お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

Intermezzo~Ⅰ

今年も過ぎようとしています。今年一年、いやその前から、閲覧、評価、ブクマ、コメント、いろいろありがとうございました。
最後の投稿は、銀魂になります。
本誌ネタバレあり、おおむねは洛陽編の一方そのころ、お留守番の沖田くんがメインです……去年上げようとしていたネタです、はい。
お留守番沖田くんなので、桂さんほとんど出ません。しかし沖桂と言い張る勇気。










「ふぁ……さぶっ」
 首筋を撫でる冷気に、目を覚ます。
 畳に落ちる日差しが小さくなっている。さっきまで、そのぬくもりの中寝転がっていたのに、と、沖田はぼんやりと考えた。冬の日差しの、移り変わりは早い。
 ふぁぁ、と大きくあくびをして、その首筋をまた風が通り過ぎた。くしゃみをして、振り返る。
「あ! お目覚めですか、沖田隊長!」
「もう隊長じゃねぇっつってんだろ」
 枕代わりにしていた雑誌を、窓を開けた外に立っていた神山に向けて投げつける。狙いは違わず、神山は窓を拭いていただろう雑巾を放り投げて、後ろに倒れた。



 近藤勲、松平片栗虎を黒縄島から奪還し、逆賊の名を帯びて逃亡してから早半年。真選組は、隊を分散して潜伏を続けていた。沖田たちが身を寄せる、この寺も、そのうちの一つだ。近藤、土方、斎藤ら三番隊も、同じこの寺に身を隠していた。
 ただ、隠しただけではない。別の場所にいる松平は、江戸や諸国の情報を集めたり、一橋喜々に反感を持つ者たちとの連絡を、密かに取っているし、監察方はその手先として動いている。沖田や近藤たちが別行動をとっているのは、居場所を特定させないためだ。
「なんでぃ、ありゃ」
 昼寝の邪魔をされたが、ちょうど小腹も空いていた。おやつ時にはまだ早いが、何かしらあるだろう。そう思い、厨房を覗く。そこは、思いもよらない光景が広がっていた。
 いかつい男たちが十人近く、たむろっている。しかも、菜箸片手にフライパンに向き合ったり、ボウルで何かをすり潰していたり、何かを鍋で煮ていたり、つまりは料理に勤しんでいるのだ。
「あ、土方さ……ぶぷっ」
「こら、人の顔見て笑うたぁどーゆー了見だ」
「や、だって土方さん」
 手には、人参と包丁、それはまだいい。頭にかわいらしい黄色の三角巾をつけて、同じくかわいらしい黄色の割烹着を身につけているときたら。
「鬼の副長形無しでさぁ」
「仕方ねーだろこの色しかなかったんだからっ!」
 マメである。確かに、抜け毛が入ってたりしたら萎える。しかし、だがしかし。
「ここの住職、シュミおかしくねーですかぃ」
「かくまってもらっておいて、言うセリフじゃねーだろ。てかおめー、掃除は」
 は、と思い出す。
「おめーだけ大掃除終わってなかったろ。こっち来たってことは、もう終わってンだろうな?」
「あと窓ふきだけって言ってやしたぜ」
「おい、言ってたって誰が」
「俺の分まで掃除がんばってる神山」
「サボりかてめーっ」
 素早く厨房から飛び出した。土方はあれで良識のある男だから、厨房で暴れるなどしないだろう。ただ、その手にあるのは料理用とはいえ刃物だ。しかも、使い手は鬼の副長として真選組を恐怖で統率してきた男だ、油断はならない。
 対してこちらは、武器らしいものも何も持っていない。するってーと、取る作戦は一つ。
「三十六計逃げるに如かず!」
「待てぃっ、このサボり魔ぁぁぁっ‼」
 純粋に、追いかけっこでの勝負になれば、素早さは沖田に利がある。しかも、真選組が解体したとはいえ、土方は副長としての責任ある身だ。
「土方さーん、イモのすり潰し終わりました」
「副長、黒豆の味見してくれませんか?」
「カタクチイワシってどれだけ炒ればいいんでしたっけ」
「だぁぁぁぁぁっ」
 次の指示をもらいにやってくる隊員達を、無下にすることもできない。とりあえず後で言う、とだけ指図して振り向いた時には。
「総悟ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ」
 その姿は、とっくに消え失せていた。



