お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

この盃を受けてくれ

お留守番更新って、イベント開始前にやるもんじゃなかったのだろうか(切腹)

皆さま、六月シティはお楽しみでしょうか。
サークルさん少ないようという報告を受けております。すみませんです。

さて、「さらば真選組篇」です。近藤さんと桂さんです。
回想見て、この当時の近藤さんなら、桂さんを味方にしたかっただろうなぁという妄想です。いや、本当なら去年の桂さん誕生日にあわせるはずが、年末の妄想お片付けにも間に合わなかったという。
すみませんです。









 どたん、がしゃん。

 派手な音に、思わず近藤は茶店の中を振り返った。
 美味い茶と団子を出すというその店は、小さいながらもいつも客で賑わっていた。が、今は静まりかえっている。店の端に避難した客達の、息を飲む音すら立てられない緊張感が、耳に痛かった。
「どうしてくれるんだ、あぁ!? 服が汚れちまったじゃねぇかっ!」
 そう、怒鳴られているのは、店の若い娘だ。顔は青ざめ、細い肩は小さく震え、謝罪の言葉も絞り出す余裕はない。その娘を恐怖で縛り捕らえている男の腕には、鱗があった。天人だ。
「お、お客様、」
「この落とし前は、テメェでつけてもらおうじゃねぇか。おら来いよ、あぁ!?」
「い、いえ、それは、困り、グェッ」
 謝罪をと割り込もうとした店主を、天人の男は思いきり蹴り倒した。また派手な音が響く。
「誰に物言おうとしてんだ、誰に逆らおうとしてんだ、あぁ!? 俺は、印酢鱒星の大使の護衛だぞ、あぁ!?」
 あぁ、だめだ。
 娘の腕を掴んだまま、男は倒れた店主にさらに暴力を加えようと、足を振り上げる。これ以上は、見ていられない。
 まだ、近藤にそんな権限はないし、待ち合わせにまだ来ない土方や沖田にはまた呆れられるだろう。でも、見て見ぬふりなど無理だ。
 柄を握りしめ、一歩踏み出す。その動きに先んじるように。
「待たれよ」
 黒い人影が男に近寄った。
「それ以上の狼藉は、見てられん」
「あぁ!? なんだテメ」
 振り向いた瞬間、天人は宙に舞った。三度めの派手な音と共に、床に投げ出される。シャン、と錫杖が鳴ったのと同時に鈍く響いた打撃音は、僧形のその人が男の腕を強く打ち据えたためのものだ。
 思わぬ攻撃に、天人は何が起こったのか、すぐには理解できなかったのだろう。どこか焦点の合わない目が、彷徨うように周囲を見渡す。その視線が定まり、険しく細められたのは、自分を転がし、見下ろしてくる者を視界に捉えた時だった。一見強そうに見えない、細身の人物だったことも、怒りを煽っただろう。
「貴様ぁぁぁっ、何のつもりだ、あぁ!? 俺に手を上げてただですむと思ってんのか、あぁ!? 俺を誰だと」
「印酢鱒の大使の護衛、だったか」
 口上を最後まで言わせず、彼は錫杖を振り降ろした。起き上がろうとしていた男を突き飛ばし、倒れたところを錫杖で押さえつける。一見体重も載せていないように見えて、その実しっかり、身体を起こす力点を押さえつけている。あまりの見事さに、思わず息を吐いた。
