お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

I Dreamed a Dream

今年のネタは今年のうちに♪といいつつ、もう一つのネタはたぶん年が明けてからです。
お久しぶりです。
フィギュアスケートがすっかり熱かったです……夏はオフシーズンて言ったの誰ですか……すっかりアイスショーを楽しんじゃった上に、ジュニアは八月末から試合あるじゃないですか……。すみません……そっちにうつつをぬかしたのは自己責任です……。

526訓を読んで、「これはぁぁぁぁ!!!」と先走った妄想を書き殴ろうとして、翌週に近藤さんの生存が確認されて、アップに迷ったネタ。でも書いた。

タイトルは、ミュージカル「レ・ミゼラブル」から。邦題「夢破れて」。珍しく、書き上がる前からタイトルが決まりました。そんなことを考えていたら、528訓の桂さんの登場シーンが、民衆を導く自由の女神に見えて仕方が無いです同志求む。

キャプションにもあるとおり、528訓を読んでのフライングネタです。

つまり、「冒頭の土方さんの夢が、本当にあったことだったら」の、内容です。作中には明言してませんが、近藤さん死ネタです。

苦手な方は、回れ右どうぞ。










 泥のような身体を引きずって、まだ帰り慣れない道を歩く。
 一歩一歩が、鉛の足かせでも括り付けられたかのようだ。気を抜いて目を閉じれば、あっという間に眠りに落ちることができるだろう。それでいい。何の夢も見ずに、深くふかく眠りたい。
 いや、それじゃダメだ。たとえ酷い汗をかきながら飛び起きるような悪夢でも、あのひとの顔を夢に見ないで眠るなどしたくない。
 ゆっくり眠りたい。身体が、溜まる疲労に軋みを上げている。
 忘れたくない。忘れてはいけない。
 互いに責め合う思考の中をぼんやりと歩く土方の耳に、聞き慣れた声が聞こえる。
 空耳か。
 打ち消そうとした思いとは裏腹に、眼はその声の主を探して彷徨う。
「土方」
 やはり、幻聴などではなかった。
 夜の闇にも溶けるような、黒い法衣と涼しい音を立てる錫杖、深くかぶった笠が持ち上げられ、琥珀のまなざしがまっすぐに土方を捉える。
「……桂」
 掠れるような呟きだったろうに、待ち人はしっかり、頷いて見せた。
 
