お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

戀唄:6月18日ComicCITY140サンプル

お久しぶりです。
はい、久しぶりのイベント参加ですよ! あいるびーばっく!
6月シティは桂さんのお誕生日です。誰が何と言おうともそこは譲らぬ。ということで、今年は、現代パロの沖田くんと桂さんです。
去年のスパコミで委託させていただいた、「二つの恋の物語」の、二人です。大学生沖田くんと先輩桂くん。
「宣戦布告Part2」から、いろいろあって、一年かけての二人の二人のなんやかんやを、坂本や銀さんや土方さんや高杉やエリザベスなどが、見守ってく話です。あ、高杉見守ってない。なんやかんやのうちの一つです。
宣戦布告Part2

夜明けの晩に

「little sweet Valentin'sDay」

を、収録してます(一部加筆修正)
あ、「little~」はこっちに上げてなかった。あとで、あげなおしますね。

設定として、銀高桂、桂モブを含みます。
また、土ミツを、含みます。
モブが、差別的発言をする場面があります。

以上、お気を付けてください。




あ、当日は、東7ホールM18b にて、お待ちしてます。
表紙こみ124ページ(……) 全年齢指定。
お値段800円になりまーす。
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「またか」
 卒業証書を持って、その足で会いに行った。沖田が高校三年の一年間、ずっと面倒を見てくれた家庭教師は、無事の卒業に祝いの言葉をくれてから、差し出された第二ボタンに眉をひそめた。
「何度言ったらわかる。貴様のそれは、勘違いだ。ただ、近藤や土方と相入れない俺への苛立ちを、すり替えているだけだ」
「冷静になれ」
「貴様を好く女子は多いだろう。もし、本当に男がいいのだとしても、俺である必要がどこにある」
「目を覚ませ」
 流れる否定の言葉の、息継ぎを狙って、口を塞ぐ。突然のキスに、桂はよろめいた。
「……なっ、」
「何度考えたって、わかんなかったんでさぁ」
 至近距離の琥珀が、大きく見開かれる。そこに自分が映り込むことが、ゾクゾクするほど嬉しい。
「アンタが欲しい。アンタが好きだ。つきあってくだせぇ」
「だからそれは、勘違いだ」
 しかめた眉が、苦しそうだった。いつもの、呆れたような顔とは違う。
「夏に、変なものを見て、舞い上がっているだけだ」
「知ってたんですかぃ」
 やはりか、と、吐き出した桂の息が苦い。眼が少しだけ伏せられて、もう一度こちらに向けられた時には、苦さは既にいなくなっていた。
「だからそれは、勘違いだ」
 きっぱりと、言い切られる。壁際に閉じこめているのに、いっそ潔いほどに、まっすぐなまなざしだ。
「どうして、言い切るんですかぃ」
 そのまなざしを、受け止める。
 あぁ、この感覚だ。
 桂の知人のものという道場で、何度か竹刀を向け合った、あの時の痺れるような緊張感が、心地いい。
 もちろん、沖田が桂に向ける感情は、ただそれだけではない。
「今キスして思った、もっとアンタが欲しい。他の誰にも、こんなこと思いやしなかった。あれを見て煽られたってなら、こんな半年以上も続くようなものなんですかぃ」
「……手に入っていないから、執着が長続きしているだけだろう。いずれ、冷める」
「じゃぁ、冷めなかったら信じてくだせぇよ」
 きょとんと瞬いた顔が、年上と思えないほどかわいかった。食べてしまいたい。
「俺とつきあってくだせぇ。期限つき、そうだ一年間でいい。それで、俺が飽きなかったら、冷めなかったら、信じてくだせぇよ」
「貴様一年間も棒に振る気か」
 返された台詞はとにかく苛ついた。ムカつく口を、塞いでやりたい。
「実験もしないで、言い切るなんてアンタらしくないですねぃ」
 む、と押し黙る。考え込むように伏せられた視界から、自分がはみ出されるのは面白くない。もっと、自分だけ見ているようにさせたい。
「……期限つき、だな」
 わかった、と、確かに頷かれたことに有頂天になりながら、頭のどこかでやっぱこの人ちょろい、と思わずにはいられなかった。放っておけない。ちゃんと、自分だけのものにしたい。
「それで俺が、やはり信じられなかったらそれまでだ」
「信じさせてみせやすぜ」
 とどのつまり、沖田総悟は、桂小太郎に、そこまで惚れてるし、揺さぶられるし、欲しくて仕方ないのだ。これを恋と言わずして、なんというのか。
「約束、でさぁ」
 もう一度、口づける。舌を入れようとしたら仰け反られて、後頭部を壁にぶつける。痛そうに抱えた頭を捕まえて、今度こそしっかりと、唇を重ねた。



