お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

栄光への架け橋

たいりくだなは、安藤美姫を全力で応援しています(いいえがお)
もちろん、鈴木も浅田も村上も宮原もみんな好きですよーいい演技、悔いない演技をしてほしいと思ってますよー男子もがんばれちょうがんばれ。羽生はスタミナコントロールしてけ、町田は落ち着いていけ、小塚は思い切りいけ高橋は右足気をつけて織田は織田らしくがんばれケアレスミス気をつけて、武良はもう吹っ切っていっちゃえ、あとの子たちもジャンプと基礎がんばって、スケーティング滑らかになればもっと飛べるから高いところへ。
リード姉弟は、とにかクリスの膝が心配です無理するな流しでいいんだからエキシビションだって無理しなくていいんだからね!
成龍ペアは、結成してやっと十ヶ月なのによくここまできた、木原くんようがんばった、今期はもう楽しんでいけでいいんだから高橋ちゃんももっとリラックスしていっていいんだからね!
それはそれとして、安藤ちょうがんばれ。私の女王はいつまでもあなたです。演技最後に悔いなく笑うあなたを、見たいです。

という思いが九月末のネーベルホルン大会からずっとくすぶってたのを、ようやっとアップすることができます。
フィギュアスケートパロです。六月に荒ぶって書いた小ネタと同設定、つまり、
桂さん=トリノでの銅メダリストでその直後引退して行方不明でした、六月のアイスショーでお久しぶりにお目見え。
沖田=日本男子シングル期待の星(と書いてルーキーと読む)、次世代のエース筆頭。
あと今回いないけど、
近藤さん=日本男子の現エース、トリノまでは桂さんと一枠を争ってきたライバル、トリノ以降の男子シングルを引っ張ってきた人。
土方=トリノ以降から近藤さんと一緒に日本男子を引っ張ってきた人。
松平さん=沖田、近藤さん、土方らのコーチ。ちょうスパルタ。

が、います。今回の話にはいないけど。


うん、安藤がんばれちょうがんばれ。








 流れ出る、異国情緒あふれるメロディー。その調べに乗って、滑らかにエッジが滑り出す。世界に引き込むような腕の振り、軽やかなステップから一直線のスケーティングへ。
 左足での助走を充分につけて、右足のトゥで踏み切り、跳ぶ。
 それは、決まれば、新しい歴史を刻むジャンプになったはずだ。けれど、かれは着氷することはできなかった。
 足らない回転、両足での着氷、そして転倒。
 そのミスを補うかのように、立ち上がり続けられた演技は気迫がみなぎっていた。けれど、それは完璧な演技には繋がらず。
 まだ、フィギュアスケート、男子シングルへの注目が多くは無かった時代。まして、磨ききれていないジュニア
の大会で、その挑戦は歴史に語られず埋もれることとなった。