「他種族と混ざり合いながらも優勢発現する遺伝子の強さと繁殖力の強さ、それに、怪しげな取引で得た星間同盟での発言力が、貴様ら印酢鱒の武器だったな。そのぶん、戌威などの武闘派には煙たがられ、この江戸では天人といえど日陰の身。いくら母星の威を借りようとしても、たかが知れている」
「ぐ…う、」
「個の欲求は種族全体の欲求の前には後回しにされる。その印酢鱒の貴様が、女子を力尽くで連れ出そうとする。さて、何を企んでいる?」
「ぐぁ……」
「答えぬのなら、」
 男を抑える力が、更に増した。ぎり、と、何かが軋む音を、聞く。それが鼓膜に響いた瞬間、近藤は前に出ていた。
「それ以上は、止せ」
 かの人の肩を掴み、腕を引き上げる。僅かにできた隙に、男は錫杖の下から這いつくばって逃れた。上擦った悲鳴を上げて、出口に駆け寄ろうとする。
「待て!」
「もう良いだろう。これ以上はやり過ぎになるぞ」
「やり過ぎだと?」
 笠の下から、琥珀の瞳が燃えるように近藤を睨む。すぐにそれは、まだちゃんと立てていない男に向けられた。近藤に注がれたのはほんの一瞬、けれどその激しさに、ぞわりと全身の毛が逆立った。
「印酢鱒の者よ」
 低い声が、形のよい唇から紡がれる。
「貴様らの狼藉、この桂小太郎が決して見逃さん。江戸で何かを企もうとするなら、必ず天誅を下す!!」
 雷に打たれたように、男は店から転がり出て行った。
 桂。その名を、近藤は口の中で繰り返す。
 天導衆のもと、新しい政権が立てられ、廃刀令が敷かれてからも尚、幕府に叛旗を翻すお尋ね者。天人の大使館に、爆破攻撃を繰り返すテロリスト。《狂乱の貴公子》とあだ名された、攘夷戦争の生き残りにして、英雄だった男。
 桂。
 もう一度、その名を呟く。
 桂は鋭い目を近藤に向けて、掴んでいた手を振り払った。そのまま、袈裟を翻して店を出て行く。怯えたような目で、店主も娘も、客達もその後ろ姿を見送った。
「ま、待ってくれ!」
 待ち合わせのことも忘れて、走り出す。路地から裏に回ろうとしていた桂の腕を、もう一度掴もうとして。ひらりと躱された。
「何のつもりだ」
 さっき、天人に向けたよりも低い声が、発せられる。こっちは何も悪さをしていないのになあと思いながら、近藤は怪しい者じゃない、と告げた。
 胡乱げな視線が、己を捕らえようとする男に注がれる。
「あ、違う! 俺は別にアンタを捕まえようってんじゃなくて、ただ話がしたいと」
「俺を捕まえることは、義務づけられているだろう。浪士組」
 ぽかん、と口が開く。
 まだ、集められただけで何の働きもしていない。リーダーは自分だ、という気運が、何となく広まりつつあるが、それすら決定してはいない。
 それを、目の前の男が知っていたというだけで、なんか。
「にやけるな、気持ち悪い」
「や、だって、知っててくれるって嬉しいじゃんか」
 笑って見せても、桂は警戒心を解く様子はなかった。素性を知っていたのなら、当たり前だろう。慌てて近藤は、「話をしたいだけってのは本当だ」と答える。

