お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

いといといとしき:後

松陽先生追悼話、11年度。金時編は、銀桂的に美味しいと思ってます。あれ?
今のジャンプの銀さんは、本当に私の理想通りに動いてくれてるというか。諦めないでいてくれてよかった。

あと、タイトルちょっと変えてみました。







 喜ぶ、以前にその言葉に引っかかった。さっきまでの、錯覚しそうなふわふわした何かが霧散して、代わりにヒヤリとしたものが背筋に触れる。
「あいつと、これから会うの」
「何だ、金時を知っているのか? それなら話は早い。どうだ、是非俺と攘夷を」
「何の話が早くてそうなるんだよ。てか、俺が直接知ってる訳じゃねーけど、それより」
 そんな、ごまかしの言い訳より。
「その金時サンと、今日会うの」
 いやな汗が、吹き出るのが判る。うなづくな、そう叫ぶ心臓が、目覚ましのベルよりもけたたましく鳴る。
「いや、そうではない」
「ほんとに? ここで待ち合わせとかじゃなく?」
「ここで待っていても、少なくとも奴は今日ここへは来ない」
 言って、桂は半身になって振り返った。薄闇に飲まれつつある石碑、その根本へと目を向ける。
「もう、来ていたようだからな」
 暗くて貴殿にはよく見えないかもしれんが。そう続ける桂に、銀時は首を振った。
 そこには、酒と花束がある。ワンカップいくらの安酒と、道ばたで摘んだ雑草の花束だが。
 そしてそれを持ってきたのが、目の前の男だと桂は知らない。おそらく、気づくこともない。
「会えなかったのは残念だが、近頃の奴は目が覚めたかのように仕事に打ち込んでいるからな。足を運んでくれただけでも、充分だ。先生も、きっと、真っ当に働く奴を見て喜んでいるだろう」
 白い顔が、もう一度こちらを向いた。闇の中で、琥珀がやわらかく細められるのが判る。
 どこか、遠くを見るように。もう帰れない夕焼けを見るように。
「お前は、それでいいの」
 低い声に、桂は目を瞬かせた。
「こんな日に、会えなくて。それでいいの」
「仕方あるまい。そもそも、約束をしていたわけでもなし。それなのに、ここ数年とはいえ、この日をここで会うことができたことにむしろ感謝すべきだ」
 相変わらず、前向きに諦める奴だ。そして自分がそんな桂に密かに苛立ちと申し訳なさを覚えるのも、相変わらずだ。
 もっとねだれよ。わがまま言えよ。そう、口を開こうとして止めた。
 今日、共にいたいと桂がわがままを言う相手は自分ではない。
「では、迎えが来たようなのでな。名残惜しいがここで失礼する」
 あれだけ誘っておきながら、簡単に桂は銀時の側から離れた。来た迎え、に一瞬かまえるが、見慣れた白ペンギンにそっと安堵の息を吐く。
「それでは、な。攘夷を目指す決意がついたら、いつでも来るが良い。待っているぞ」
 言い返す言葉を待たずに、小径の向こうへと姿を消した。ひるがえる黒髪も、闇に溶けるようにして消える。その後ろ姿を見送って、気配が公園から離れてから、銀時は石碑へと視線を向けた。
「……どーせ、相変わらず要領悪いですねぇとか言ってるんだろーけど」
 ここに、師は眠ってはいない。
 ここは、最期を迎えた場所だ。遺体は別のところに眠っている。そもそも銀時は、死したひとの魂が、屍と一緒の場所にいるとは思っていない。
 けれど。
「もし見てたら、そう笑ってるんだろ」
 遠い遠い、空の上か。あるいは通り過ぎていった風の中にか。届かなくてもいい、と、その言葉を紡ぐ。
「わかってるよ。思い知ったよ。あの完璧野郎がスッパリ切ったっつっても、糸はきれいに切れるわけじゃねぇ」
 もっとゴージャスな糸を、己との間に繋ぎなおしたとしても。
 奴は知らない。
 何もなかった自分に、名前と刀とその意味と、居場所をくれた手がどれだけあたたかったかを。
 それを奪われたときの、世界が終わるかのような小さく幼い絶望を。
 死と隣り合わせの、血と泥にまみれた日々でも、輝かしいものがあったと今だから思えることも。あの日々を共有したバカ野郎どもが、どれだけかけがえのないものだったかを。
 何もかも捨てて逃げ出して、生きていないような状態で、それでも死にきれなかった身体を拾ってくれたしわくちゃの手のぬくもりを。
 奴は知らない。
 最初はうざったいだけだった、家に住み着いた小娘と入り浸るメガネが、少しずつ当たり前のものになっていった時のこそばゆさを。
 薬漬けにされた子供たちの、うつろな目を見たときの、背中を虫が這いずるような恐怖を。
 記憶をなくして、群れていることを止めると告げても、離れなかった子供たちが焼き付けた衝撃も。
 神楽を父親の元へと突き放したときの、締め付けられるような苦しさも。
 どん底へと何度も転がり落ちながらも、それでも這い上がろうとする長谷川の姿に何度も力づけられたことも。
 黒隊服を着た連中とのうっとうしいやりとりが、それなりにないと物足りなくもないことになっていった居心地の悪さも。
 許婚の元に嫁ぐと告げた、妙の涙にどれだけ揺さぶられたかも。
 自信のないなりに大将を務めあげた新八を、最後の一騎打ちへと背を押した期待も。
 互いを思いながら傷つけあうような妙とそれに気づかない振りをする九兵衛に、古傷を抉られる痛みを感じたことも。
 母を願う晴太に、すべての光であろうとする日輪に、なくしたものを見つけたような感覚を覚えたことも。
 師という重く大きな背中を、細い肩で背負う月詠に、驚きと羨望と何より敬意を抱いたことも。
 自分どころかお登勢まで否定されて、それでもしがみつけと後押しをしてくれた、この街へのしきれない感謝の大きさを。
 戯れと仕方なくで贈ったメガネを文字通り命よりも大事にするさっちゃんに、後ろめたさを感じると同時に心を動かされたことも。
 奴は知らない。奴のデータは、新八と神楽がインプットした、いわば又聞きの情報でしかない。

 奴は知らない。

『お前は変わってくれるなよ』

 桂が、どんな想いでその言葉を吐き出したのか。
 銀時が、どんな想いでそれに応えたのか。

『『全力で、てめーを(貴様を)ぶった斬る!!』』

 どんな想いを、その言葉に乗せてあのバカへと向けたのかも。



「この俺の腐れ縁、全部断ち切ったなんざ思わせねーよ。たまも、定春もいてくれたんだ。だから、大丈夫さ」
 冷たくなった風が、かさついた木の葉を揺らす。それは、おだやかだったあの人の、いたずらめいた忍び笑いのようにも聞こえた。



「……ってそれって幽、じゃなかったスタンドじゃんいや側で見守らなくてもいいから!」




                                     ~Fin~
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by wakame81 | 2011-11-06 11:29 | 小説。  

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