「やーれやれ」
 追手が来ないことを確認してから、沖田は足を止めた。
 ちょろい、ちょろすぎである。土方が本気でなかったのもあるだろうが、仮にも真選組副長たるものが、これだけ簡単に逃げられていいものか。
「相手がアイツだってんならともかく、ねぃ?」
 少し口を尖らせる。そして、もう一度息を大きく吐き出した。
 十二月にしては暖かい日差しが、庭に影を作っている。時折吹き付ける風はさすがに冬のもので、追いかけっこで汗のかいた身としては、少し肌寒い。何か羽織りが欲しいところだ。
「土方さん俺のこと、探してんのかね」
 だとしたら、戻ったら確実に見つかる。それもまた、面倒である。あと、神山を撃退したことも、そろそろばれてもおかしくない。どうしようかーと考えながら首を巡らすと、見慣れた後ろ姿が、庭の端を通っていくのが見えた。
「近藤さーん」
「お、総悟か」
 振り返った近藤は、サングラスを持ち上げて笑った。マスクで口元は見えないが、たぶん笑った。毛糸の帽子に上着を羽織って、外へ出る格好だ。
「どこ行くんですかぃ、そんな変質者な恰好して」
「変質者じゃないもん!」
 人聞きの悪いこと言わないで!とぷりぷりしながら、近藤が近寄ってくる。
「んなこと言ったって、グラサンで顔隠すのは変質者の証拠ですぜ」
「町の方行くんだから、俺だってばれない方がいいだろっ? てか銀魂にどれだけグラサンキャラいると思ってるの、それとっつぁんも変質者って言ってるようなもんだからねっ?」
「グラサンキャラはたくさんいても、マスクまでつけたら変質者でさぁ」
「インフルエンザ予防! みんなも外出するときは、特に電車などの公共交通機関を利用するときはマスクで予防しよう!」
「なんのACですかぃ。ついでに帽子も変質者っぽいですぜ」
「今日は風冷たいんだから、仕方ないだろっ」
 なるほど、これは通報されても文句が言えない。仕方ないなぁと、沖田は肩を竦める。
「ちょっと待っててくだせぇ。俺も行きやす」
「総悟?」
「アンタ一人で行ったら、ただの変質者でさぁ。俺も一緒なら、そうは見えないでしょ」
 準備してきやすーっと、部屋へ向かって走り出す。近藤の付き添いなら、良い口実になる。ついでに合法的に温かい格好になれる。
 残された近藤は、うるっと目を潤ませていたが、それはまた別の話ということで。



