お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

夜明けの晩に

あけましておめでとうございます。
今年は、もう少し、いろいろ動かしたり片付けたりしていきたいなぁと、思っています。毎年思ってますが、はい、がんばります。



年明け一発目です。
現パロ、「二つの恋の物語」「宣戦布告part2」と同じ設定です。
付き合ってるのに、いちゃいちゃ感のない、沖桂です。沖→桂かもしれない。がんばれ沖田。



桂小太郎くん:大学三年生。教育学部。沖田くんは高校の後輩。家を出て、クラスメイトのエリザベスくんとルームシェアをしている。


沖田総悟くん:大学一年生。桂くんは高校からの先輩で、コイビト。大学は桂くんを追いかけて同じとこにした。自宅通い。












 ゴォーン……。

 重く響く鐘の音に、沖田は顔を上げた。覗く首筋を、うなじにかかる髪をかきあげながら、風が通り過ぎていく。
「……さむ」
「ちゃんと防寒しないからだ」
 そう言う同行者は、ニットの帽子を耳元を覆うようにかぶり、口元にはマスク、長い髪を巻き込むようにマフラーを巻き、ロングコートにふかふかの手袋という、隙のない格好である。
「暖かい格好してこいと、俺はちゃんと言ったぞ」
「家出てくる時は、もちょっとあったかかったんでさぁ」
 そっぽを向く。まさか、こんなに混むとは思わず、手を抜いたのは確かに自分だ。
「てーかみんな、物好きですねぃ」
 ため息をつきながら、前方を見上げる。十メートル近い行列が伸び、、その先頭は門を抜けて階段に立ち並んでいる。門から数段上、その先はまだ見えない。
「こんな寒い中、鐘つきに出てくるなんて」
 自分を棚に上げて、ぼやいた。
 この寺院は、ここら近辺ではそこそこ有名なお寺らしい。ちょうど、コイビトであるところの桂小太郎の家から歩いてこれる距離ということで、年越しの夜に初詣に誘ったのは沖田だ。もともと桂は、こっちに引っ越してきてから毎年除夜の鐘を突きに来ているそうなので、便乗して新年デートというわけである。が、正直甘く見ていたとしか、言いようがない。
「てかこれ、百八つに間に合うんですかぃ」
「間に合うわけないだろう。百八番目の鐘はとっくに終わってるぞ」
「え、マジでか」
「マジだ。何しろ、百八番目までは数日前から整理券配るくらいだからな」
 どんだけ盛況なのだ。沖田の実家もそんな田舎ではないけれど、ここまで混んでいた覚えがない。
「百八を超えても、新年の鐘を突くことで気を引き締めて新しい年に臨もうという、心構えが大事なんだ」
 真面目な顔で、桂は答える。相変わらずですねぃ、と、沖田は肩を竦めた。
 カップル、高校生、大学生、家族連れにおっさんの集まり。前に並ぶも後ろに並ぶも、賑やかにしゃべっている連中ばかりだ。時々わぁっと歓声が上がる。だいたい、男同士連れ添っての集団である。
「ただ、理由つけてはしゃぎたいだけのが多い気もしやすけど」
「周りの心構えは、俺の関与するところではないだろう」
 つくづく真面目である。
「じゃぁ、俺の心構えは?」
「ちゃんとお守りは返して、学業成就をお祈りしてくればいい。強制ではないが」
 へいへいと、肩を竦める。
「一応、デートなんだけどねぃ」
 呟きは、聞こえただろうか。
 終電は終わっているので、沖田はこれから桂のアパートに泊まることになっている。ルームメイトが実家に帰っているので、念願の二人きりではある。ただし、そういうことは禁止。
 友人と暮らす家でそういうことをして、居たたまれなくなる俺の気持ちを考えろとは桂の弁であるが、沖田にしてみれば、コイビトが他の野郎とルームシェアしているこっちの気持ちも考えてほしいところだ。
 とにかく、今日は二人きりなのである。一晩くらい我慢してみせようではないか。