 
      ◇   ◇   ◇
 
 
 その後ろ姿を、沖田は決して見間違えない。
「……桂ぁっ!!」
 呼ぶ。走り出す。手を後ろに回すが、そこにはバズーカを手渡してくれる部下などいない。今の沖田に辛うじて許されているのは、腰の刀のみだ。それも、沖田が答えを出すまでの期限付のものでしかない。
「待ちやがれっ」
 それでも、身体が勝手に動いた。最早本能と言えた。それを否定されたのは、つい数時間前のことだけれど。
『貴方にはもう、桂小太郎を追う権限などありやしませんよ。それは、我々見廻組の仕事です』
 そう、冷ややかに、白い隊服をまとった男は言い放った。追うのなら公務執行妨害で斬る、とまでも。
『てめーらの手に負える相手じゃねぇですぜ。手伝ってやろうってんでさぁ』
 イッパンシミンのゼンイのキョウリョクとやらを持ち出しても、佐々木異三郎はそれを許さなかった。
『あれを追いたいのなら、我が隊に入隊してからいらっしゃい。貴方ほどの腕なら、歓迎しないこともないですよ』
 奪われたモノの大きさを、改めて噛みしめる。指示を出され屋根の上に登ろうとする白い隊服どもは、面白いように桂に翻弄されている。今井信女すら、勝手をまだ掴みきれていないようだ。
 歯痒かった。
 自分なら、もっと上手く追い詰められる。ずっと、桂を追っていたのは、自分なのに。
「ざけんな……っ!」
 今は夜、辺りには見廻組どころか誰一人としていない。寝静まった街中を、走る。このルートは知っている。先回りをするか、いやそう見せかけて別のルートに行かれる可能性も高い。ひたすら、追うしかない。
 桂だけを、ただ見つめて。
「待ちやがれい、かーつらぁぁぁっ!」
 牽制に、拾った石を投げつける。勢い任せのそれはまっすぐに桂の頭部を目がけて飛び、素早くかわしたその隙に、一気に間合いを詰め、刀を抜く。斬りかかる刃を桂は手刀で弾く。その袖を掴み、勢いよく引き寄せる。傾いだ体に足払いをかける。
「がっ」
 土を踏み固めた地面に、黒髪が散らばった。 
 激しく背中を打ち、息を詰まらせる桂を組み伏せ、沖田はやっと息を吐く。一瞬の攻防に、血がまるで沸騰しているようだ。その熱の名残を追うように、腕の下の存在を確かめるように桂を見下ろして、はてと首を傾げた。
 勝負は水物。しかし、あまりにも呆気なさ過ぎやしないか?
 微かに寄せた眉に気づいたのか、口をはくはくと動かしていた桂が、口端を歪めて見せた。
「っ!てめー、わざと!?」
「さすがに気づいたか。思っていたより鈍っていなかったようだな」
 カッと、頭が熱くなる。舐めるなと怒鳴ろうとして、無理やり言葉を捩じ伏せた。怒りに身を任せては、桂の思うつぼだ。
「んで、わざとらしい真似して、何のつもりでぃ」
「この方が、不審がられずに話ができるだろう」
「何の話があるってんでぃ。まさか、俺を、嘲笑いにきたとか?」
 今まで散々、敵対しあってきた間柄だ。その邪魔者が、仕えてきた主君も従ってきた長も護れずに失って、組織として存続することすらできなくなった。桂としては、さぞや胸の空く思いだろう。そこまで邪魔だと、認識されていれば、だが。
「それで貴様らが、奮い立つならばな」
 存外、静かな声だった。沖田の右手には、剥き身の刃が握られている。いつ、首を掻き切られるかも判らないのに、桂は静かに沖田を見上げる。
「今、貴様らを笑う事になど、何の意味もない」
「っ、なぁに敵に遠慮してるんでぃ。笑えばいいだろ、何もできなかった、何も護れなかったアホ共って…!」
 声が苛立ちに高まる。吐き出した言葉は最後には苦くて、沖田は唇を噛み締めた。
「だから、それには笑う意味がない」
「は、」
「貴様らが本当に何もできなかったのか、何も護れなかったのか、それが決まるのは、これからだろう」

