お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

揺籃に雛は唄う

明けましておめでとうございます。は、もう過ぎましたね(汗)。
寒中お見舞い申し上げます。正月早々の嵐、南関東以外の皆様はいかがお過ごしでしょうか。修造さんはしばらく日本にいるといいよ。


銀魂再々々アニメ化、おめでとうございます。
今度こそ、黒子野っち編や、十二宮編はやってくださいますよね。
一輝兄ちゃんの声は、堀さんでお願いします。沙織んの声は、藩ちゃんでお願いします。でも、Ω版なら許す。何故なら、兄ちゃんの中の人と銀さんの中の人が同じなので(笑)。
……Ω早く見ないと。


さて、まさかの結末を迎えた将軍暗殺編でした。うん、まさかでした。
これに関しても色々ネタの種は植えてみたりしているのですが(発芽するかは知らん)、とりあえずその前に、村塾回想のネタを一つ。
第157訓のネタです。ネタバレいやんな人は、要注意です。











 慣れている筈の正座が、息の詰まるような痺れを訴えてくる。血の気がなくなる程ぎゅっと握りしめた拳は、強張って震えていた。殿様の御前で漢詩を詠んだ時だって、ここまで緊張などしなかった。
 どうしてこうなった。
 小太郎の疑問とか戸惑いとか緊張とかとは無縁に、一切顧みずに、小太郎にこの状況を強いた男は呑気に茶を立てている。
「立てたのは、久しぶりですよ」
 普段はただ乾燥させただけの茶葉に、湯を注いで淹れるだけなのだと。吉田松陽は笑って、茶碗を小太郎の前に差し出す。
「どうぞ」
「……いただきます」
 震える手を抑えながら、茶碗を手に取る。一口含んだ茶は、苦く、あたたかい。
「茶請けもどうぞ。銀時の好物なんですよ」
 出されたのは、干した苺だ。促されるままに手に取るが、口にするのがつい躊躇われる。
「おや、嫌いでしたか?」
「いえ、その、久しぶりなもので」
「ほう」
 松陽の眼が、微かに見開かれる。それから、なら是非どうぞと勧められた。言われるまま口にする。
「…………」
「どうですか、お味は」
 駄々甘です、とも言えず、けれど丸飲みすることはお婆の教えが許さず、恐る恐る噛みしめる。……甘い。外側の、砂糖にまぶされた部分を舐めるだけでも甘いのに、干された事で凝縮された甘味が、口いっぱいに広がって、ただひたすらに、甘い。
「銀時は、まだ甘さが足りないと言うんですよねえ。生の方が好きな癖に」
 その好みは矯正したほうが良いのではないか。そう言いたかったが、口の中に食べ物があるうちではそれは叶わない。
 何とか噛んで飲み込んで、口をすすぐように茶を飲む。……苦い。
 けれど、その苦味が、ほっとする。
 改めて、目の前の男に向き直る。さっきまでの緊張はほぐれて、やっと小太郎は落ち着いて、どうしてこうなったのかを振り返る事ができた。
「吉田殿」
「はい?」
「高杉は、どこに駆けていったのですか。それに、坂田銀時や、塾の生徒達は」
 高杉が殴り込みをかけるこの時間はいつも、塾の生徒達は道場にみんないる。女子も同じだ。それが、今日は誰もおらず、高杉は松陽と何か言葉を交わして、膨れっ面で飛び出していった。訳も判らず、とにかく高杉を追おうとしたところを、小太郎はこの男に捕まったのだ。
 
