お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

Intermezzo~Ⅱ~

久しぶりに、長いの書いた気がしますですよ……。
とりあえず、文字数確認してよかった。長すぎるとケータイから見た時に、オーバーした文字数ぶん見られない問題は、あれから数年後改善されたんでしょうかね。


終兄さん難しいz









 厨房に蕎麦を届けて(土方の説教はもちろん逃げた。近藤のおかげである)、風呂へ向かう。さすがに汗でべとついていて、気持ちが悪い。
「おじゃましやーす。あれ」
 この時間、殆どの隊士が厨房に詰めているだろうと思ったら、そうではなかったようだ。帯を解いていたオレンジのもじゃもじゃが、引き戸を開ける音に振り返る。
「終兄さんじゃねーですかぃ」
 無口な元三番隊長は、こくりと頷いた。
 そういえば江戸にいた頃は、シャイな彼と一緒に風呂なんて、あまりなかったよなぁと思い出す。マイペースで慣れ合うつもりはないのだと思っていた斉藤が、実は極度の人見知りアンド恥ずかしがり屋で、男同士でも裸の付き合いが難しいほど緊張しいだったと、気づいたのは、あの野郎が屯所潜入などふざけたことをしでかしてからだ。
「……んー……」
 ムカつくことを思い出してしまった。零れた唸り声に、斉藤が目ざとく、いや耳ざとくこちらを見る。
「あー、何でもねぇですぜ」
 手を振る。斉藤は黙って服を脱いでいくが、こっちが気になっているのは判った。ちらちらと向けられる視線は、そう気に障るものでもなかったので、とりあえず放っておく。
 と、脱いだ袴の裾が、汚れているのに気が付いた。道を普通に歩いたのではない、おそらく薮だったりそういうところを、駆け抜けた跡だ。
 斉藤が何をしていたのかは、見当がついた。それが、自分が責められているような、そんな錯覚を感じる。
 斉藤に遅れること少し、沖田も脱衣所から洗い場へ出た。
 オレンジ色のもじゃもじゃに、大量のシャンプーがぶちまけられて、でかい泡の塊ができていた。好奇心が疼くには充分だった、その隣に腰を下ろす。
 鍛え上げられた身体の、そこかしこに、打ち身や擦り傷がある。左肩の青あざをつつくと、大げさなほどに斉藤の体が跳ねた。
「あ、すいやせん」
 垂れそうな泡越しに、据わった眼が睨む。が、それ以上は何も言わず、斉藤はまた頭を泡立てる作業に戻った。沖田も何も言わず、シャワーのコックを捻る。
 お湯を頭からかけながら、もう一度、隣を見やる。身体の傷も、汚れた衣服も、斉藤が鍛錬を続けている証拠だ。
「……ちっ」
 目を背けてシャンプーをぶっかける。ざっと流せばいい程度の洗い方で、すぐにシャワーをかぶる。と。
「?」
 つんつんと、肩をつつかれた。まさか、無口が過ぎて筆談に頼っている男が、何か言うというのか。
 顔を上げると、鏡を指し示された。目を向けて、顔を歪ませる。
『鍛錬に来ないのはどうしてz』
 「……タイミングが、合わないだけでさぁ」
 嘯いて、リンスを手に取る。手のひらに出して、髪に塗り付ける。シャワーで手だけ流して顔を上げる。その一連の動作の間、ずっと、注がれる視線を感じる。
「嘘だって、言いたいんですかぃ」
 問うと、面白いように斉藤は慌てた。椅子から転げ落ちるくらいだ。その様がおかしくて吹き出しても、斉藤は土方のように怒ったりはしない。
 転がった椅子を戻して座りなおす。それを見届けて、手拭いをお湯に浸した。石鹸をこすりつけて、泡立てて、ぽつりと言葉を落とす。
「終兄さんは、なんで頑張れるんですかぃ」
 こてんと、オレンジの頭が揺れる。侍に対して、愚問だろう。武士は戦う者だ。強く在ろうとすることに、それ以上の理由は必要ない。
 そして、今はただ平和を噛みしめている時ではない。いずれ立ち上がり、江戸へ帰る。真選組を解体させた、江戸へいられなくした、その黒幕を倒すのだ。届かなかった一矢を、今度こそ報いるのだ。
 それでも。
『疲れたz?』
 鏡に書かれた言葉に、ふ、と笑みを漏らす。
 肩の力が抜ける。泡立てる、手が止まる。こんな姿を、チャイナ娘やあの男が見たら、腐抜けたと言うだろう。そして、笑うか、怒るか。
 それでも力は、意欲は湧いてこない。なぜなら。
「モチベーションが、遠くに行っちまいやしてね」
 毎日、ずっと、追いかけていたモチベーションが。遠く、手の届かない宇宙の果てまで。どうしているかも判らない。いつ帰ってくるかも判らない。江戸に残された奴の配下にも、便りは何もない。
 そうして、半年が過ぎてしまった。
『友達に、なりたい人がいるz』
 湯気で曇る鏡に、字が綴られる。
『その人が帰って来た時に、少しでも胸を張れるようになりたいz』
 先程の問いかけの、答えだと知れた。拳に、力が入る。溢れた泡が、滴り落ちていく。
「……だって、終兄さんは、認めてもらってんじゃねーですかぃ」
 斉藤に対し、桂は刀を抜いたのだ。ずっとずっと、追いかけ続けてきたのは、沖田なのに。近藤や土方や松平に接近するなら、まだしも納得できたのに。
「……ずりぃよ」
 バズーカをぶっ放して、刀を抜いて、手を伸ばして、それでも届かない。沖田がまだ未熟だからか。それとも、年の功とでもいうのか。だとしたら、埋められない年の差など、どうすればいいのか。
 ゆっくり、息を吐きだす。強張った手の力を、そっと抜いていく。斉藤は挙動不審に手を動かして、視線を泳がせて、結局その手を膝へ置いた。頭が小さく、項垂れる。
「終兄さんは、良いよなぁ」
 だから未熟だというのだろう。それでも、八つ当たりが止まらない。
「追いかけて、追いかけても、ずっと振り向いてもらえねぇんじゃ、疲れる時だってあるんでさぁ」
 ずっと、この先も振り向いてもらえなかったら、自分はどうなってしまうのだろう。
 斉藤は、ただ黙って俯いている。さすがに申し訳ないなと思った。小さく笑うように息を吐きだして、すみませんと謝ろう。そうして、今言った弱音を水に流してしまおう。
 そう、口を開いた時だった。
「確かに、振り向いてもらえないのは辛いよなぁ」
 後ろから大きな声が降り注ぐ。二人して振り向くと、そこには案の定、近藤がいた。
「ずーっと、好きだって言ってるのに、なんかすれ違ったり。そういうの、辛いよなぁ」
「リア充ゴリラは黙っててくだせぇ」
 えーっと近藤は言うが、やにさがった顔はもう隠すつもりもないようだ。ずーっと意中の人に付きまとい続けて、その思いを受け取ってもらえた、近藤は悔しいことに勝ち組なのだ。
「先輩の助言、聞きたくない?」
「ドラミングの方法は間に合ってやすぜ」
「もー、ひどいなぁ」
 それでも沖田の隣に腰を下ろした近藤は、日ごろ想い人から受けた仕打ちを、辛かったぞーと言いながら語る。グーパンチ、目つぶし、一本背負い、それくらいは序の口だ。まぁよく諦めなかったよなぁと、今更ながらすごいと思う。
「ストーカー怖ぇ」
「いやでも、諦めた方がいいのかなぁとか、思わなかった訳じゃないよ? でもやっぱり、体はお妙さんとこ向かうし、顔見ればやっぱり、好きだなぁって思うし」
 会えただけ、近藤もラッキーだ。お妙はちゃんと、近藤に向き直って撃退する。桂は、向いてくれることもしやしない。
 琥珀の眼に沖田を映したことなど、何度あるだろう。
「会えなかったら、どうすりゃいいんですかぃ」
「そうだなぁ」
 首を傾げた近藤の視線が、沖田を通り越して止まった。はらはらと見守っていた斎藤が、きょとんと眼を瞬かせる。
「こう考えてみたらどうだ。総悟の好きな人が、終と付き合うとしたら、どうする」
 ばっと、斉藤の方へ振り向く。
 可能性は、あるのだ。斉藤はただ友情しか求めていなくとも、友としてその隣に歩み寄れるのなら。あの白ペンギンのように、全幅の信頼を、注がれるのなら。そうしてその眼に、映してもらえるなら。
 向ける想いの名前など関係ない。桂が、振り向いて、向き合う。瞳に映す。その権利を、斉藤が手に入れられるのだとしたら。
 おたおたしていた斎藤の、取り巻く空気が変わる。す、と、鋭く、冷えた瞳に、我に返る。
 先に殺気を放ったのは、沖田だ。
「うん、それくらい好きなんだろ?」
 目を閉じて、息を吐く。好きなどという、優しくてきれいなものじゃない。執着、というのが近いのだろう。子供が気に入りの玩具に拘るような、と言われても、おそらく反論は難しい。

