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お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

高らかに、声をあげて~後~

おそらくこの後、高杉vs沖田が水面下で開かれたような開かれなかったような。

ところでpixiv始めてみました。初投稿は、この話になってます。







 森でも一番大きな樹の根本に、三月ウサギの兎穴はある。大木から何か力を分けてもらっているのか、地下に掘られた穴だというのに、そこはあまりじめじめしていない。
「おかげで、茶の葉を保存するのには丁度いいぞ」
「そいつぁ良かったですねぃ」
 沖田が訪れたときには、桂は幾つかの茶葉を、小分けにして包んでいた。風呂敷の結び目に、佐山茶だの宇治茶だの、メモを挟んでいる。
「それ全部緑茶ですかぃ」
「抹茶もあるぞ」
 いいのか英国の世界観。
「随分いろいろと包んでるみたいだけど?」
「眠りネズミならこれくらい、茶を点てられるだろう」
「ほんとに休むつもりなんですねぃ」
「当たり前だろう?」
 ゆっくり振り返る。その顔には、さびしいとかくやしいとか意地張ってるとか、そんな感情は微塵もなかった。
「誕生日じゃない日を祝うお茶会に、誕生日の人間が現れる訳にもいかんだろう」
「別に気にするこたぁねーと思いやすけどね」
 だったら、誕生日を祝うという名目だったら、来てくれたのだろうか。その問いに、桂はかぶりを振る。
「芋虫侍の誕生日も、白兎の誕生日も過ぎているのだぞ。俺だけ祝われるのは不公平だ」
「そしたら来年、祝えばいいだけじゃねぇですかぃ?」
「そのすぐ後にはまた俺の誕生日だ。不公平なのは変わらん」
 それに、と桂は続ける。
「帽子屋は、誕生日に拘らずその日その日を楽しく有意義に過ごしたいのだ。その志を、俺が折るわけにはいかん」
「そんな大層な志じゃぁ、ないと思いやすが」
 言っても、聞き入れないだろう。沖田は、壁一面に作られた棚の、茶葉の箱を眺めた。
 森の南のお茶の木から、桂が毎日採取して、丁寧に保存しているものたちだ。いつもはそこから、一種類の茶しかお茶会に持ち込まない。それを何種類も包んでいるのは、高杉が選びやすいようにだけではなく。
「てか、不公平だとか折るわけにはいかねぇとか、あんた自分に言い聞かせてるように聞こえるけどねぃ」
「そんなことはない」
 きっぱりと、間髪入れず否定される。それが逆に、沖田の違和感を誘う。
「ホントは祝って欲しかったとか?」
「そんなことはないぞ」
 ム、と唇を尖らせる様に、密かに笑みを浮かべる。それは、丁度昨日も目にした表情だ。きっとあの時から桂は、今日のお茶会に参加しないことを決意していて、そして。
「ホントは、拗ねてるんじゃねーですかぃ?」
「だから違うと言ってるだろう」
 ぷいっと横を向かれる。それは判りやすいほどあからさまで。
 もし違うとしても、沖田の知ったことではない。猫は、引っかき回してニヤニヤ笑うものだ。
「仮に、俺が祝ってもらいたかったとして、貴様等には関係ないだろう?」
「そーゆーわけでも、ねぇんですけどねぃ」
「何?」
 きょとんと首を傾げた桂が、どういうことだと口を開く前に。
「おい」
 低い声が、巣穴の入り口から轟くように響いた。
「何でテメェがもういる」
「何でって、そーゆー話じゃなかったですかぃ」
 某世界的有名ネズミのごとくの丸い耳と細長いしっぽをつけながら、ちっともかわいくないどころか放たれる殺気と相まっていろんな意味で恐怖しか醸し出さない状態の、男が、入り口に立っていた。睨みつけられても沖田はどこ吹く風である。
「早すぎるって言ってんだよ」
「何事も、早い方が良いと思いやしてねぇ。ほら、思い立ったその時以降はみんな凶日っていうじゃねーですかぃ」
「チッ」
 舌打ちをして、高杉は穴へ入り込む。目を少しだけまぁるくして、二人を見やっていた桂が、は、と口を開いた。
「え、どうしたんだ二人とも?」
「別にどうもしねぇよ」
 ほら、と高杉は、手を差し出す。それが準備されていた茶葉を受け取るものではないことは、手のひらの上の包みが示していた。
「……? これは?」
「ガレットの生地だ。そば粉だし、お前さんの口に合うだろ」
「いや、そばは好きだが、眠りネズミ?」
 桂が手を差し出さないので、高杉は勝手に氷室を開けて包みを放り込んだ。成る程、昨日の爆弾発言にどうも反応が薄いと思ったら、これを目論んでいたのか。
「え、あ、どういうことだ?」
「茶会を開かなくても、祝うことはできるだろ」
「え?」
「まぁ、それじゃすまねえ奴らも多いんでな。茶葉はこれか?」
「あ、あぁ。お前の好きなものを選んで点てるといい」
「お前の好みなら、これだろ」
 選びとったのは、いつも桂が使う佐山茶だ。桂はきょとん、と目を瞬かせる。
「俺の好みを選んでどうする。俺は行かないと、」
「だからそれじゃ、すまねぇ奴らばかりなんだよ」
 やれ、と目線で告げられた。桂が何か言う前に、沖田はその腕をとる。
「ま、そういうことで。諦めてくだせぇ」
「は?」
「あとこれは、チェシャ猫からの祝福でさぁ」
 ふわり、と目の前の唇に触れる。高杉が眉を吊り上げるが、知ったことではない。先に抜け駆けたのはそっちだ。
「おいっ」
「んじゃ、会場で待ってやすぜ」
 さっと沖田は空間の隙間を開く。捕まれたままの桂ごとだ。最後に笑う口元だけを残された高杉がどれだけ怒り狂うか、その想像は、恐怖よりも胸の爽快感を沖田に与えた。