『せっかく来たのですから、お茶とお菓子でも頂いて行きなさい』

 そう、有無を言わさぬ笑顔と共に。
「銀時やみんなは、今頃稲刈りしてますよ」
「……は?」
「それを、道場破りさんに教えたら、飛び出していってしまって。場所は教えましたが、彼処は広いですから。迷ってなければ良いですが」
「稲刈りって」
 何故、と疑問を口にする。松陽はまた、おや、と言いたげに眼を開き、そして細めた。
「生徒の一人のご両親が、腰を痛めたそうで。それがなくとも、農繁期には、皆で手伝いに行こうと、親御さん達との間で、約束はしてたのですよ」
「それが、農民の子達を働かせずに、この塾に通わせる条件ですか?」
 松陽は、また眼を細めた。そうして彼が微笑むと、どこかくすぐったく感じる。
 しかし、考えればすぐに判ることだった。
 普通の寺子屋だってそうなのだ。貧しい者達にとって、ある程度の歳の子は貴重な労働力だ。この忙しい時期に、塾へ行かせる余裕などない。
「別に、この約束を残念に思う訳ではありませんよ?むしろ、喜ばしい事です」
「はい?」
 驚きに裏返った自分の声は、よほど面白かったのだろう。クスクスと、松陽は笑う。
「苗を植え、水を調整し、草をむしり、虫を追い、そしてできた実りを手にいれる。塾の中で勉学に励み、刀を振るうだけでは得る事のできない、貴重な経験です」
「けれど貴方は、彼らを彼らなりの侍にしようとしていたのでは、っ」
 慌てて口を塞いだ。あろうことか立ち聞きをしていたなど、失礼にも程がある。思わず首を竦める小太郎に松陽は笑って「構いませんよ」と告げた。
「ならば聞いていたでしょう。私は彼等を闇雲に侍にしたいのではない。私の教えをどのように糧にして、どのように育つのかを、見たいのです」
「ですが、」
 ぽろり、と、止める間もなく逆接詞が零れ落ちた。
 松陽の言葉が、理解できない訳ではない。それでも飲み込みきれない、戸惑いがある。反論の前に、疑問の前に、それらを飲み込んで、言葉を形にしないといけない。
 なのにすぐには噛み砕けない。悔しさに、唇を噛み締める。
 しばらく、小太郎の言葉を待っていた松陽は、やがて柔らかく笑んで、苺をつまみ上げた。
「この苺も、今銀時達が刈り入れている稲も、誰が汗水流して作り上げたか、解りますね」
 頷く。松陽はまた、声を出さずに笑ってくれた。
「米を炊くかまどや装う器や、箸を、誰が作ったか。そして、誰が彼等の下から私達の手に届けてくれたかも」
 頷く。
「政事を行うのは武士、けれど、農民や職人や商人らが支えてくれなければ、我々は生きる事もままならない、と。それを教えるために?」
「その通りです」
 柔らかい笑みが返され、ほっと息を吐く。そう、松陽に頷かれることが、嬉しい。
「私の教え子達が皆、武士の身分を得る訳ではないでしょう。田畑を受け継ぎ、或いは手に技術を持つ者も、商いの道を行く者もいるでしょう。それならば、忘れないでいてほしいのです。武士より下と定められた身分でも、その職は武家を、民全体の生活を支えているのだという、その事実と、誇りを、伝えたいのです」
 そして、武士となり政事に関わるならば、自分がいかにたくさんの者に、支えられているのかを。
「ですから、稲刈りを手伝わせてもらえる事は、私にとってありがたい事なのですよ」
 そう、話を閉じた松陽の言葉を、小太郎は身を乗り出して聞いていた。語り終えた松陽と、目が合う。柔らかく細められたまなざしに笑みと頷きを返そうとして、は、と我に返った。
「ありがとうございます、吉田殿」
 知らず強張った声を、松陽は気づいただろうか。
「他に、聞きたい事はありますか? 君の話したい事でも良いですよ」
「いえ、ありがとうございます」
 残った茶を飲み干す。深く頭を下げようとした小太郎の動きを、松陽は制した。
「また、いらっしゃい」
「……高杉が迷惑でなければ」
「私は君を誘っているのです」
 思わず顔を上げる。笑みを消したまなざしが、じっと、小太郎に注がれている。
 反射的に頷きそうになった頭を、堪え、持ち上げる。はい、と答えそうになった唇が、震えていた。堪えるように噛みしめ、ゆっくりと頭を横に振る。
「おや。君も興味があると思っていたのですけどねぇ」
「、何故」
 吐き出す息に、紛れるように問いかける。
「道場破りさんを止めるのなら、とっくにそうしていたでしょう。でも君は、止めなかった。見定めようとしたのは、彼が何を得るかだけでしたか?」
 強く、目を閉じる。視界を閉ざしても、己の内は全て見透かされていたのだけれど。
 言葉は、更に紡がれる。その一言一言が、小太郎の逃げ場を封じていく。
「身分の低い者達を集めてさかしらに教えを説き、国家転覆を企むような所に通う、そのリスクは君も彼も承知していたでしょう。それでも尚、ここへ来続けた、その理由はなんですか?」
「っ、高杉は、良いんです」
 耳を塞いでも小太郎の中に響いていく言葉に、堰を切ったように応えた。
「確かにアイツは、親父殿からここへ通うことを禁じられています。だけど、ここへ来ることで、アイツは変わろうとしている。それが良いモノなんだ、アイツが立派な侍になるために必要なことなんだって判ったら、きっと親父殿も許して下さる」
 でも。
「でも、俺はダメなんです。講武館は辞められない。俺は、あの場所で、立派な武士になれるって証明しなきゃいけない。あの場所で、偉くなって、上に行かなきゃいけない」
 拳を握りしめる。同じように、震える唇を噛みしめて、わななく拳を握りしめていた。
 あの日。
 お婆が死んで、天高く登っていく煙を見つめながら。
「そうでないと、顔向けができない。俺が、俺が、桂の家を護っていかなきゃいけないのに……!」
 吐き出した言葉を否定するように、首を振る。畳に落とされた視線の中に、松陽の大きな手が映り込んだ。
 家に縛られる愚か者だ、と軽蔑されただろうか。それだけじゃない、と歯を食いしばり口を閉ざす、その頬に。
「君は、頑張ってきたんですね」
 大きな手は、柔らかく触れた。
「……っ」
 そのあたたかさに、息を飲む。伸びてきた親指が目尻を撫でる感触に、やっと自分の眼から、涙が溢れそうになっていたのだと自覚する。
「本当に、頑張ってきたんですね」
「……ふぁ、」
 堪えてきたものを、これ以上抱え続けることはもうできなかった。
 ぼろぼろと、涙が零れ落ちる。嗚咽が、口から溢れ出る。みっともないと、父母の死後から泣くのは止めていたのに。
 止められない。
 いつの間にか、松陽の腕の中に、抱き留められていた。大きな手がぽん、ぽん、と、頭を撫でてくれる。何年ぶりになるだろう、久方のぬくもりに身体を預ける。
 そして、ぽつぽつと、嗚咽の中にもう一つの理想を含ませ、溢す。
 幼い理想だろうけれど。松陽は、笑いもせず、頷きながら聞いてくれて。
「やはり、言いましょう。君はうちに来なさい」
 涙に喉が詰まり、咄嗟に頷けなかった小太郎に。
「まだ迷うのなら、そうですねぇ。おにぎりでも握りにお出でなさい」
 やっと落ち着きかけた小太郎に、その言葉をかけてくれた。
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by wakame81 | 2015-01-09 01:39 | 小説。  

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