 たとえそれがどんな道であろうとも。
 お前達は真選組だ。

 土方の声が、蘇る。あの顔を見た瞬間、手を離されたのだと悟ったのだ。土方にではない、近藤に。
「……でも、」
 堪えろ、と唇を噛む。桂に、吐き出す言葉ではない。
「今はまだ、見えんか」
 なのに桂は、正解にそこを突いてきた。言い当てられた悔しさに、更に歯を食い縛る。
「今の貴様らは、指針を失ったばかりだ。手を下した者を、命令を下した者を憎む事や、己が無力を悔いる事が、できるなら、まだその方が楽だったろう。近藤の護ろうとしたものを、素直に受け継ぐ事ができないのも、仕方ない。それだけの、仕打ちだ」
 晒された首が、ありありと蘇る。ぞわり、と逆立つ嫌悪を振り切るように、頭を強く振る。
「判ったような口を…!」
 声を、絞り出した。目の前が真っ赤に染まる。刀を握る手に、力が籠もる。
 が。
「そうだな。俺には貴様の気持ちなど判らない」
 あっさりとそう言われ、沖田は面食らった。
「ただの推測だ。そんな気持ちもあるのだと、誰もが託されたものを素直に受け取れる訳ではないことすら、知ったのはつい最近の事だからな」
 琥珀の眼差しが遠くなる。言葉の端にかすかに混じった苦味に、沖田は耳にしただけの攘夷戦争を思い出した。
 多くの志士の命を奪った攘夷戦争、その数少ない生き残り。同じような立場にありながら、桂の側に今はいない、二人の男。
「時に時代が、命を奪う事もある。そのうねりがどこから生まれて、どこへ向かうのか。知る事は、貴様の答えの助けになるかもしれん」
 琥珀が まっすぐに、沖田を見据える。
「俺の元に来い、沖田」
「……てめーが教えてくれるって?」
「貴様が出す答えだ。ただ、俺の元ならば、得られるヒントも多かろう」
 まっすぐな琥珀が、確かに自分を写しこんでいる。今まで、こちらを向こうともしなかった眼差しが、沖田だけに注がれている。
「俺の元に来い、沖田。貴様程の男を、ただ腐らせるのは惜しい」
 欲しがられてる。その眼差しは、確かにそう訴えていた。
 桂は、嘘が上手い。今までなんど、涼しい顔をしたこの男に翻弄されてきたか。
 けれどそれが真実だと、沖田は感じた。何の根拠もない勘だ。けれど、今までこの勘が沖田を生かしてきたし、この男をずっと追い続けていたという自負もある。
「そりゃ、願っても無いお誘いだねぃ」
 口端を、歪ませる。
 桂は三度、沖田の名を呼んだ。その唇に、誘われるように顔を落とし。

 ごん。
 
「「っつぅ~~~~~~っ」」
 思い切り、頭突きを仕掛けてやった。
「~~何をする、いきなりっ」
 そう、涙目になって詰る顔に、胸が空く。……額が痛い。
「確かに願ってもないけど、お断りさせて頂きやすぜ」
「良いのか。俺を手に入れる、最大の機会だったのだぞ」
「そりゃ逆だろぃ」
 悪戯が成功したような顔で、笑って見せた。
 そう、逆だ。桂が沖田のモノになるのではない。沖田が、桂のモノになるのだ。
「そんな条件、飲めるわけねぇでさぁ」
「そうか」
 途端、みぞおちに鈍い痛みが走った。桂を押さえつける腕が弾みで緩み、その一瞬の隙に投げ飛ばされる。
「っつ」
「それは、残念だ」
 額を軽く撫でて、桂は立ち上がる。沖田も身体を起こして構えた。いつでも飛びかかることのできる低い姿勢だが、桂は涼しい顔で沖田を見やる。
「これでも、言った言葉は嘘ではないぞ?」
「そいつは判ってまさぁ」
 おそらく、この先はないだろう。桂が、自分を欲しいと言ってくれた。
 けれど、それではダメなのだ。
 今こそ自分は、一人で立たなくてはいけない。近藤や、土方や、茂々らが与えてくれた理由に寄りかかるのでは無く、己が魂を支えにして。
「次があると思うな」
「そいつはこっちの台詞だぜぃ」
 声を立てず、桂が笑う。風が吹き、黒い髪が闇の中に舞い上がる。その美しさに一瞬目を奪われ。
「ではさらばだ、ふははははははははは!」
 その余韻をぶち壊すように、追われ人の姿は消えた。今までと、何も変わらない。
「……ははっ」
 消えた背中を、眼で追いながら笑った。
 これでいい。後悔なんかしない。
 この先、自分がどういう答えを出すのか。腐るのか、憎悪に全てを焼き尽くそうとするのか、何も判らない。
 けれど、もし、この先。あの隣に、立つのだとしたら。
「そいつは俺が、俺の意志で選んだことでさぁ」