 こうして、二人はコイビトになった。



《七月》


 突然の夕立は、だいぶ弱まったようだ。聞こえなくなった雨音に、坂本辰馬はほっと息を吐いた。願わくば、次の授業までに、またぶり返すことがありませんように。
 向かいに座っていた青年が、ぶるっと肩を震わせる。
「冷やいかえ?」
「Yes」
 急に冷えた、と流暢な英語で返す彼は、カナダからの留学生だ。上着でも羽織ればいいのに、彼は肩を剝き出しにしたまま、ポットからカップにお湯を注いで、インスタントコーヒーを溶いている。彼のルームメイトとは正反対の姿に、思わず噴き出した。
「What?」
「いや、すまん、なんちゃーないんじゃ」
 と言われて、納得できるものでもなかったようだ。さらに聞かれて、素直に両手を上げる。
「おんしとあいつ、正反対ながに、よおルームメイトやれてるなぁと思い出してのう」
 その答えに、彼も噴き出した。話題の人物が聞いたら、きっと腹を立てるだろう。
 それでも噴き出さずにはいられないほど、彼と彼のルームメイトはちぐはぐなコンビなのだ。
 絶対コーヒーなど飲まないような、和風もの好きのルームメイト。そもそも、彼の流暢な英語が、頭が良いはずなのに全く聞き取れない。おかげで彼の日本語筆談スキルは天井知らずである。ついでに、彼の本名は別にあるのに、いつまでもエリザベスと呼ぶ。新歓コンパでの彼の女装が、そんなにインパクトあったか。いや、あったけれど。
 おかげで、他のメンツまで、彼をエリザベスとつい呼んでしまうくらいだけれど。
「By the way、」
 と、エリザベスが口を開く。運動神経のいいはずの彼のルームメイトが、昨日また、サンダルをひっかけて走って転んだ話だ。またか、と、声を上げて笑っていると、がらりと部室の引き戸が開かれた。思わず、笑いが凍る。
「……ヅラ?」
 噂をすれば影。帰ったはずの彼のルームメイトが、びしょ濡れになって立っていた。
「帰ったがじゃなかったかえ?」
「ヅラじゃない桂だ」
 どうやら、笑いの理由までは、聞こえていなかったようだ。顔はむすっとしているが、いつものことなので坂本は気にしない。
「What's the matter、Katsurasann?」
「え、何だってエリザベス?」
 このレベルで、聞き取れないのである。さっきの話題が蘇ってきて、ごまかすように坂本は棚へ向かった。眼の端で、エリザベスがペンを取るのが見えた。
「夕立、えっと、急な雨に降られてな。あぁ、駅に向かう途中でだ」
「大変じゃったなぁ」
 奥の棚から発掘されたバスタオルを放る。桂はそれを、テーブルの上に広げた。いや、使い方微妙に違う。
「助かった」
『というか、ぬれたなら家に帰ればよかったのに』
「こっち戻る方が、近かったのでな」
 色が変わるほど濡れたカバンからは、案の定、濡れてよれよれになったテキストやノートが出てくる。それをバスタオルで包んで水気を吸い取りながら、テーブルの上に並べる。まだ何かごそごそカバンをまさぐる桂の頭を、エリザベスが別のバスタオルで拭き始めた。
「あったあった」
 探し物は、どうやらUSBメモリだったようだ。
「坂本、ノートパソコン貸してくれ」
「いいけど、何じゃこれ? エロいファイルか?」
「明日提出のレポートだ」
 ジト目で見られる。冗談だったのにぃと笑いながら、メモリを受け取った。パソコンに指してファイルを開くと、中を見た桂は、ほっと息を吐きだした。
『家にバックアップしてなかったでしたっけ』
「今日、学校で手直ししててな。無駄にならなくて良かった」
 抜いて返すと、大事そうにペンケースに仕舞いなおす。それからもう一度、テーブルの上の濡れた紙類を、広げ始めた。エリザベスがドライヤーを見つけ出して渡すが、それで桂が乾かすのは自分の髪ではない。
「ごわごわになるんやか?」
「思い切り濡れてるからな、仕方ない」
「ていうかヅラ、おんし時間大丈夫かぇがか?」
「うーん、微妙だな。帰って着替えないと、リーダーの所にも行けないし」
『リーダーさんなら風呂くらい貸してくれそうですが』
「さすがに、家庭教師のバイト先で、風呂を借りるほど俺も鉄面皮ではないぞ」
 それに、そんな事をしたら、怒る相手がいる。そう坂本は思ったが、桂がそれに思い至っているかどうか。
 ふと坂本は、桂の姿をじっくりと眺めた。
 冷えて白くなった頬に、しっとりと濡れた髪が一筋、張り付いている。長い彼の髪は身体にも、艶を纏って絡みついていた。びしょ濡れのワイシャツは細い身体のラインを浮き上がらせている。薄い水色のシャツ越しに、なだらかな胸板や引き締まった腹が、透けて見える気がした。
「何だ?」