 運よく土方に直接会わなかったので、沖田はすんなりと出かける身支度をすることができた。通りすがりの隊士に、付き添いに出る旨を伝えて戻る。
「お待たせでさぁ」
「総悟……お前、グラサンは?」
「そーやってコソコソするから怪しまれンですぜ。堂々としてたら、誰もお尋ね者がこんなとこ歩いてるなんて、思わねぇでさぁ」
「そっか」
 近藤な素直に納得したようだった。この人もちょろいなぁと、思わざるを得ない。
「桂も、堂々と歩いてたもんな」
「……あれは、ただのバカでしょ」
 口調が鋭くなってしまったのをごまかすように、サングラスを奪う。
「ほーらグラサンなければただのゴリラ」
「て、眩しっ。いきなり取んないでぇぇぇっ」
 二日ほど前に降った雪が、まだ残っている。あるのは日陰ばかりだが、近藤は大げさに目を手で覆い隠した。しばし、「目が、目がぁぁぁ」ごっこを楽しんでから、サングラスを返す。
「てか、町まで何しに行くんですかぃ?」
 誰かと会うか、はたまた買い出しか。年越しの準備は厨房で賑わっているようだったから、前者だと思った。松平からの使いだったり江戸を監視する者たちからの報告だったり、近藤が会おうとする相手は幾人かいる。まして、愛しいひとの無事の知らせは、寺まで届くのが待ち遠しくなっても仕方がない。
「あー、蕎麦をな、買い忘れてて」
「蕎麦」
「そう、年越し用の。数かぞえたら、足りなくてさぁ」
「あー」
 成る程納得である。年越しには蕎麦が欠かせない。しかも、ここら近辺は蕎麦の名産地だ、食べねば大損どころではない。
「んで、わざわざ近藤さんが買い出しですかぃ」
 他にも人がいるだろうと、思わなくもない。真選組局長として、これでも有名なのだ。
「もっとモブっぽいのいんでしょう」
「や、え、えーと、ほらみんな忙しいだろ?」
 近藤の目が泳ぐ。これは何かを隠している。へーぇ?と沖田はにやりと笑った。
「じゃ、早く行きやしょうぜ……に見せかけて攻撃っ」
「あぁっ」
 ほぼ勘で、着物の合わせに手を突っ込む。ごつい膨らみに隠されていたのは、レシートで膨らんだ財布と、一枚の封筒だ。ただし、細長いものではない。例えるなら、葉書あたりが入りそうな大きさのものである。
「ってことは、姐さん宛ですかぃ」
 封筒に書かれた住所は、志村妙宛ではない。江戸の様子を見張る者たちとの、連絡用のものだ。近藤や坂田銀時と志村妙との関係は調べればすぐに分かるから、そこからこちらの潜伏場所がばれたり、それを狙って志村妙の身に危険が及んだりしないよう、やり取りは全くしていなかったのだ。
「だけど、江戸の仲間がこれ受け取って、中の葉書だけ江戸から投函すれば、ただの年賀はがきとしか思われないってわけですかぃ」
 ちょっと甘いなぁと思わなくもないが、この半年間、近藤は耐えに耐えまくったのだ。年に一回くらいは、まぁ大目に見てもいいだろう。ただ、土方の賛同は得ていないのだろうと思った。もし得ているのなら、こんな、わざわざ隠すようにして投函しにはいかないだろう。
「別に、反対しやしないと思いますけどねぃ」
「だって、万が一のこともあるだろ?」
 封筒を返すと、大事に抱きしめるようにして、懐に仕舞われた。
「今まで、俺たちの居場所もとっつぁんや他の連中の居場所も割れてないけどさぁ。幕府だって、俺たち探すどころじゃなさそうだし」
 だけど、と、言葉を言いよどむ。
 封筒を仕舞った懐から、手が離れない。
 そのまま、黙り込んでしまった近藤を見て、沖田はあぁ、と思った。万が一のこと、とは、土方が許してくれないという可能性ではない。
 ここまで策を練って、準備までしておきながら、近藤はまだ迷っている。
「べっつに、大丈夫なんじゃねーですかぃ」
 息を吐いて、わざと軽めの声を出す。
「話聞く限り、俺たちの油断を誘って一網打尽にするとか、んなこと考えてるんじゃなさそうですし。今の幕府は、本当にただオタオタしてるだけですぜ」
 真選組を極刑に処すことに執念を燃やしていたのは、はっきり言って一橋喜々ただ一人だ。
 奴が坂田銀時らを追って宇宙に上がり、返り討ちにあって以来、幕閣はただ、責任の押し付け合いと利権をかすめ取ろうという腹の探り合いしかしていない。それでも松平が事を起こさず機を伺っているのは、天導衆を警戒してのことだが、驕り高ぶった奴らは真選組など視界に入る虫ほどにも思っていない。癪ではあるが。
「さすがに直接姐さんに出すってのは無茶でしょうけど。これくらい、カムフラージュしてんだから大丈夫でしょ」
「そっか……そうだよな」
 やっとこちらを向いた近藤の顔は、晴れ晴れとしていた。
「万事屋や桂が、注意を宇宙に引き付けてくれたおかげだな」
「……アイツら聞いたら、めっちゃ恩着せにくるから、言わない方がいいですぜ」
「そうだな!」
 ほがらかに笑う近藤の後ろに回り込んで、背中を押す。おいおい、と笑いながら足を動かす近藤に、早いとこ行かねーと土方さんがおせちをマヨまみれにしやすぜ、と促した。
 あの名前を聞いた瞬間、引きつっただろう己の顔を、どうしても見せたくはなかった。