「アンタ、浪士組に入らないか?」

「………………は?」
 たっぷり三十秒は、間を置いただろう。間の抜けた声が、桂から漏れる。
「何を言ってるんだ、貴様は」
「や、だって、ずっと考えてたんだ。アンタ達攘夷浪士は、今でこそお尋ね者だけど、この国を思って戦ったんだろう?国を滅ぼしたいとかじゃなくって」
 笠の下から、琥珀が見上げてくる。探るような視線に、一呼吸おいてから、近藤は続けた。
「だったら、俺達と護りたいものは同じのはずだ」
「同じではない。天人に膝を屈した幕府など、日本の夜明けの妨げにしかならん」
「その夜明けとやらは、誰のためのものだ。江戸の人達のためじゃないのか?」
 桂が口を閉ざす。近藤の言葉を待たれているのだと、その眼を見て思った。
「だったら、同じだ。俺達だって、江戸の人達も護りたいと思ってる」
 動かない桂の、腕を掴む。
 ずっと、ずっと思っていた。
 見せられた手配書の絵の、若さに驚いた。並べられた罪状の多さに、驚かされた。戦場の記録は多すぎて、目を通し切れていない。罪人として追われながらもなお、市井で囁かれる逸話と、人気の高さに目を見張った。
 そして、浪士組設立の、直接のきっかけとなったという、桂の名乗りと戌威大使館への襲撃に。その時垣間見た、桂の剣さばきと、強いまなざしに。
「一緒に剣を掲げることができたら、どんなに良いか、って思ったんだ」
 腕を掴む手に、力が込もる。痛いんじゃないか、と、気づいたのはずっと後のことだ。とにかく近藤は、この手を振り払われたくなくて、思いを伝えたくて、ただそれしか考えていなかった。
「……ふん」
 きつく閉じられていた口が、ゆっくりと、笑む形に持ち上げられる。その微笑に、近藤も顔をほころばせかけて。
「甘い理想だな」
 掴む手ごと、振り払われる。
「ちょっ、どうして!」
「なら聞くが」
 慌てて桂に伸ばされた腕が、逆に捕らえられる。細腕とは思えない力に、ぞくり、と粟立つのを感じた。
 これが、攘夷戦争を生き延びた男の力。
「何故俺が、頷くと思った。まさか、目指すところが同じだから、と言うわけではあるまいな?」
 睨みつける琥珀は、熱を孕んでいるのに、何故かとても冷たい。彼の剣さばきのように、鋭いからだろうか。
「それじゃ、だめなのか?」
「……は」
 そのまなざしの熱と鋭さが、溜息とともに、かすかに和らいだ。気が抜けた、とも言う。
「本当に甘い理想だな。いや、理想とすら呼べぬ」
「だって、まず、それじゃないのか?」
 きょとん、と首を傾げながら、言葉を続ける。
「俺達は、みんな、ばらばらだ。一人一人、考えてることも好きなものも許せないものも違う。江戸で初めて出会った奴らだけじゃないぞ。トシや総悟、一緒に武州から出てきた奴らだってそうだ」
 土方のマヨネーズへの執着は、近藤には理解できないし、沖田の土方への愛情の裏返しも、理解しがたい。江戸に出た理由、浪士組設立の声に応えた理由だって、純粋なものばかりではない。理想、出世欲、名誉欲、大義名分を受けて刀を帯びることへの誘惑、出会うだろう強敵と刃を交える興奮。
 でも、どこかには、どうせなら江戸を護りたいと、思ったからこそ。自分達は、攘夷志士ではなく、浪士組として立つことを選んだ。
「だから、何よりも、江戸の民のことを考えてるアンタなら」
「それが、甘いと言うのだ」
 鋭い声で、遮られる。
「幕府は、天導衆は貴様の甘い理想など、一分の価値も感じてはおらん。せいぜいが、貴様等を都合良く動かすためのお題目だ。断じても良い、貴様等は、江戸の民ではなく幕僚の生命と財産を護ることを、強いられるだろう。或いは、政争の道具として使い潰されるかだ」
 意味など、ないと。
 言い切った琥珀は、再び炎を宿していた。激しく、そして冷ややかな炎は、まるで近藤を通り越して、別の何かに注がれているようだった。
(あぁ、)
 溜息を落とす。そう思ってしまったら、自然、口元はほころんでいた。
「何がおかしい」
「いや、あんた優しい奴だって思ってな」
「は?」
「俺らの心配をしてくれて、ありがとうな」
「はぁっ!?」
 大きく上がった声は思いの外高くて、まぁるくなった瞳に、整えられた表情は僅かに幼さを帯びる。桂の年齢を思い出して、近藤は思わず眼を細めた。
「誰が貴様等の心配などっ」
「だって、俺らのために怒ってくれただろ」
「貴様等のためではない、幕府の非道ぶりを思い出したら腹が立っただけだっ」
「あ、それ知ってる。ツンデレって言うイダダダダダダダダっ」
 掴まれていた手が捻り上げられる。ギブギブ!と騒ぐと、その手はぱっと近藤を解放した。逃れようと暴れていた近藤は、勢いのあまり尻餅をつく。
「貴様のような脳天気が長では、浪士組も早晩消えて無くなるだろうな」
「いつつ……あ、俺がリーダーって決まったわけじゃぁ」
「違うのか?」
 まっすぐ見つめられて、また近藤はへらり、と笑う。途端、桂は眉を潜めてそっぽを向いてしまった。
「……なぁ、桂。俺は、俺達の理想には、意味があると思ってるよ」
 桂の顔は、下げられた笠に隠されて見えない。無視されているわけではない、と、近藤は言葉を紡ぐ。
「俺達は、武州じゃ士籍も持たない、ただの浪人だった。それが、帯刀を許されて、侍になれるんだ」
「……侍たらしめるのは、刀の有無ではない」
「うん、だから」
 刀を抜き、構える。
 なんとかという名刀だと、刀商は言っていた。そんなものが二束三文で転がっているわけもない、贋作じゃないのかとトシや総悟は言っていた。俺達の大将ともあろうものが、贋作を振っていては様にならない、とも。
 それでも、構わないと思った。切れ味は確かだった。
 この刀が、自分を侍にしてくれる。