 深夜まで、隣近所の酔っ払いの声が喧しく響く、ボロい長屋の一角、そこが今の土方の住まいだった。
「邪魔をするぞ」
 土方が開けた引き戸を、桂は平然とくぐる。絶対的権限は失われたとはいえ、土方は未だ警察に籍を置く身分だというのに。
「舐められたもんだな」
「訪ねてきた客を、罠にかけるような、そんな男ではなかろう」
 勧められるままに、板戸に腰を下ろす。その剛胆さに内心舌を巻きながら、欠けた茶碗を二つ手に取った。殆ど使っていない蛇口を捻ると、二、三度詰まりそうになりながら水が迸り出る。
「あいにく水しかねーが。それとも、白湯にしてやろうか」
「充分だ」
 座布団も敷かれない畳の上にお行儀良く正座をして、桂は差し出された茶碗を受け取る。目の前に茶請けもないし、左回りに椀を回す作法もしなかったが、まるで茶を点てたような錯覚を、土方は覚えた。
 こうして招き入れた今でも、ここに桂が居るということが信じられない。夢ではないのか、目をつぶってもう一度開いたら、目の前の男の姿は消えているのではないか。
「どうした、眠いのか」
「や、違ぇけど」
 やっぱ、夢じゃないっぽい。
 改めて、何でこんなことに、と考える。いや今までも、やむを得ず協力体制を取ったことはあったし、真選組に隊士と偽って潜入されたことまであるのだ。桂の肝の据わり具合は、土方には計り知れないということか。
「おい、今何か音がしなかったか」
「風か猫だろ。この長屋、立て付け悪いし壁薄いし」
「いや、ちょっと様子を見てこい。尾行されたとは考えにくいが、そもそも貴様自身が監視されている可能性はある」
「おい、何で俺が。お前が見てこいよ」
「俺が出て行ったら余計に怪しまれるだろう。目撃されたらどうするんだ」
「…………。」
 いや、こうまで慎重だからこそ、今まで真選組にも目の敵にされただろう天人達にも、捕まらずに逃げおおせているのだろう。そう自分に言い聞かせ、外を覗い見る。
「……暗くて、何にも見えねぇぞ」
「そうか」
 自分で確かめたわけでもないのに、その一言を桂はすんなり受け入れた。良いのかよ、と思いながら土方は桂の前に腰を下ろす。その顔をじっと見て、桂はフンと口端を持ち上げた。
「貴様に見えん距離を取っているなら、盗み聞きされることもないし、襲撃されたって充分対応できるだろう」
 顔に出ていただろうか。ぶす、と口を尖らすと、また桂が笑う。何というか、居心地が悪い。
「それで?」
 そのむず痒さを押しやるように、茶碗を半分ほど煽る。促された桂は、椀を置いて、まっすぐに土方を見つめた。
「俺の負けだよ」
 そう、噛みしめるように告げた口元は、ほころんでいるように見えた。
「沖田も、斉藤も、山崎も、佐々木弟も、他の隊士達も皆、俺の手は取らなかった。お前の勝ちだ、土方」
 ……それは、賭だった。
 茂茂を護れず、近藤と松平を喪い、組織としても否定された真選組を、土方は近藤の遺志を受けて解散するしかできなかった。そこへ、桂が手を伸ばした。
 居場所をくれてやる、と。思想を共にしなくとも良い。復讐に身を焼き尽くすことがなければ、それだけでいい。桂をリーダーと仰ぐのは形だけでいい。近藤の残した、自分達の抱いた士道と矛盾しない間だけでいい。
 護りたいのなら、その剣を振るう場所をくれてやる、と。
 まず土方に手が差しのばされたのは、元副長であったことを買ってくれたからだろうか。土方が受けたという事実があれば、他の隊士達も桂の手を取りやすくなるだろう、という思惑は簡単に想像がついた。だから、という訳ではないが、土方は返事を保留にした。
 他の隊士達の、誰でもいい。誰か一人が首を縦に振ったならば、自分も桂の手を取ろう。
 元副長として、隊士達の意志を誘導するつもりはない。ただ、望むなら、元副長として責任は果たそう。
 矛盾するような、逃げのような答えだったが、桂はそれを聞き入れてくれた。そして。
「斉藤や山崎は、確実に落とせると思ったのだが」
 そう、桂が浮かべた笑みは、どことなく柔らかい。自嘲しているのとも違う。
 ゆっくりと、桂は隊士達一人ひとりのやりとりを、かいつまんでだが語る。

