肩を落として、沖田は束から手を離した。
 ここまでマイペースにこられると、相手にされないことに怒る気にもなれない。
「放火じゃないんなら、何なんで?」
 側によって、しゃがみこんだ。見れば桂は鉄だかでできているような、丸い広い桶を置いて、そこに木ぎれと藁みたいなモノをミニキャンプファイヤーのように組んでいる。
「なんでぃその、藁みたいなの。」
「まこもを知らんのか?」
「まこも?」
「ハナガツミともいう、イネ科の植物なのだが。」
「知らねー。」
「嘆かわしいな。天人の侵略以来、日本の古き良き文化が少しずつ廃れていく。利便性だけでものを考え、様々な行事や事柄にこめられた一つ一つの意味すら知らず、脳天気なお祭り騒ぎに走る。世も末だ。」
「携帯食にんまい棒選ぶようなヤツに言われたくねぇでさ。」
 ちゃっかり利便性を追求していることをつっこんでみたが、桂は意に返さずに言葉を続ける。
「お前まさか、送り火も知らぬのではあるまいな?」
 というか、ツッコミガン無視だった。
「それぐらい、知ってまさぁ。………と。」
 半ば呆れながら答えた沖田は、すっと上半身を後ろにそらした。目の前を、不快な音と共に、小さな黒い虫が通り過ぎる。
 舌打ちをして、片手を伸ばした。予測のつかない動きで飛ぶそれを、素早く握りつぶす。
「藪蚊か。多いからな。」
 桂はそう言って、後ろを振り返った。
「………構わないだろうか、エリザベス?」
『桂さんが、それでいいなら。』
「なんでぃ、てめーら夫婦かい。」
「夫婦じゃない、桂だ。」
 目的語不明のままのやりとりを経て、桂は懐に手をやった。思わず警戒する沖田に放られたそれを、反射的に受け取る。
「………虫除けスプレー?」
「差しておけ。エリザベスのだ、勿体ないが貸してやる。」
 ノズル押したら爆発するとか。
 実は毒とか。
 自分たちの関係を思えば、そんな疑惑は山ほど出てくるけれど。
「どうした。蚊に食われてもかまわんのか?」
 企みとか考えていなさそうな顔で、桂は首を傾ける。いや、こいつは普段から仏頂面だった。
「俺ら一応敵同士なんですけど。」
 気を遣われる必要はかけらもない。
「確かに新撰組はカスだし芋侍だし最近出すぎだしいつも死ねとか思っているがな。」
「いや、ここ最近はアンタの方が出過ぎでさ。俺らまるまるコミックス一巻ぶんくらい出番ねぇし。」
「俺なんか、おそらく次の巻にも出番がないぞ。コミックス3巻ぶんだ。」
 機嫌が悪いんだか判らない。口調も表情も、無愛想な桂しか、沖田は知らない。
「だがな。」
 否定接頭語を呟いて、そして桂は黙り込んだ。
「なんでぃ?」
「………………。」
 続く言葉を促すが、桂は黙ったまま。
「言いかけたことはきちっと言えよ。」
 そう突っついてみるが、応える様子はない。
 あきらめて、沖田は虫除けスプレーのノズルを押した。噴出口を桂に向けて。
「うぉっ? 何をするっ?」
「ちゃんと出るか、実験でさぁ。」
「いきなり押すな。他人に向けるときは特にだ。目に入ったらどうする気だ。」
 少し怒ってるような気もするが、スプレーの中身をかけられて、動揺する様子はない。毒ってのはなさそうだ。
 そう判断して、今度こそ沖田は、虫除けスプレーを自分に向けた。独特の薬の匂いと、ひんやりする感触が体を包む。
 それを見届けて桂は、白ペンギンの持っていた風呂敷を受け取り、結び目をほどく。
 中から出てきたのは、色とりどりの折り紙で折られた、舟。それがたくさん、山のように。
「なんだこりゃ?」
 一つを手にとって、しげしげと眺めた。折り目がそろっている。が、何度も折り返した跡がある。
「お前は、五山の送り火を見たことがないのか。」
「五山? どこの山でぃ。」
「京だ。大文字の送り火と言った方が、判りやすいか?」
「あー何となく。それで?」
「京の送り火は、都を取り巻く五つの山で行われる。一番有名なのが如意ヶ岳の大文字だが。その他にも四カ所で、送り火が焚かれる。うち一つに、舟形がある。」
 饒舌だな、と沖田は思った。
 仏頂面なのは変わらない。けれど、取りまく空気が違う、ような気がする。
「舟の形を取る由来は幾つかあってな。 承和の頃に唐から帰還する途中の僧侶が暴風雨に遭い、念仏を唱えることで無事に帰還できたという故事に寄るのだという。それと、もう一つ。」
 折り紙の舟を、桂は一つ一つ、鉄の桶に置いていく。いっぺんにぶちまけりゃいいのにと沖田は思ったが、口には出さないでおいた。
 桂の中では、こういう手間を取ることに、意味があるのだろう。