 騙された、と、思った。
 手を組んだ時は、そうする以外に方法はないと思ったのは確かだ。そうでないと、自分達は、心から殺されていくところだった。実際、あの申し出がなかったら、或いはあそこでチャイナ娘と会わなかったら、沖田はどうなっていたかわからない。想像したくもなかった。
 だから、手を組んだことに後悔はない。
 江戸から離れろと、言われた意味も、納得している。あの場はあれが正しかったと、今も、あの時も理解していた。感傷的になって駄々をこねたのは、ただ受け入れられるまでの時間が欲しかっただけだ。チャイナ娘のおかげで、結構あっさりと吹っ切れたけれど。
「……こう考えると、あんにゃろーに貸し作りっぱじゃねーかぃ」
 ちょっとむかつく。
 閑話休題。
 とにかく、色々納得してきたし、納得できるよう自分を説き伏せたりもした。
 その結果、まさか桂がささっと宇宙まで行ってしまうとは、思わなかったのだ。
「そりゃ、ついでにあの野郎まで宇宙に上がって、こっちの追手は緩くなったけど?」
 口を尖らせながら、近藤の後をついて回る。我らが局長は、安い蕎麦を選ぶのに夢中だ。「どれが一番美味いと思う?」
「俺に目利きなんてさせねーでくだせぇよ」
「賄い方の誰か、連れてくればよかったなぁ」
 苦笑して、また別の蕎麦の袋を手に取って眺める。
「それか、蕎麦の好きなやつ」
 細められるまなざしは、例えば誰を、思い浮かべているのか。
 小さく舌打ちをして、沖田は袋を一つ手に取った。確認して、近藤に差し出す。
「総悟?」
「土方さんにはこれにしやしょーぜぃ。賞味期限ぎりぎりの」
「こらこら」
 おどけて見せると、近藤は眉尻を下げながら笑った。相変わらずだなーと、大きな手がくしゃくしゃと頭を撫でる。
「てか、みんな、腹に入ればおんなじくらいの大雑把な連中なんですから、安いのでいーんじゃねぇですかぃ?」
「うーん。そうだなぁ……」
 首をひねって暫し考えた後、結局その、賞味期限間近の三割引きシールの貼ってある蕎麦を、かごに入れた。
「名産地だし、これでも味はいいだろ、な!」
 量産品で生産地が別の地域であることは、言わないでおいた。
 さて、二十人以上の野郎どもの晩御飯代わりの蕎麦である。二人でえっちらおっちら、担いで帰る訳だが、町中から外れて、更に山門まで坂を登っていく道のりは、沖田には軽く苦行だ。近藤の大きな背中が、先を軽々と歩いていく。それを見ていると、自分の上背の無さ、筋肉の無さが恨めしくなってくる。
「総悟ー。重いか、大丈夫か?」
 足を止めて、近藤が振り向く。こちらを案じる顔は、いつ見ても逞しい。
「……平気でさぁ」
「そうかぁ?」
 首を傾げたが、近藤はそれ以上追及しないでくれた。
 荷物の重さは、どこまで顔に出ていただろう。近藤は、それに気づいただろうか。気づいたうえで、気づかないふりをしてくれているのだろうか。
 よいしょっと、ずり落ちかけていた荷物を背負いなおす。前を行く後ろ姿をもう一度見やって、歩き出す。
 敵わねぇなぁ。
 落としたため息に滲む諦観は、少し苦かった。



                        ~続く~
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by wakame81 | 2016-12-31 11:57 | 小説。  

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