 でも。自分は忘れない。
 まだ、滑る意味が曖昧だった自分に、深く刻み込まれた、めざすべきものとなる。


   ◇   ◇   ◇


 午後八時。誰もいなくなったリンクに、踏み入れる。
 普段、練習しているリンクとは違い、呆れるほど小さい。まだ早い時間だというのに、練習する者がいなくなるのも不思議だった。競技用じゃないと、こんなものか。
 氷を蹴る。最初は軽く、次第に深く。トップスピードに乗り、リンクを回る。オフシーズンで無理はするなと言われている。けれど、欲は素直に身体を突き動かす。
 大きな楕円の軌道を描きながら、右足に体重をかけ、左足で踏み切る。高く飛び上がり、回る。いち、に、さん、し、を数えず着氷。
「まーだちょっと早いか」
「何をしている」
 かけられた声に、沖田は顔を上げた。一週間前に至近距離で見た、強い琥珀がまっすぐに突き刺さる。腰まで届く長い髪に細い身体は透き通るようで、とてもスポーツをたしなむようには見えない。
 けれど、彼は間違いなくスケーターで、この小さな競技場のインストラクターで、一週間前に沖田の度肝を抜いた演技者で、そして、日本人男子スケーター始めての、オリンピックのメダリストなのだ。
「ここで、何をしている」
 答えの無い沖田に向ける眼光は、更に鋭くなる。口端を緩めて、それに答えた。
「アポ入れたでしょ? アンタに会いに来たんでさぁ」
「部外者は勝手にリンクに入るな。もう製氷に入るんだぞ」
「そいつぁスイマセンっした」
 軽く頭を下げながら、リンクサイドへ上がる。ただし、靴は脱がず、エッジにカバーはかけて、だ。
「アンタ、ここにいたんですねぃ」
 お遊び程度にしか滑れない、狭いスケートリンク。初夏を迎えようというこの時期にオープンしていたのが、不思議なくらいだ。オリンピックメダリストがいていい場所じゃ無い、と、近藤や土方なら言っただろう。
「ここで、子供相手にスケート教室? 世界の舞台に立とうってんなら、もっと大きくて設備の立派なとこ行くで
しょーが。青田刈りにしても見込み無しなんじゃねーですかぃ?」
「将来のトップアスリートを育てているつもりはないぞ。そもそも、まずフィギュアスケートというものに興味を
持ってもらわないと、育てるも何もあるまい」
「こんなとこでお遊戯しながらですかぃ」
 む、と。桂の口がへの字にひん曲がる。沖田は撤回する気はなかった。昼間の教室で見た、あんな練習とも言えないお遊び、スケートを始めたばかりの自分すらやったことはない。
「どんなアプローチでスケートへの興味を持ってもらおうと、貴様には関係ないだろう」
「こんなとこで時間潰してんのが、もったいないって言ってんでさぁ。アンタのスポンサーは、そんなこと何も言
わないんですかぃ?」
 一筆書きで描いたような、きれいな眉が寄る。怒りか、図星を指されての狼狽えか。後者にかけて、沖田は続ける。
「フィギュアスケートへの興味ってんなら、よっぽど近藤さんの方が貢献してやすぜ。世界のルーキーが、四回転ジャンパーを目指す奴が、何人も憧れの選手として、あのひとの名前を挙げてる。競技会で見る演技だって、あんだけの喝采もらえるひとなんだ」
「だが、遠いだろう」
 声音から、僅かに鋭さが和らいだ。穏やか、というより。
「自分が滑ることと結びつかないだろう。そして、気づかないだろう」
 かすかに細められた琥珀が、紡がれる声が、どこか、遠い。
「フィギュアスケートが、苦しいだけのものではないということに」

 沖田は、知らない。
 感動どころか鳥肌すら立たせた、シニアデビューの演技と、翌年のオリンピックでの情感溢れた演技。そして得た、日本人初のメダリストという栄光を捨て、どうして桂が引退をしてしまったのか。どうしてその後、消息を絶ったのか。
 一説では病が噂された。そのシーズンのグランプリファイナルでは、散々な結果に終わったのを沖田も知っている。何より、あの身体で滑りきったことが奇跡だと、ライバルだった近藤から実際に聞かされている。
 けれど、それにしても。

「だから、俺は伝えたいんだ。フィギュアスケートは、怖くない、苦しくないと」
「アンタは、苦しかったんですかぃ?」
 桂は、口を閉ざす。
 それでも逸らされない琥珀をじっと見据えながら、沖田は、直前の桂のインタビューを思い出していた。
 フリーの演目は、オペラ座の怪人。歌姫に寄せたファントムの想いを、桂は叶わない恋をしている、と語った。
 ファントムは、この恋が叶わないことを心の奥底では理解している。自分もそうだ。叶わない恋をしている。フィギュアスケートの女神に、勝利者にしか微笑みを向けない、美しく艶やかで、残酷な女神に。叶わない恋を、している、と。
 世界中の誰もが、何を言っていると思っただろう。
 確かに、ジャンプは外国の選手に劣るところがある。そもそも桂は、試合で四回転ジャンプを成功させたことは無い。
 けれど、桂の武器はジャンプでは無い。深く正確なエッジワークと、指先まで神経の通った丁寧な演技、そして儚げな風貌と裏腹の、気迫に満ちた表情と。
 世界を魅了するステップ、世界を虜にする表現力は、トップスケーター達に真似ができないと言わせたものなのに。そしてその武器で、世界の大舞台で表彰台にまで登り詰めたというのに。
「アンタは、今でも、望みの無い恋だったって、思ってる?」
 躊躇いのない首肯が、返される。沖田には、判らない感情だと思った。
「俺は、望み無い恋だなんて思ってねぇ。女神がこっちに微笑みかけてくんねぇなら、意地でも振り向かせてやりたいんでさぁ」
 だから、と。手を伸ばす。
「アンタに、俺のコーチについて欲しいんです」
 見つめる琥珀が、僅かに見開いた。
「……俺が、か?」
「そうでさぁ」
 は、と。小さく息が吐き出された。
「何を馬鹿な。お前には、松平先生がついているだろう」
「メインはあのひとですけどねぃ。演技構成をしっかり見てくれる人が欲しいんでさぁ」
 今でも伝説のように語られる、桂の演技の求心力。それは、八年が経とうとする今でも、決して衰えていない。
 沖田が欲しいのは、その技術だ。
「それで、俺か」
「それと、もう一つ」
 何よりも、欲しいと願う、もの。
 惜しくも回転が足らないと判断された、あの戦いで刻まれた幻。