 首を傾げた桂は、坂本の視線の意味にも、エリザベスが唾を飲み込んだ音にも、気づいている様子はない。これはあかん、と、坂本は時計を見上げた。三時四十分、まだあの坊やは授業中だが、仕方ない。
 スマホを取り出して、パシャリ、とボタンを押す。突然のフラッシュに、桂は顔をしかめた。何やってる、との疑問を無視して、ラインに写真を張り付ける。
「おい、今何をした」
「写真、見せてやろうと思ってな」
「見せるって、誰に」
 坂本が答える前に、テーブルの上に転がったままのガラケーが鳴り出した。桂はちらりと目で見て、また坂本に向き直る。
「出てやりよらんがか?」
「今のはメールだろう」
「見てやった方がえぇぞ?」
 眉をひそめながら、桂はガラケーを手に取る。メールの内容を見て、「彼奴何やってんだ」と顔をしかめた。
「総一郎くんからじゃろ」
「何でわかる。ていうか、彼奴授業中だろう、何でメールなんか送ってくるんだ」
「わしが、おんしの今の写真送ったからじゃろー」
「は???」
 首を傾げている。意味が解らんとか、名前が間違ってるとか呟いているので、送られてきたメールを覗き込んだ。
『あんた何エロ本先輩やエロザベス先輩に、エロい姿さらしてんですかぃ』
「あっはっはっはっはっはっはっは」
 テーブルをばんばん叩く。桂から、胡乱気な視線が注がれてしまったが、仕方がないだろう。ちなみにエリザベスは、「Elozabeth?」と、こちらも解ってないようだ。日本語って難しい。
「というか、なんてメールを送ったんだ」
「ラインぜよ。えーっと、これどう思うってのう」
 とりあえず、状況説明は彼の年下のコイビトにも必要だろう。ぽちぽちと、ラインに夕立に降られたらしいことを説明する。ピコンと帰ってきた返事は、「あげねーですからねぃ」と、しっかり釘を刺しに来ていた。
「年下の男の子は可愛いのぅ」
「何の話だ。貴様も彼奴もエリザベスも、こそこそと」
 エリザベスもラインを開いている。ラインには、身の潔白を証明する言葉が並び始めた。それを見た桂は、ぷいと唇を尖らせている。
「さみしいのか、ヅラ? おんしもスマホにすればいいがやき」
「普通の携帯で充分だろう。あとヅラじゃない桂だ、あとさみしくなんかない」
「スマホにすると、おんしの好きな、「ねこあつまれ」のゲームができるぜよ」
「~~~いいんだっ。このままで充分だ。あとスマホわかりづらい」
 むすっと眉を寄せた桂は、まだ生乾きのテキストをカバンに戻し始めた。
「ヅラ? 何しとるんじゃ」
「何って、見て解らんか。帰る準備だ」
 きょとんと眼を瞬かせてから、「は?」と変な声が出た。エリザベスも、手を止めて桂を見つめる。
「時間が惜しい。家に帰って着替えないと」
「おんし、その恰好でいぬる気か?」
「It's dangererous、Katurasann‼」
「でじゃ?」
 惜しい。ではない。慌てて坂本は、どう止めるか思考を走らせる。咄嗟に出た答えを、慎重に検討する時間はない。素早く、スマホに指を走らせる。
 反応はすぐに出た。またメールの着信を告げるガラケーに、桂があの馬鹿、と呟く。
「……坂本、貴様何を彼奴に言った」
「おんしが、その恰好のままいぬるって」
 ラインを見せようかとも思ったが、その前にメールの追加が来る。『アンタバカですかぃ』に続いて、『無防備すぎる』『信じられない』そして、『一緒に帰るからそこで待ちやがれ』。
「……授業中だろう」
「教育心理学1だっけ? 大教室やき、気づかれんんろう」
「真面目に授業を受ける気があるのか?」
「総一郎くんにとって、授業よりヅラのが大事なんぜよ」
「あの馬鹿……っ」
 桂がカバンを引っ掴む。その手を、エリザベスが遮った。強い琥珀の瞳と、つぶらな眼と、視線がぶつかり合いかけて、どちらかが逸らす前にガラケーが鳴った。今すぐ帰るらしい、と坂本が打ってから、タイムラグが殆どない。さすがである。
 今すぐ帰るなら自分もこのまま授業をサボる、など、きっと記されてあったのだろう。桂は再び、「あの馬鹿……っ」と呟いて、カバンから手を放した。
「まぁ冷えたじゃろ、あったかいもがやきも飲きいけ」
 エリザベスも頷いて、桂のために緑茶のティーバッグを取り出す。ばつの悪そうな顔でなかなか腰を下ろそうとしない桂に、坂本は首を傾げた。
「座らんがか、ヅラ?」
 まさかまだ、年下のコイビトを待つことに抵抗があるのだろうか、という不安を滲ませないようにした問いかけへに、桂は微かに顔を赤くして答えた。
「尻が濡れていて、座ると気持ちが悪い」
「「…………。」」
 今のやり取りは、絶対彼の年下のコイビトに知らせてはならない。坂本は、おそらくエリザベスも、そう強く決意した。凶暴な馬に蹴られる趣味は、これっぽっちもないのだ。