 ゴーン……。

 人が多くて賑やかでも、鐘の音はよく響いてくる。
 音がするたびに、数歩ずつ、行列が進む。後ろは何十メートル伸びているだろうか。
「もう少しですねぃ」
「門をくぐってからが長いぞ」
「知ってらぁ」
 せっかく自分を奮い立たせてるのだから、萎えるようなこと言わないでほしい。すっかりぬるくなったペットボトルのお茶を飲み干して、カバンにねじ込む。山門は、もう数メートルにまで近づいていた。
 ふと、思い立ってスマホを開く。カメラを起動して、門に向けてシャッターを切った。並ぶ人の顔が映らないように、角度を気を付けるのは少し面倒くさい。
「またメールか」
「そっちじゃねぇでさぁ」
 一時間前に大量に送られてきたあけおめメールへの返事をしたのは、姉一人だけだ。兄貴分二人へは、その前に年越しそばを見せびらかしたが、さすがに夜勤だけあってまだ返事はない。開いたのはSNSだ。
『初詣なう』
 その一言だけ、写真を添えてアップする。これでよし、とスマホを閉じると、桂がじっと、こちらを見ていた。
「桂さんも、ツイッタやる?」
「いや、いい」
 視線は逸れて、山門へと向けられる。
「あ、ひょっとして、拗ねてるとか?」
 そう思ったのは、直感だった。少しからかうように、言ってみる。
「別に、そんなんじゃない」
 視線は合わない。よくあることだけど、何か引っかかった気がして、腕を掴む。
「なんだ」
 振り向く琥珀は、いつもと同じ静けさをたたえていた。気のせいかな、と首を傾げる。
「よそ見してると、転ぶぞ。参道は急だからな」
 ゴーン…とまた音が響いて、列が動いた。



 長い階段をのろのろと登った先に、本堂がある。手水社はこの人数だからか、みんな省略していた。それまで二列だった行列が、四列に広がる。ここから、少し進みが早くなる。
 本堂へ向かう道の右手には鐘突き堂があり、そこも行列ができている。先にお参りだ、と桂が言うので、そのまま本堂へ上がった。
「何お祈りしやす?」
「言ったら叶わないだろう。というか、何で聞く」
「何願ったらいいか、わかんなくて」
 本心ではあった。欲しいものを、神様仏様にお願いする趣味は、あまりない。努力するのも、最後の一押しも、結局やるのは自分だと知っている。
「ちゃんと進級できるように、とでも祈ったらどうだ」
「桂さんは?」
 琥珀が瞬いて、沖田を見る。
 沖田以上に、神様仏様に祈るような奴ではないと、知っている。まっすぐに、自分の意志を貫き、他の誰かのせいにすることなどない。
 自分のやるべきことを、祈ったりしないだろう。
 かすかに丸くなった瞳が、やがて少し細められた。
「世界平和でも祈っておくかな」
 カン、と響く軽い音は、本堂の鈴の音だ。被さるように、鐘の音が響く。願いのための音が、煩悩を祓う音に、かき消されていく。
 軽く礼をして、お賽銭を投げ入れて、鈴を鳴らす。
 何をお願いしようか、と、手を合わせて、ふと隣を見上げた。
 同じように合わせられた手、伏せられた眼、薄い唇はきゅっと引き締められている。
(世界平和、か)
 本当に、そう祈ってそうだ。俯いた顔は、どこまでも穏やかだった。逆にそれが、沖田の心をざわめかせる。
 桂は自分でやるべきことを、祈ったりしない。では、自分自身にはどうにもならないことは、どうだろう。例えば。
(俺の、心変わりとか)
 祈るだろうか。さすがにない、そう思いたい、けれど。
 前を向く。目を閉じる。桂が何を祈っても。
(俺は、心変わりしない)
 願うのではなく宣言するように、言葉なく呟く。そして顔を上げて、深く頭を下げた。