「此岸に戻ってきた魂を、彼岸に送る舟でもあるそうだ。」     

 沖田は手の中の舟に視線を戻し、空いている方の手で別の舟を拾い上げた。最初のものと同じ、何度も折り返してある折り目。また別のモノも。
 それが、たくさん。
「一人で全部折ったんかい?」
「一人ではない。エリザベスも折ってくれた。」
「攘夷党の連中は?」
 桂はまた、黙り込んだ。
 さっきから、白ペンギンの視線が鋭く、そして陰険なものを孕んでいる。警戒と言うより、余計なことをとでも言いたげな目つきだ。
 それを痛いとか思うような沖田ではないが。
 桂の作る沈黙を、何となく壊す気にもなれなくて、また沖田は舟に視線を落とす。
「………返せ。火をつける。」
 やがて、沖田が持っている以外の舟を敷き詰め、桂はそう言った。
 渡さない理由もないので、素直に返す。桂はそれも、そっと桶の中に置いた。そして懐から、火打ち石を取り出す。
「うわ、今時火打ち石なんて骨董屋でも見かけねぇでさ。」
「エンディングのめ組の出動シーンで、辰五郎の妻のおさい殿が切り火をしているだろう。」
「上様が暴れまくってる時間は、たいてい昼寝してっから知らねぇや。」
「人の朝食を邪魔した後に、優雅なことだな税金泥棒。」
 火打ち石を、桶の上で構える。そして桂は、ふと隣に来ていた白ペンギンに顔を向けた。
「あまり寄るな、エリザベス。火傷をしてはいけない。お前もな、沖田。」
「………何で。」
 さも当然のように促された注意に、沖田は眉をひそめた。
 つい自分も乗ってしまったが。
「こんな風に、のんびりたき火する関係じゃねぇだろ。」
 もっと警戒すべきなのだ、桂は。
 それを、警戒どころか気を遣おうとしている。まるで、自分など取るに足らない存在だと思っているように。
「今ここで、あんた捕まえてもいいんですぜ。」
 そう言って、再度刀の柄に手をやった。殺気を、滲ませながら。
 けれど。
「今日は止めておけと、言っただろう。」
 前に出ようとする白ペンギンを片手をあげて制する。その言葉にも表情にも、敵意は感じられない。
「なんで………っ。」
「今日は、お前も誰かの留守参りに来たのだろう。」
 桂の視線は、沖田の胸元に向けられている。はっとして懐を見れば、着物の袷から位牌が覗いていた。
「そういう日くらい、血生臭い思いをするのはよせ。」
 眼を細めて、桂は言う。
「想ってやれ。故人もその方が、喜ぶのではないか?」
「……………っち。」
 小さく舌打ちをしてから、沖田はそっと、束から手を離した。


 石を打ち付けて散った火花は乾燥したまこもと折り紙の舟に飛び、あっという間に燃え広がった。
 すでに薄暗い中、朱色の炎が揺れる。
 炎を挟んで向かいにたたずむ桂は、ただ黙って揺らぐ送り火を見つめてた。意外と色素の薄い瞳は、踊る炎の光を受けて、金色に揺らめいている。

『想ってやれ。』

 今桂は、何を、誰を思っているのか。
 親しい間柄の万事屋メンバーも、志を同じくする仲間も連れずに。ペット一匹だけを連れ添わせたまま。
 一人で。
「………やめた。」
 小さく一人ごちて、沖田は視線を炎へと移した。
(姉上………。)
 思考はなめらかに、柔らかな笑顔へとたどり着く。
 なんの、抵抗もなく。
(こっちはあいかわらずです。近藤さんは、姐さんにアタックしてはフられ続け。土方のヤローは変なモンに引っかかったあげく、近藤さんを危険にさらしやがりました。その後も変なモン消えてなかったなー。姉上見たらきっと幻滅すること間違いないでさ。)
 笑おうとして、けれどその笑いは形を作る前に、すっと引っ込んだ。
(………やべー。)
 この、穏やかな空気を壊したくないと、思う自分に舌打ちをする。
 くれたのは近藤でも土方でも山崎でも他の仲間でもない、捕らえなきゃいけない、テロリストだってのに。
(こいつのせいだ。)
 敵なのに、気を遣おうとするから。
 もう一つ、舌打ち。
 場の空気を乱しそうな音に気づいていないらしい桂をちらりと見て。
「………ばーか。」
 声になるかならないかの、かすかな声で呟く。
 桂は変わらず、炎を見つめている。その後ろの白ペンギンも、たぶん。(何せでかいのが腰もおろさず突っ立っているので、暗いところにある表情が読めない。)
 なんとなく。
 穏やかな気持ちになって、沖田はそっと口の端を持ち上げた。


「ばーかじゃない、桂だ。」
「なんでい、聞こえてたのかよ。」





                        ~Fin~
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by wakame81 | 2007-09-13 09:11 | 小説。  

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