お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

あしたはくるから・壱

174訓の、「きびだんご一つで天竺にまで行ってしまう桂さん」を見ての妄想小説。
子供時代。
てか長め。



 晋助が、川に落ちた。
 夏の暑い盛りのことだし、阿武川のような大きな川に流されたのでもない。溺れて水を飲んだのでもない。ただ、河原で遊んでいて足を滑らせただけのことだ。
「たいしたことねーよ。」
 そう言う晋助の言葉は、確かに嘘ではないだろう。が。
「頭を打ったのだぞ、大したことないわけがないだろう。」
 晋助の布団の側できっちり正座しながら、むすっとした顔で小太郎はそう言った。
「意味がわかんねーよ。たいしたことねーわけがねぇってなんだよ。」
「頭部というのは、人の神経の中枢がある場所だ。打ち所によっては四肢に麻痺が出たり、言葉に傷害が出たり、最悪死に至ることもある。今は大丈夫に思えても、後からどんな後遺症が出るかわからない。油断大敵ということだ。」
 それは、つい最近、松陽先生から教わったことだが。
 それをすらすらと言えるこいつが恐ろしい。てかどんな頭の作りしてんだ、と、小太郎の後ろであぐらをかいていた銀時は思った。
「長ぇよせりふが。てか、どんな頭の作りしてんだテメェ。」
 晋助もそう思ったらしい。ふてくされた顔でそうつぶやく。
「一昨日先生が教えてくれたことだろう。銀時じゃないだろうに、まさかもう忘れたというのか。」
「それが今ここですらすらと出てくるって方がおかしいだろ。」
「ていうか、今さりげに俺のことバカにしなかった? 俺じゃないだろーにってどゆことよ?」
「学んだことはいつ何時であろうと必要なときに活かさねば意味はないだろう。」
「みまいに来てそのせりふかって言ってんだよ俺は。」
「おーい、俺のこと無視ですかー。」
「安静が必要なのにじっとしていないからだ。お前がおとなしくしていれば、俺とてこんな説教じみたこと言わないですむ。」
「じゅうぶん説教になってんだろうっせーよヅラ。」
「ヅラじゃない桂だっ。」
 晋助の胸ぐらをつかみかねない勢いで、小太郎は声を荒げた。晋助も負けずに、小太郎を睨む。その瞳に、退屈を追い払えるという期待がにじむ。
「説教をされたくなかったら、おとなしく寝ていろっ。」
「だからそれが、みまいに来たやつのたいどかよっ。」
「お前こそ、絶対安静が必要な者の態度じゃないだろうっ。」
「せったいあんせーなんて必要ねぇよ、たかがデコ切っただけじゃねーかっ。」
「あれだけ血を流しておいて何を言う。お前のことは、おばさんからもよく頼まれてるんだぞ俺は。」
「勝手に年上ぶるんじゃねーよ、同い年だろっ。」
「俺の方が生まれが二ヶ月早いだろうっ。それに、お前去年大病をわずらったことを忘れたのかっ。」
「俺よりも病弱なやつに言われたくねーよっ。それに二ヶ月じゃない、一ヶ月半だろっ。」
「侍が細かいことを言うなっ。」
「てめーが言うなっ。」
「元気だねーお前ら。」
 ヒートアップする言い合いに、銀時はため息をつく。
 川に落ちた晋助が頭をぶつけて額を切って、血が止まらなかったときは小太郎だけじゃない、自分だって真っ青になったが。ここまで元気なら、心配する必要もないだろう。
「ていうかさ、そんだけどなって頭痛くなんないのお前?」
「そうだぞ晋助、そんな大声を上げては傷にさわるだろうっ。」
「だれがどならせてんだと思ってんだよっ。」
「おやおや、元気そうで何よりですね。」
 音もなくふすまが開いて、穏やかな声が怒鳴りあいに割って入った。それは決して大きな声ではないのに、子供二人の騒ぐ声を軽く抑えてしまう。
「「先生っ。」」
 すっとふすまを閉め、足音も立てず松陽は晋助の側に歩み寄った。小太郎と晋助は、素早く居住まいを正して、正座した松陽に向き直る。
「具合はどうですか、晋助?」
「平気です。こんなの。」
「そのようですね。けれど、無茶はいけませんよ。」
 松陽の言葉に、晋助はばつが悪そうにうなづく。そらみたことか、と言わんばかりの小太郎だったが、振り向いた松陽の顔を見て押し黙った。
「小太郎。心配なのはわかりますが、感情的になっては伝わらないこともありますよ。」
「………はい。」
 素直に小太郎はうなづいた。
 たとえば同じ事を銀時が言っても、二人はうなづくどころか逆ギレして怒鳴り返してくるだろう。
 あいかわらずすげーよなぁ。
 二人を素直にさせる松陽にも、彼には意地を張らず素直になれる小太郎と晋助にも、銀時はそう思う。
「で、用事すんだんだ?」
 銀時の言葉に、晋助がビクッと松陽を見上げた。
 松陽の用事は他でもない。川での課外授業中に晋助にケガをさせた、その謝罪なのだ。
 息子から見てとても厳しい父親は、松陽を咎めたのだろうか。松陽の私塾に通うことを、反対などしないだろうか。そんな心配が、晋助の顔に浮かぶ。
「はい。小忠太殿は、快く許してくれましたよ。」
 包帯を巻いた晋助の頭を、松陽は優しくなでる。
 あからさまにほっとした晋助の顔に、銀時は半分呆れたように息を吐いた。武士の子として晋助を厳しく育てるあの父親が、この程度のケガで怒るわけがない。
「よかったな、晋助。」
 小太郎は素直に、喜んでいるようだ。何か言いたそうに晋助は口を開きかけ、松陽の前だということを思いだしたのだろう、口をとがらせてそっぽを向いた。
「ですが、みつ殿はやはり心配をしていました。ですから、しばらくはおとなしくしておいでなさい。」
「塾に行くのもダメですか?」
「明日になって、頭痛や目眩がなければかまいません。」
 そのためには、どうすればいいか。
 穏やかな松陽の眼は雄弁に晋助に語りかける。
「はい。」
 先ほど同じ事を言った小太郎にあれほど食ってかかったのが嘘のように、晋助はおとなしくうなづいた。