「四回転の、フリップ」

 桂が、絶句する。見開いた目には、驚愕が大きく映し出されている。
「まだ、世界で誰も完璧に跳んだことのない、ジャンプ。挑戦したのは十年前に、たった一人。高杉晋助、アンタの、同門だった選手だ」
「…………おまえ、それを」
「たまたま、映像を見る機会がありやしてね」
 あの時体中を貫いた、衝撃を忘れない。難易度の高い四回転に、ジュニアが挑んだということ事態が大きな事件だった。完璧に跳べば、おそらく誰も見たことの無いものが見える。
「それだけじゃない。難易度の高いジャンプ跳んでも、他のスピンやステップが出来悪けりゃ、入賞すらできない時代だ。だからこそ、アンタの力が欲しい」
 薄く開いた唇が、小さく震える。息を飲んで、もう一度開いた口が。
「無理だ」
 そう、呟いた。
「四回転フリップは……無理だ。あれは、誰にも、できない」
「だから、俺が最初にキメるんでさぁ。世界中の誰よりも先に!」
 エッジカバーを脱ぎ捨て、リンクへと身を躍らせる。待て!という制止を無視して、中央へと進み出た。
 頭の中に浮かべるのは、去年のフリープログラム。軽快で爽やかな、『沖田総悟』をイメージした曲だ。それに合わせて、エッジを滑らせる。導入の、雰囲気を作りだすステップ、ターン、そして、エッジを踏み切り、最初のジャンプ、
「おきたっ!」
 回転が、足らない。しっかりと片方だけで降りれなかった足がもつれ、バランスを崩して倒れる。咄嗟に取った受け身で、したたかに身体を打つことは免れた。足や肩、背中も、平気だ。すぐに立ち上がってもう一度、とリンク中央に向かおうとした後頭部に、エッジカバーが投げつけられる。
「痛ってぇ」
「馬鹿なことをするな。今無理してどうする。今のお前はシーズンオフで、身体もコンディションもしっかり作り上げられていないだろう!」
「でも、俺は跳ぶ。跳ぶだけの力が、欲しいんでさぁ」
 睨みつける琥珀を、強く、見つめ返す。
「どうします、桂さん。今みたいに邪魔でもします? 関係者でも無いアンタが邪魔したら、ただの妨害でさぁ。
でも、アンタがコーチ陣に入ってくれんなら、それは妨害じゃなくなる」
 氷の上で、ぶつかる視線が冷えていく。
 賭だった。桂にとって沖田は、かつてのライバルの後輩に過ぎない。無理して壊れようが何しようが、関係ないと切り捨てられるかもしれない。
 でも、あの桂だ。
 こんなところでインストラクターを続けて、あのような言葉を口にする、桂なら。
「……一つ、条件がある」
 ややあって、桂は静かに息を吐いた。
「それが飲み込めないのなら、俺は指導につかない」
「何でさぁ」
「ソチは、諦めろ」
 は?と。問う声を、飲み込む。目を瞬かせる沖田に、桂は続けた。
「ソチ五輪まであと八ヶ月。最終選考会の全日本選手権だって、あと半年しかない。お前のスケーティングを一から見直して新たに作り上げるまでには、時間が足らない。新しいやり方をただ積み上げていくという、簡単なものじゃないんだ。今までのやり方に慣れた身体と合わず、ジャンプの精度やスケーティングが、成果が出るまではどん底に落ちるだろう。それを上げていくには、半年では足らない」
 語られた言葉を、一つ一つ咀嚼する。ただ、沖田を諦めさせようというだけの言い訳じゃ無い。自分に向き合って考えた、その結果だ。
「それでも、良いか」
「そんなもんで良いなら、喜んで」
 ニヤリ、と笑って見せた。目を見開いて狼狽えたのは、桂の方だ。
「そんなもん、で済むと思うな! 五輪だぞ、四年に一度しかない、次の韓国に、お前が万全の調子でいられる保証などどこにもないんだぞ!」
「でも俺は、ここで終わる気も止まる気もねぇですし」
 まだ、道の途中なのだ。見たいのは、世界で誰も、見たことの無い景色なのだ。妥協したところで五輪に出たって、きっと嬉しくない。
「交渉成立、でオッケーですかぃ?」
 一瞬言葉に詰まったが、桂は頷く。
「判った。男子に二言はない」
「よし。んじゃこれから、よろしく頼みますぜ」
 エッジカバーを拾って、リンクサイドに向かう。まずは。一歩だ。
 上がり口では、桂が待っている。誰も見たことの無い世界への、道標として。
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by wakame81 | 2013-12-22 13:39 | 小説。  

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