《十月》

「で?」
 猪口に新しい酒を注ぎ、高杉は話題を変えた。
「今日の目論見は、達成できたのか」
「ばれてたか」
 銀時は悪びれず、舌を出した。ばれいでか、と、軽く睨む。
「どーだった? 沖田くん見た感想」
「斜に構えたガキ」
 銀時は盛大に吹き出した。奴の口に、ゲテモノな酒も甘味も入ってないタイミングで、本当に良かった。
「やー歯に衣着せないねー」
「それ以上、どう言えってんだ。坂本やヅラのルームメイトらとたむろって通り過ぎただけだぞ」
「うんそうなんだけどねー」
 笑うついでに咳込んで、甘ったるい酒に口を付ける。
「初見の感想聞きたかったーていうか、深く顔つき合わせたら口論始めそうなんだもんおめーら」
「まぁ、否定はしねェな」
 桂とつきあっているという、後輩。
 銀時は沖田総悟を大きく評価しているようだが、高杉にはどうも、そこまでの逸材とは思えない。ただの、ガキだ。
「その、ただのガキってのが、いーんじゃないかなーって」
「恋愛モノのテンプレって奴だな。地味で平凡な主人公が、なぜかもてるとかいう、普通を自称する読者受けを狙う、よくある手だ」
「まーちょっと、素直じゃないところとかあるけどねー晋ちゃんに比べたらかわいいもんだし」
「晋ちゃん言うな。それがどうした」
「でも、ヅラ、竹刀握ったんだぜ」
 顔を上げた。
 赤茶の瞳は、思いの外まっすぐに、高杉を見つめている。
「まぁ沖田くんがおねだり上手の弟気質ってのもあるだろうけどさ。そうやって外堀埋めていけば、何か変わんじゃねぇ?」
「外堀、ねぇ」
 クック、と笑う。
 銀時の言うとおり、普通であることが、桂の何かの救いになることもあるだろう。
 けれど、普通であるだけでは、立ち向かえないものもある。
 店員を呼び止め、日本酒のお代わりを頼む。新しく届いたとっくりを傾けて、高杉は口を開いた。
「それだけじゃ、ヅラをあの家から奪えねぇぜ」
「あの家?」
 あの時の桂の剣幕を、銀時は初めて見た、と語った。高杉は違う。
 もっとずっと昔、あの家に引き取られてきたばかりの桂小太郎は、負けん気と正義感の強い子供だったのだ。
「あぁそうだ銀時。俺も、テメェに言わなきゃならねェ事があったんだった」
「何だよ?」
 直前の話題が話題だったからか、銀時が僅かに身構えたのが伝わる。こんな駆け引きを、此奴との間にするのも、久しぶりだ。
「あのな、」
 そうして話を打ち明ける。目を見張った銀時の顔が、かすかに強ばるのを、酔ってふわふわした頭は楽しそうに受け止めた。