「お守りは、持ってきたか?」
 お参りの後、寺務所まで移動した。こちらも、お守りやらお札やらなんやらで、混みあっている。
「ありやすぜー、ほら」
 財布から、学業成就のお守りを取り出す。一年経ったらきちんと返納すること、桂が初詣デートを了承してくれた、理由の一つだ。
「本当は、受験が終わったらその時に返納するのが良かったんだぞ」
「それだと長くて三か月じゃねーですかぃ。どうせなら、一年分みっちり勉強のお世話してもらった方がオトクってもんでさぁ」
「お得言うな、罰当たりめ。返納箱は、確かこっちだ」
 そう言って、寺務所の端にまで案内される。桂もカバンから、お守りを取り出した。健康守、と縫い取りされている。それを、両手で捧げ持って、軽く目を伏せて箱に入れた。一年ありがとうございました、とか、言ってるのかもしれない。
「沖田も、早く」
「返さなきゃ、ダメですかねぃ」
「は?」
 形のいい眉が寄せられた。
「返した方が良いに決まってるだろう。だんだん、良い気が薄れていくんだぞ」
「俺小さいころもらったお守り、まだ持ってたりしやすけど」
「それも返して差し上げろ。今度でいいから」
「そっちのはいいんですけど」
「じゃぁ何だ。そのお守りも、ちゃんと返納しろ」
 口を尖らせる。デートの口実くらいにしか考えていなかったけど、やはり、こうしてその場になると、気が引ける。
「どうした、沖田」
「だって」
 マフラーをつかんで、そっと耳を寄せた。
「桂さんから初めてもらったものなのに」
「な…っ」
 マスクで隠された顔は、どう変化したか沖田には見えない。できれば、少しくらい赤くなっていてほしい。
「返すなんてもったいないでさぁ」
 そう、一年前の正月だ。今回のような年越しの夜にではなかったけれど、一緒に初詣に来た。家庭教師を頼んでいた事からごり押しをして、受験のために買ってもらったのだ。
 その時はもう、己の恋心を自覚して、自問自答してそれなりに悩んで開き直って、合格したら告白しようと決めていた。
 押しかけのようにして付き合う前のものだし、プレゼントとしてはカウント外かもしれない。というか、その後の経緯からすると騙し討ちして買ってもらったようなものだ。それでも、いやだからこそ、手放しがたい。
「馬鹿かお前は」
「いーじゃねーですかぃ、俺の勝手で」
 返納しなきゃいけないと、決められているわけでもない。だったら、大事に持っていてもいいではないか。
 沖田の説得に、桂は考え込む。少し身を背けた姿勢が何となくつまらなくなって、「ねぇ良いでしょぃ」と、正面に回り込んだ。ぎょっと、桂が身を引く。そこを捕まえて、前から顔を覗き込む。
「……勝手にしろ」
「やりぃ」
 ぱぁっと笑うと、ぷいっと背を向けられる。
「返納しないなら、行くぞ。新しいお守りを買わないと」
「あ、じゃぁお揃いにしやしょうぜ」
「は?」
 何を言ってるんだと言いたげに、眉を寄せた顔がこちらを向く。うん、さっきよりデートっぽい。にやにやしながら、はぐれないようにと言いくるめて手をつなぐ。
「お揃いって、お守りはそういうものではないぞ」
「でも、お揃いにしちゃいけないってわけでもないんでしょ」
 はぁ、と桂はため息を落とす。強く止められないということは、勝手にしていいことである。数年の付き合いでそう学んでいる沖田は、遠慮なく恋愛成就のお守りを二つ買い、一つを押し付けることに成功した。
「で、この後どうするんですかぃ?」
「あとは、こっちだ」
 次に並んだのは、鐘突き堂の行列だ。狭いしそこまで長くはない。ゴーン、と一突きして次に代わるから、そんなに待たないと思われた。
「毎年、並んでんですかぃ」
「あぁ」
 今年もやる気に満ちているのか、琥珀の眼がきらきらしている。鐘突きなんてここ数年していない沖田は、何となく鐘を見やった。
 ゴーン…、音が響く。
 突き方にコツがあるのだろう、ちゃんと響く時もあるし、そうでない時もある。今、力任せに打ち付けた男のは、やたら濁った音が響いた。さっきの、母親と一緒に突いた小学生のは、軽い音を響かせていた。
「あんた、上手いんですかぃ」
「当たり前だ」
 自信満々である。
 ゴーン…、また、一歩進む。
 コツを聞こうとして、口をつぐんだ。
 琥珀のまなざしは、まっすぐに鐘に注がれている。強いまなざしと同じく、マスクの下の口もきゅっと結ばれているのだろうか。