「俺達には、理想が、士道が必要なんだ」
 この刃に乗せた想いが、自分を侍にしてくれる。

「……ふん、」
 笑われるのかと、思った。
 生まれながらの武士であり、幼少の身で長州の名門に入塾を許されたという経歴の持ち主だ。生まれついてもいない者が想いだけで侍になろうなどと、それこそ、甘っちょろい理想だろうと。
「なら、見せてみろ」
 細身の刃が、抜かれる。触れあいそうな距離で、切っ先は近藤に向けられる。注がれるまなざしは、まっすぐに、真摯に、近藤を映す。
「貴様の理想、貴様等の士道を」
「……っ!」
 これ以上無いくらい、顔がにやけるのが判った。
 あぁ、と頷こうとして。
「近藤さんっ」
「無事ですかぃっ」
 二人の声が響くよりも前に、桂が身を翻す。どちらが投げたのか、飛んで来た石が、近藤の足下の地面を掠めた。
 呼び止める間もなかった。黒い法衣は、あっという間に壁を飛び越えて消えた。その、もう見えなくなった背中を、つい目で追いかける。
「近藤さん!」
 走り寄ってきた土方に、ゆっくりと振り返る。
「何やってんだよ、一体! 待ち合わせ場所にいねぇと思ったら」
「いや、ちょっとな。あぁ総悟、追わなくて良いぞ」
 近藤らを追い抜いた沖田は、道を塞ぐ壁の前で立ち往生していた。彼の身長よりもやや高い壁だ、それをどうやれば、あれだけ軽々と飛び越えられるのか、確かに不思議だろう。
「でも、近藤さん。アイツ、狼藉者ですぜ」
「あー、」
 何を、どう説明すればいいのだろう。へらり、と眉を下げながら、頭をぽりぽりと掻いて。
「悪い奴じゃないから、大丈夫だ」
 真相を知れば、何が悪い奴じゃないだ、と、激しいツッコミを受けるだろう。現に、二人は、何を言ってるんだコイツはと言わんばかりの視線を向ける。
 それでも。
「……アンタがそういうなら、まぁ良いけどよ」
「んじゃ、アイツが何かしたら、斬ればいいんですねぃ」
 ひとまずは、自分を立ててくれる二人に、じわり、と重みを自覚する。
 桂に語った近藤の理想を、体現するのはコイツらだ。近藤の理想が、コイツらの動きを、そしてコイツらへの評価を定めるのだ。
(しっかりしなきゃ、いけないな)
 そう思ったら、自然、背中が伸びた。
「んじゃ、行くか」
 二人を促し、踵を返す。二人も、半歩おいて後に続く。
 振り返りはしない。口に出さずとも判っている。次に奴とまみえる時は、敵同士だ。

(あぁ、それでも)