「おっそいアル!」
 空間を渡って開口一番、その声が出迎えた。腰に手を当てて仁王立ちした神楽に、桂は怒ることもできずただ戸惑っている。計算通りである。
「え、え、リーダーじゃないアリス?」
「こっちは準備して待ってたアルよ。もうお腹ペコペコネ!」
「あ、すまないアリス。というかこれは」
 ようやく、桂の視線が周囲に向けられた。いつもの帽子屋の家ではなく、森の中なのだから余計に現状が把握できてない。
「よかった、桂さん来てくれて」
「おい、えらく早くないか? こっちはまだできてねぇんだぞ」
「え、今アリスが遅いと」
「私のお腹は今朝からお前を待ちかまえてたネ!」
「それ早すぎじゃ……」
 桂の瞬きが、収まる気配を見せない。
 開けたその場所は、今の時間は木陰がさらさらと落ちている。夏に先駆けて、咲く花が香しい。その広場に、昨日まではなかったテーブルが置かれ、その上にはたくさんのスイーツが並べられている。丁度中央には、大きなスペースが空けられていた。
「おーい、主役持ってきたぞー」
「ウホウホ!」
「近藤さん、すまねぇ」
 さっきまで準備を仕切っていただろう土方が、いそいそと近藤と天地の担いできたものを迎えにいく。
「てかお前は手伝えよ、近藤さんにばっか荷物持たせてんじゃねぇ」
「俺は今まで労働しまくってましたー疲れてるんですー」
「てめ…っ」
「まぁまぁトシ、これどこ置くんだ?」
「あ、こっちに」
 巨大な皿は、テーブルのど真ん中に置かれる。ウェディングケーキもかくやというほどに大きいそれには、ろうそくが刺してあった。もっと判りづらくいくかと思ったそれに、へぇと感嘆の息をもらす。
「おい……これは」
「ケーキアル!」
「やっぱりケーキがなくちゃ、しまりませんからね」
「そういうことじゃなくて、これは」
 どういうことだ、と視線が向けられたのは銀時だった。ま、桂ならそうだよなぁと思いつつ、やっぱり何かおもしろくない。もっとおもしろくないだろう土方は、判りやすくムスっとしている。
「何って、帽子屋さんの新作ケーキだよ」
「俺は、祝う必要などないと!」
「まぁ俺もそのつもりだったんだけどね? 試食会はやらなきゃだし」
「は?」
 わざわざ神楽の腕をつかんで引き寄せて、銀時は言葉を続ける。
「どうせ、こいつの誕生日になったらまた祝うだのなんだのって話になるんだし。だったら、今のうちから試作しといた方が後々楽だろ? んでもって、丁度よく今日誕生日の奴がいるし、だったらろうそくも立ててリハーサルしたっていいんじゃね?」
 だろ?とわざとらしく言うあたり、さすがである。わざわざ神楽をだしにするあたりが抜け目ない。だが、となおも渋る桂に、神楽が口を開く。
「いいからパーって祝われておくアル!」
「そうですよ。準備するのも、楽しかったですよ」
「たまにはこういうのもいいもんだ!」
「ウホウホ!」
「ま、近藤さんらがそう言うんだからな」
「だが、芋虫侍や白兎のぶんは」
「来年また、やってくれればいいさ」
 どうしてもって言うなら、と何でもない風を装いながら、土方はちらちらと桂に視線を送っている。まだ佇んでいる桂の背を、追いついた高杉が押した。
「おい、さっさと席に着け。茶ぁ淹れんぞ」
「眠りネズミ」
「何だよ。今日の茶は俺がやれって、お前が言ったんだろ」
 よろめく桂の手を、神楽が取った。新八がどうぞと席を指し示す。新作だからちゃんとケーキ食うようにーと銀時が告げ、そのケーキのろうそくに近藤と天地が火を点す。
 カップが回され、緑茶のみずみずしい香りが場を満たした。
「んじゃ」
「「「「「「「HappyBirthday桂!」」」」」」」
「桂じゃない、三月ウサギだ」
 むっつりと答えるその耳が、真っ赤になっている。珍しいものを見れたものだ。沖田もそっと、笑みをもらした。



「あ、遅くなってごめんねー。ハートの女王様からのプレゼントだよ」
「持ってくんなぁぁぁぁぁぁっ!!!」


                                  ~Fin~

by wakame81 | 2013-06-26 22:40 | 小説。  

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