 煩悩を、落とす鐘の音が響く。その音を、一身に浴びているようだ。
 ゴーン…、また、音が響く。桂が一歩前へ進む。その足取りすら、祈りのようだ。
 煩悩を祓う音がする。惑わせるもの、悩ませるもの、迷い、怒り、欲望、そういったものを、祓う音が響く。ゴーン、ゴーン…、と。
 新年の鐘を突くことで気を引き締めて新しい年に臨もうという、心構えが大事なら。
 桂を惑わせる、悩ませるものは、なんだというのか。
 ゴーン、桂のすぐ前に並んでいた女子が、二人してきゃっきゃと鐘突き堂に入っていった。二人で、棒をつるす縄を持つ。後ろへ引っ張って、離す。ゴーン…、ちょっと軽い音が、響く。
「……なんだ」
 桂の腕を、掴んでいた。
「帰ろう」
「は、えっ? おい!」
 そのまま、列から引っ張り出す。後ろのおっさんが、声をかけようとしていたが無視して歩き出す。走りたかったが狭いし、参道の階段はすぐそこだ。人ごみをかき分けて、ぶつかったことを謝りながら階段を早足で降りる。
「おい、待て!」
 待たなかった。引き戻そうと、腕に力が籠められる。力任せに引っ張って、先へ急ぐ。何なんだ、と理由を問う声は、次第に危ないだろう、とたしなめる声に変っていく。
 大通りを渡って、コンビニの前を通って住宅街に入る。ここら辺の住人はもう鐘を突き終えたのか、はたまた興味がないのか、人通りが少なくなる。小さな公園が道の端に見え、素早く目を走らせた。誰もいない。
 飛び込んで、滑り台の柱に桂を押し付ける。
「沖田っ。お前、なにを」
 そのまま、マスクを取っ払って口を塞いだ。
 本気で抵抗されたら、振り払われる。それを判っていたから、身体全体で押し付けた。鉄の柱に後頭部をぶつけないよう、手を差し入れる。そうやって固定した顔に、唇に、無我夢中で噛みつく。
 一度桂は顔を離そうとして、沖田の手を後ろの柱に挟んだことに気づいたようだ。一瞬緩まった抵抗に遠慮なく、坑内を貪る。舌を差し入れると、反射的に桂の下は奥へ引っ込む。たまにある逃げだ、構いやしない。唇で、桂のそれをわざと柔らかく食む。歯を、歯茎を、口の内壁を舌で強くなぞる。
「や…っ、」
 頭を抑え込む手を動かして、親指で左耳を撫でる。弱いところに触れられて、桂の肩が跳ねた。舌を思い切り伸ばすと、逃げ場を失った桂のそれに触れる。撫でる、撫ぜる、引き出すように舌に触れる。
「ふ、ぅ…っ」
 熱を帯びる息は、どちらのものか。
 思う存分味わって、やっと唇を離した。お互いの口元が、唾液でべたべたになっている。
「……なんのつもりだ」
 問う声が、掠れている。
「あんたの祓いたい煩悩って、何なんでぃ」
 至近距離の琥珀が瞬いたのは、意図を読めなかったからか。それとも。
「あんたが思い悩んで祓いたいものって、まさか俺じゃぁねーよな」
 琥珀が、見開かれた。
 告白して、し続けて、絆して、やっとコイビトとして付き合うことになって九か月。その間、沖田は一度も、桂を捕まえたなどと実感したことはない。連絡を取って、会って、口づけて、半ば強引に触れても、伸ばした手の先からひらひらと、逃げて行ってしまう。そんな感覚を、いつも感じている。
 逃げたいのだと、知っている。
 注いだ想いを、完全には信じられないことも。錯覚、或いはいずれ冷めるものだと、何度も告げられた。今もきっと、そう思ってる。
 そうして、終わりの日だけを、数えながら待っている。
「ふざけんな」
 ついばむように、頬に、鼻先に、瞼に唇で触れる。
「俺は飽きねーし、冷めねーし、あんたをずっと追っかける。あんたがそれを思い悩むなら、想い患うなら、それを捨てさせねぇ」
 お守りでも神頼みでも使えるなら何でもいい。何でも使って、何でもして、桂を捕まえ続ける。
「絶対、捕まえ続ける」
 深く、口づける。舌は逃げずに、そこにいたから、遠慮なく絡ませる。
 唾液も息も、何もかも溶けて。溶け合わせて、飲み込んで。
「……っ、年明け早々、なんなんだ…っ」 
 解放され、息を継ぎながら責める瞳は、確かに潤んでいた。
「今年の抱負でさぁ」
「……馬鹿が」
 もう一度、唇を寄せる。沖田を確かに映した瞳は、躊躇いがちに、そっと細められた。
[PR]

by wakame81 | 2017-01-02 07:32 | 小説。  

<< 戀唄:6月18日ComicCI... Intermezzo~Ⅲ~ >>