お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

月の光

SPARK11ならびに、かぶき町大花火大会の開催おめでとうございます。
わかめはお留守番組です、いってらっしゃーいノシ
……はい、腰早く治します。皆さまもステイヘルシーで、楽しんでくださいまし。

お留守番更新は、ちょうど一年前、月見でなにかやりたいなぁと思いながら捻りだした話です。洛陽編の、行きの船の中です。
相変わらず銀さんが、息をするように万斉殿をたらしこんでくれて、万斉殿も存外ちょろくたらしこまれていくので、桂さんにもたらしこんでほしくて書いたのですが。
なんというか、こう、山も落ちも意味もない雰囲気小説になりました。むう。

余談ですが、万歳殿が桂さんに聞く旋律は、現代クラシックだと思ってます。具体的には、サティの、淡々とした掴みづらいピアノ曲。あと、ジョン・ケージの「4分33秒」とか。
ついでに晋ちゃんは、「春の祭典」。初演でお客さんが賛否両論喧嘩するかんじ。








  河上万斉は困惑していた。
「何やってんですか桂さんんんっ!」
「見ての通りだ新八くん。白玉粉を練っている」
「そりゃ、見たら解りますよ!僕が言いたいのは、」
「成る程、作っている品か。何を隠そう今日は十五夜だ、だから月見団子を」
「ここ宇宙!ここ太陽系の外ぉぉ!どこに月があるってんですか!!」
「見えぬからといって、そこに何もないのとは違う。箱の中には確かに、愛らしい肉球がいるのだ」
「そんな高尚な話してるんじゃないですよ!!」
「おいヅラぁ、おめぇふざけんな」
「銀さん」
「おめぇが作ったら、団子が全部ビチャビチャになんじゃねーか、貸せ。てかアンコどこだよアンコねーぞ」
「そうですね、あんたそういう人でしたねこの糖尿予備軍がぁぁぁ!」
 寸断も許さぬ掛け合いに、万斉は耳を塞ぐ。
 この船は、とかく喧しかった。だいたいは、いやほぼ全て、この坂田銀時と桂小太郎のやりとりが中心になる。いつもならそこに混じる坂本辰馬が今いないのは、ただ単に触発された嘔吐感に、強制退場させられたからに過ぎない。
「だいたいどこから持ってきたんですか、この白玉粉!」
「宇宙の移動は長丁場になる。そのなかで時間の感覚を忘れぬために、予め坂本に頼んで」
「何、持ち込むの当然の流れにしてんですか」
「こないだのお萩の材料だけではない。四季折々、はろいんの南瓜、ぼじょれぬーぼーとやらの日本酒、あとクリスマスの鶏までを」
「ちょっとは節操持てやあエセテロリスト!!」
そう喚いていた志村新八も、最後には二人(主に坂田銀時)に言いくるめられ、ぶつくさ言いながらも二人を手伝うことになるのだ。



 結局、大量の白玉粉が、大量の団子となり、食堂にずらりと並ぶこととなった。桂一派に快援隊、二つの組織のガタイの良い男達の腹を満たすには、充分な量だ。そもそも、月見団子は量を食らうものではない。そう、万斉は思っていたのだが。
「この団子は俺のもんじゃああああ!」
 何故、争奪戦が起こるのか。
「銀さん、独り占めダメですっ! そもそも糖尿予備軍なんだから」
「糖尿じゃありまっせーんまだ予備軍ですー。てか、アンコねーのかよ辰馬」
「彼岸の時に、全部食い尽くしたがはおんしじゃったなあ」
「あ、陸奥その皿俺の!!」
 他の者達も、決起集会のようなノリで団子に群がっている。
 酒の饗されたお盆よりはまだマシなのか。いや、酒も入っていないのに、この騒ぎになるとは、どういうことか。
「全くもって、風流でないでござる」
 一皿だけ確保し、(あの騒ぎで食いっぱぐれたというのは、何だか悔しかった)食堂から脱出する。月は見えないにせよ、お月見の雰囲気を味わうなら、もっと、静かな所が良い。
 そうして、人気のない場所を探して、船内を歩き始めたところで、万斉は足を止めた。
 喧騒の外側、賑やかな声の届く距離にも関わらず、そこは侵すことのできない静けさに、包まれているようだった。