 その後。
 晋助の父親と話があるからと、松陽は銀時と小太郎を先に帰した。
 松陽の私塾であり、銀時の家でもあるその家屋は、村の外れにある。まだ青々とした稲穂が頭を垂れることなくまっすぐに立つ田んぼ沿いの道を上り、すすきやら何やらの原っぱを横目に見ながら、二人は家路を歩く。
 いや、家路って。
「ヅラぁ、いつまでついて来んだよ。」
「ヅラじゃない、桂だ。」
 時折立ち止まっては後ろを振り向いていた小太郎は、銀時の言葉にむっとしたように振り向いた。
「おめーん家、あっちだろ。分かれ道とっくに通り過ぎてんだけど?」
「そんなことは、わかってる。」
 言いながら小太郎はまた、今来た道を振り返る。
「帰りてーならとっとと帰ろよ。」
「そういう訳じゃない。言っただろう、お前一人で片付けをするのは大変だから、手伝ってやると。」
 その言葉に銀時は、家の状態を思いだした。
 縁側には、午前の書き取りの授業で使ったすずりと筆が干してある。河原での課外授業の後にみんなで片付ける予定だったのが、晋助のことでそれどころではなくなったのだ。
 晋助を家まで送るとき、他の子供たちはそれぞれの家に帰された。
 それでも一緒に晋助について行くと言い張ったのは小太郎で。
 さも当然のように松陽について行ったのは、銀時だ。
 誰かが言い出せば、残った子供たちで片付けているだろうが、その誰かこと小太郎がここにいるので、それは望めない。確かに小太郎の言うとおり、このままなら銀時が一人で片付けなくてはいけないのだろうが。
「うわ何その恩着せがましい言い方。てか別に大変じゃねーや、どうせ明日また使うだろ?」
「出したもの、使ったものはちゃんと片付ける。それがそのものに対する礼儀だろう。それに、先生の家を使わせていただいてるのに、片付けないとは何事だ。」
「どーせ俺んちだし、俺がいいって言ってんだからいいだろー?」
「お前が良くても俺が気になる。それに先生だって、良くはないだろう。」
「う………。」
 確かに。誰も片付けなかったら、明日、授業前にお説教されるのは目に見えている。それを考えたら、小太郎が手伝ってくれるのはありがたいのだけれど。
「………だったら、そんな風に後ろばっか見てんじゃねーよ。晋助が心配だったら、ついてりゃいいだろ?」
 小太郎はもう一度振り返る。後ろで一つに束ねた髪が、風に流れるように揺れた。
 いらいらした銀時が口を開くその前に、小太郎は銀時へと視線を戻す。
「先生が、もう大丈夫とおっしゃった。俺がいて小言ばかり言っていては、あいつも休めないだろうし。だから、いいんだ。」
「なんだ、小言ばっかりってのわかってたんだ?」
 わざと顔をにやにやさせてそう言ってみれば。小太郎は真っ赤になって反撃する。
「しっ………仕方ないだろうっ? 晋助が安静にしていないから………っ。」
「でも安静にしない理由は、おめーが小言いうからだよなー。んでもって、いちいち反応するからだよなー。」
「言わせるあいつが悪いっ。」
 ぷいっと拗ねたように、小太郎はそっぽを向いた。
 ぷくく、と銀時が吹き出せば、じろっとこちらを睨む。
「なんだ。」
「べっつにー?」
 にやりと笑って走り出せば。
「待て銀時っ。言いたいことがあるならはっきり言えばいいだろうっ?」
 怒鳴りながら、小太郎が追いかけてくる。
「言いたいことなんてありまっせーんっ。」
「嘘つけっ。」
 捕まったらきっとゲンコが降ってくるだろう。それを思って本気で逃げながらも銀時は、顔がにやけるのを止められなかった。



                                    ~続く~
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by wakame81 | 2007-09-09 21:58 | 小説。  

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