 沖田には、侮るなと言わんばかりに断られた。
 斉藤には、友でありたいからこそ今は手を取れないと首を振られた。
 山崎には、まずはどこにも属さない立場で、世の中を見たいと答えられた。
 佐々木鉄之助には、兄のことをもう少し自分だけで考えたいと言われた。

 誰にとっても、魅力的な申し出だったろう。けれどそれでは、今までと何も変わらない。
 桂の手を取ることは、近藤の遺志を捨てることとは違う。けれど、頼るべきよすががなくなったから手を取るのでは、結局近藤の遺志を捨てることと同義だ。
 近藤が見た夢だから、桂が手を差し伸べてくれたからではない。
 自分の中の士道を抱いて、自分自身で立たなければ。

「……ははっ」
 話を最後まで聞き終えた土方の、口から零れた笑いが苦い。
「そういう訳だ。良い部下を、いや良い同志を持ったな」
「俺にはもったいねぇくらいだけどな」
 一番、近藤や皆に寄りかかっていたのは、自分なのだろう。
 自嘲に、桂は静かに首を振る。
「貴様がただ責任者という立場の上にあぐらをかいただけの男だったら、俺はまず貴様を説得しただろう。囲うことは容易い。それをしなかったぐらいには、俺は貴様を買っているし、買いかぶりだとも思わん」
「……そうかよ」
「芋虫が蝶になるには、蛹の期間を経ねばならん。そういうことだ」
 むず痒い。こそばゆい。桂の言葉を裏を探ろうにも、さっきから頭がぼんやりしている。気恥ずかしさにショートするような、ヤワな思考回路をしているつもりはなかったのだが、やはり疲れているのだろうか。
 冷たいものでも口にして、頭をしゃっきりさせたい。が、水は、話の途中でとっくに飲み干していた。お代わりを汲みに立ち上がろうとして。
「……あ、れ」
 立ち上がれずに、倒れ伏す。受け身も取れないところを、桂の腕がふわりと受け止めてくれる。
 頭が回る。身体が重い。瞼が、重い。
「疲れが溜まっているだろう。隈が酷いぞ。良く休め、良く効く薬だから深く眠れるぞ」
「いつ盛った……っ」
 外を見に席を外させた時か。してやられた、と悔しがる前に、掌が視界を覆い隠す。心地よい眠気に引きずり込まれそうで、抗うように首を振った。
「眠たくなんか、ねぇ……っ」
「俺がいるからか。それとも、眠るのが怖いか」
 そのつもりはなかったが、一瞬身体が強張ったのが、桂にも伝わってしまった。瞼の上を、柔らかく、ぽん、ぽんと、撫でられる。頭の下に添えられた膝から、ひとのぬくもりを感じる。
「大丈夫だ、怖い夢は見ない。俺が、ついていてやる」
 囁く声はどこか甘い。抗う力は、どんどんと奪われていく。
「今は休んで良いんだ、土方。そして、もう一度、立ち上がれば良い」
 ずるい奴だ、と思った。
 何より、ここまでしておいて、土方を口説いているという自覚がないのがずるい。
 そして、ここまでされて、何も応えないのは男がすたる。いつか、ちゃんと立ち上がって、桂に会いに行こう。他の誰でもない、土方自身の答えを持って。
 でも、今は。
「お休み。土方」
 やわらかな声に委ねるように、土方は眠りについた。
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by wakame81 | 2015-12-31 23:45 | 小説。  

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