 あぁ、でも、それでも。
 沖田は、桂小太郎が欲しいのだ。

 体を、これもざっと洗い、シャワーを頭から浴びる。滴り落ちていく感触が、気持ちいい。洗い流して息を吐くと、爽快感が身から湧き出る。
「すっきりしやしたぜ、ありがとうございます」
 言うと、近藤は顔をほころばせた。斉藤のまとう空気も、ようやっと柔らかなものになる。
 ちゃんと湯船つかれよ、と笑いながらの助言に、沖田も笑い返した。



 さて、今日は十二月三十一日、つまり夜が明ければ一月一日である。つまり、何か物事を始めるには、明日がちょうどいいということだ。
 なので、望むものを手に入れるための努力は、切りよく明日から始めることにした。
 風呂上がりに捕まった土方の説教も、いつもの通り右から左へと流す。そのうち呼ばれた夕食には、さっき買ってきた蕎麦が添えられていた。
「夜食じゃねーんですねぃ」
「二度も厨房使うような、そんな手間かけるか」
 一応居候の身としては、それは正しい。今年最後の食事は、いつも通りいただきますの号令もなく始まる。沖田も、何から食べようかと箸をさまよわせて、ふとそれを下ろした。
 袂から、ケータイを取り出す。
「おい、行儀悪いぞ」
「大晦日なんだし、大目に見てくだせぇよ」
 写真を撮り、すぐにメールで送る。
 男所帯で作った、簡単にネギと天かすだけが乗った蕎麦だ。でも、宇宙の果てじゃ、きっと手に入らないだろう。
 せいぜい羨ましがればいい。
 そう笑って、蕎麦を箸ですくい上げた。


                                 


                           ~続く~
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by wakame81 | 2016-12-31 12:06 | 小説。  

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