「そうそう近藤さん!松平のとっつぁんが呼んでたぜ」
「へぇ、とっつぁんが? 何だろうな」
「きっと、マヨネーズばっかすすってると士気に関わるから止めさせろ、んじゃなくて切腹させろってお達しでさぁ」
「そーごぉぉぉっ!!」
 青筋立てた土方から、ひらりと沖田は逃げる。近藤の周りをぐるぐる走りながらの追いかけっこは、いつものことだ。はは、と笑いながら、近藤は空に想いを馳せる。

 いつか、叶うなら。

(一緒に、酒でも飲みたいなぁ)

 酌み交わしながら語り合う理想も、他愛のない馬鹿話も、きっと、楽しいだろう、と。そう思ったのだ。



 耳元で、苦しそうな呻き声を聞く。銃弾が腹を貫通しているのだ、苦しくない訳がない。風通しが良くなったとか、そんなやせ我慢が、通るわけもない。
 ましてや、一人で残って見廻組を引きつけるなどと。
「いいのか」
 喘ぐ息の合間に、そう問いかけられる。
「俺を置いていった方が、貴様の生還率が上がる。俺のことは平気だ、いざとなったら死んだふりの一つや二つ、」
「確率とかそういんじゃなくて、俺がお前を置いて行きたくないんだ」
 こっちはもう、腹を括っているのだ。
 桂の手の内は、まだ残されているのかもしれない。確かに奴の言うことも、一理無いわけではないのだ。
 けれど、自分が嫌だ。
 そう、決意を込めて隣を見る。脂汗をかきながら、それでも強い光を損なわなかった琥珀色の眼は、やがて柔らかく細められた。
 土を踏みしめ、複数の足音が近寄る。殺しきれない気配を感じながら、息を整える。
「……もし、無事に戻ったら」
 独り言のような呟きに、桂が目を瞬かせる。
「お前と、ゆっくり酒が飲みたい」
「死亡フラグとやらか」
「違うよっ!!」
 慌てて否定する。いや確かに、何かそれっぽいなぁと言った近藤も思ったけれど。
「生還祝いとか、手を組んだ祝いとか、お疲れ様とか、あるじゃん! あとお前の誕生日とか」
 きょとん、とまぁるくなった眼に、まぁそりゃ驚くよなぁと思う。
 近藤としては、口実は何でも良かった。いや、たくさんあるに越したことはない。
 ただ、ずっと。
 願いと呼ぶにはぼんやりしすぎて、近藤自身すら忘れてしまっていた、ささやかなものだけれど、ずっと。
「なら、祝われる奴がもう一人いるな」
 ふわりと細められた琥珀が、ゆっくりと天を仰ぐ。生い茂った枝葉を抜けて、遠く瞬く小さな光、その、どれか一つに、きっと。
「……あぁ、そうだな」
 笑い、刀を持つ手に力を込める。
 力強い薙ぎ払いと、鋭い一閃、血と呻き声が、刃の先から生まれる。しぶとい反撃に、取り囲もうとしていた敵は浮き足だった。穴だらけの包囲を突破することは、難しくはない。ただ、その先が。
 一歩踏み出すごとに歯を食いしばり、顔を歪める程に桂が傷を負っていなければ。桂が、自分を庇ってなどいなければ。自分が、足手まといになっていなければ……っ!
「俺に、構うな」
 それでも鋭さを失わない太刀筋は、追いすがる敵を斬り捨てる。桂はこちらを向かない。必要ないと、信じてくれているからか。
「集中しろ、雑念に惑わされるな」
「桂、」
「生きて、帰るんだろう」
 は、と息を吐き出した口元が、小さくほころんでいるようにも見えた。あぁ、と大きく頷く。
「もちろんだっ!!」
 生きて、帰る。
 土方や、沖田や、仲間達の元へ。
 先に行ったであろう、松平野本へ。
 手を貸してくれた、万事屋達の元へ。
 何よりも護りたいと誓った、彼女の元へ。
「生きて、帰る!! 絶対にっ!!」

 そして、
 この、盃を。
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by wakame81 | 2016-06-19 14:00 | 小説。  

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