『遅いぞ馬鹿者さっさと出んかぁぁっ!』
 電話口、開口一番これである。キンキンと、耳に残る残響を、高杉は眉間を押さえてやり過ごす。
「……こっちからかけてんだろ、モシモシくらい言わせろよ、ヅラ」
『ヅラじゃない桂だっ』
 今度は耳ガードが間に合った。いや、何て大声だ。曲がりなりにも今現在は、夜、それも深夜になるかならないかの時間で、しかも桂は今、実家に帰っているはずではなかったか。
『全く、坂本からも銀時からも連絡があったぞ、帰ってきてるなら何故俺に声をかけないっ』
 今かけてるだろうが、という言葉を、賢明にも飲み込む。
「それより、今どこだよ。そんな大声出して良い場所なのか」
『俺の部屋だ、大丈夫だろう』
「お前の義兄貴は」
『う…。』
 少し弱気な声が、大丈夫だたぶん、と請け負う。全くもって、安心できない。
「ていうか、俺のケー番登録してなかったろ、変えたから。それとも銀時あたりに聞いたのか?」
『聞いてはいない。だが、非通知でもなくかけてくるなら、貴様だと思った』
 これは、信用なのか。続く、「ただの迷惑電話ならあの大声も良い威嚇だろう」との言葉に、どうにも喜んでいいのか分からなくなる。
『それで。年賀状も俺だけに寄越さず、今更何の用だ』
「根に持ってンのか?」
『うるさい。銀時や坂本には出すくせに』
「…………。」
 解ってンだろ、と、心の中でだけ呟く。高杉との繋がりが現在も続いていることが知られて、困るのは桂なのだ。
『俺に気を使うな、今更だ』
「……今更、ね」
 同性のコイビトの存在を、姉と義兄に打ち明けられないのに? 今だって、深夜の大声を義兄に聞き咎められないか、心配をしているというのに?
『それとも、俺の事なら、あの義兄貴に言い返せるってぇのか?』
「高杉?」
 くぐもった声は、電話の向こうに届いただろうか。小太郎、と、遠くなってしまった呼び名を口にする。
 お互い名前だけで呼びあっていた頃は、桂小太郎は、曲がったことが大嫌いな、向こう見ずな子供だった。今でも正義感が強いのは変わらない。けれど、大人は聞き分ける事を、まっすぐな子供に絶えず説き続けてきた。

 あの道場は、唯一、呼吸が楽にできる場所だった。
 銀時にとっても、高杉にとっても、そして桂にとっても。

「ニューヨーク行きが、決まった」
『!』
 一呼吸おいて受話器から送られたのは、紛れもない喜びの色だった。
『そうなのか、おめでとう! 行きたがってたものな』
「あぁ、やっと向こうでの生活の算段がついた。出発は、来年の四月になるけどな」
『そうか』
「それでな、小太郎」
 目を閉じる。受話器越しに、懐かしい息づかいを感じる。秋の夜風が、酔いに火照った頬を冷やしてくれる。
「お前も、ついてくる気はないか?」
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by wakame81 | 2017-06-13 01:08 | オフライン。  

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