「おや」
 話しかける前に、かの人物はこちらに視線を向けた。琥珀色の瞳がらまっすぐ万斉を捉え、そして細められる。
「どうした。早く行かないと、団子が全部銀時に取られるぞ」
「そんなに大量に欲しいわけではござらん」
「そうか。美味いのにな、銀時の団子」
 そういう桂の手にも、皿は一つだけだ。
「足りないのか?」
 まだ団子の乗った皿を見つめていると、そう首をかしげられた。違う、と首を振ると、桂は「そうか」とだけ答え、また視線を移す。
 万斉を通り過ぎる眼差しを追ったのは、ただ興味からだ。まるでうっとりと、ないはずの満月に向けられたかのような眼差しの先には。
「……なんだ」
 ただ、先ほどまで自分もいた騒ぎだけがそこにある。坂本辰馬の乱入に、場はさらに混乱を極めようとしている。もう一度、桂に目をやると。
「………。」
 また目を細められた。
「賑やかだろう」
「そんな、可愛らしいものには到底思えぬ」
「おや。高杉の所では、月見もせなんだか」
「しないわけではない」
 むしろ、彼は誰よりも、そういった事が好きだった。
 そこまで口にすべきかためらう万斉に、桂はまた笑う。
「ここまでのばか騒ぎには、ならなかったでござる」
 酒が入れば、確かに多少羽目を外す者はいる。神威達第七師団と行動をともにするようになってからは、尚更だ。だが、決してここまでではない。
 まるで、これが最期の月見のような。
「……まさか、お主ら」
 胸に感じた疼きは、後ろめたさだというのか。濁しかけた言葉を飲み込もうとして、眼差しに促され、結局口に乗せる。
「晋助を救うために、その命を懸けて」
「そんなわけがあるまい」
 ばっさりと斬り捨てられ、のみならず冷ややかな視線まで向けられた。いや、そんな生やさしいものではない。
「? どうした、そんな、『何コイツそんなおかしなこと言ってんの頭沸いちゃってんじゃないの』的な見方をされたような傷ついた顔をして」
「妙に具体的でござるなっ!?」
 ということは、やはり向けられた視線の意味はそれなのか。さっきまで感じていた後ろめたさ返せ。あと感動も。
「まったく、貴様も坂本も、一体何を期待しているのやら。俺は奴を斬ると、はっきり言っただろう。奴を友と呼ぶのも、もはや坂本だけだともな」
 いやそれにしたって、と万斉は伏せていた顔を上げ、ふと眉を潜めた。
 ずっと、ずっと、気にかかっていたことだ。日々の騒ぎやら喜々の追撃やらで、すっかり後回しにされていたけれど。
「何故お主は、ここまで来た」
 目を向ければ、まっすぐな琥珀がこちらを見据えていた。敵にであればまるで刃のように苛烈で、つい先ほどまではどこまでも柔らかく仲間達に向けられていたそのまなざしは、冴え冴えとして、万斉に注がれる。
「言っただろう、高杉を斬るためだ」
「命を望むなら、放っておけば良かったであろう。ただでさえ劣勢、間に合うかどうかも判らぬ。確実性を求めるにしても、お主だけでなく部下を連れてまで、江戸をおいてまで、はるばる宇宙まで上がる必要があったのでござるか?」
 まなざしはそのままに、細長い唇が僅かに弧を描く。この笑みは、見たことがあった。
「桂。お主は本当に、晋助を斬ろうとしているのか?」
「案外、ろまんちすとな男だな」
 言われたところで今更動揺しない。自覚はしている、そうでなかったら、あの男の描いた未来を、共に見たいと思わない。
「俺達が真選組と手を組んだことは知っているな。そしてその真選組は、貴様等に何度も痛い目に遭わされている」
「晋助の首を、奴らへの手土産にする、と?」
「先に貴様等がしたことではないか」
 判っている。それでも納得ができないのは、手土産にされた悔しさや憤りだけではない。
 桂は笑みを崩さない。眼を、逸らさない。
 その笑みを知っている。
 何度も何度も、追う背中越しに、見て来た笑みだ。
「坂本の誘いを受けたのは、文字通り、渡りに船だったからだ。その隠れ場所とやらにつくまでは、共に行動してやろう。坂本への借りもあるし、春雨や天導衆の手にかかるのも昔のよしみ程度には哀れに思わんでもないから、奪還にも協力してやる。だが、その後は」
「お主らは、」
 言葉を遮られた桂の後ろを、何も無い虚空の闇が変わらず過ぎ去っていく。窓ガラスに映る背中は、彼自身に阻まれて見えない。
 桂は笑みを崩さない。眼を、逸らさない。
「同じ顔で、同じように語るのだな」
 ぽつり、と落とした台詞に、何の意味も含めなかった訳ではないが。ほぼ丸ごと、素直な感想として告げた言葉に、一度桂は瞬いて。
「そうか」
 むっつりと、判りやすいほど笑みまで消して答えるのだから、思わず噴き出してしまうところだった。その空気が伝わってしまったか、桂はそれまで見もしなかった団子を、思い切り口の中に放り込む。
「そんな食べ方をして、喉に詰まらせたりはしないでござるか」
「……この俺を誰だと思っている。《逃げの小太郎》だぞ」
「いやその肩書きは今関係ないから」
 律儀に、口の中のものを飲み込んでから答える桂の、眉間のしわが一瞬ほぐれる。美味いのか、と尋ねると、当たり前だと返された。
「銀時の団子だぞ」
「あの御仁に、そこまでの腕があるとは思えぬのだが」
「銀時の、甘味への執念はただごとではないぞ」
 それは、高杉にも聞いたことがある。恐る恐る口にしてみる。……確かに美味い。
 もちもちとした、柔らかい歯ごたえと、ほのかに広がる上品な甘み。どこぞで修行でもしたのか、一流の茶席に出しても遜色のない味だ。これにあんこを欲しがる坂田銀時が不思議になる。いや、絡み合えば確かに深い甘さを期待させるだろう。
 もくもくと、味わっている万斉に、桂の眉間がまたほころんだ。和らいだ雰囲気に、確かに美味だ、と素直に感想を漏らす。
「そうだろうそうだろう」
「嬉しそうでござるな」
 緩む口元を見ながら、万斉は頭を軽く振った。遠目に見たことは何度かあったが、こんな笑みは始めて見る。先ほどの、判りやすいむっつり顔もだ。
 とらえどころの無い、淡々とした洋琴のような旋律に、ほのかに宿る色に、目を見張る。サングラスで隠したはずの視線に、桂が眼を細ませたのは、偶然だろうか。
 誤魔化すように、視線をずらす。桂の後ろは、窓もない壁だ。月どころか暗い空すら見えない。
「月は見えたか」
 そう、問われた。万斉は、ゆっくり息を吐く。
「お主らは、」
「うん?」
「同じ顔で、同じように語るのだな」
 先ほどと寸分違わぬ感想を、今度は桂は、笑みを浮かべて受け入れた。
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by wakame81 | 2016-10-09 06:02 | 小説。  

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