お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

いといといとしき:前

ハロウィンにも間に合わなかった、松陽先生追悼話11年度(八日遅れ)。若布は、ハロウィンをお盆の一種とかんちがいしております。アメリカがあんなお祭りにしなかったら、単なる「西洋お盆の前日(の、不吉な日)」だったんですが。

閑話休題。

現在本誌で進行形の、金魂編をネタにしております。374訓、375訓前半あたり?







 空を薄く、糸のように雲が走っている。さっきまでは確か、一面真っ青で白も赤も灰色も銀時の頭上に広がっていなかった気がする。
 真上に広がる空は今もただひたすら蒼く、けれど西に目を向ければ目映い金色が空と雲を染めあげようとしている。
 あくび一つ。カモフラージュの新聞はもう三周ほど読み終わったし、きゃいきゃいと声を上げながらブランコで遊ぶ子供を眺めてほっこりするような、爺むさい趣味は持ち合わせていない。
 あくびを、もう一つ。飲み込んだ空気は冷たく口と鼻の奥をくすぐり、盛大にくしゃみをする。風も、冷たくなってきた。
 今日は、今年はもう無理だろうか。もう一度、空を見上げようとした目が、風になびく黒髪を捉える。
「……ったく、遅いんだよ」
 低いつぶやきは聞こえるはずもない。薄灰の羽織はこちらに背を向け、銀時を見ようともしない。顔がこっちを向いたところで、今の奴にとって自分はモブその1だろうが。
「………………」
 がりがりと、頭をかきむしる。もう一度くしゃみをして、空を仰いで、ぼんやりとここ数日のことを思い出して。合間に足は、忙しくゆすりながら。
「さて、と」
 たっぷり五分経ったことを公園の時計で確かめてから、のんびりを装って銀時は立ち上がった。



「金時?」
 振り返りざまかけられた言葉に、思わず眉が寄りそうになった。石碑の前に膝をついたままで、顔だけこちらに向いた桂は、はて、と首を傾げてみせる。
「いや、失礼した。人違いしてしまい、申し訳ない」
「いいけど、べっつにー」
「むう。奴と同じような気配だと思ったのだが。気のせいか……?」
 それは喜べばいいのか、落ち込めばいいのか。なるべく冷静を装いながら、銀時は次にかける言葉を探す。
「なに、そんなに似てましたー?」
「似ていたというか、全然似てはいないのだが……どこかでお会いしたことはなかっただろうか」
「何年前のナンパだよ、死語通り越して絶滅してんだろ。ワシントン条約に保護されてんだろ」
「ふむ、違うか……」
 何を勝手に納得したのか、桂は腕を組んで頭をひねっている。これ以上つっこんでも地雷踏みそうだ。新しい話題を思いつく前に、桂が口を開いた。
「何にせよ、貴殿もこちらに用があるのか。なら、邪魔をした」
「いやいやいやちょっと待って。どこ行こうとしてんのっ…ですか」
 立ち上がり、会釈して背を向ける桂の手を掴もうとして躊躇する。無意識かあえて逃げるためか、一歩下がった桂はどこへと言われても、とまた首をひねる。
「貴殿がここに用があるのなら、俺は邪魔だろう?」
「いや何でそーゆー展開になんのむしろ俺のが邪魔だって怒られる方だろ普通っ?」
「む。貴殿は俺の邪魔をしにきたのか」
「ぜんぜんっ。そんなことありませんー! お前じゃないアンタが邪魔でもないし、アンタの邪魔しに来たわけじゃないから。ささ、続けてください」
 続けてくださいと言われても、何をどう続ければいいのか。少なくとも自分だったら、そんなことを言う相手は無視してさっさと立ち去る。が、桂は「かたじけない」と答えて、もう一度腰を下ろした。
 顔を少し俯かせて、おそらく手を合わせているだろう。しゃがみ込んだ姿勢のまま、こちらに背中を向けた姿はとても無防備に見える。背後から近寄って、その背中を抱きしめることも、首に手をかけて締めることも、とても簡単なように、一見思える。
(一見、だけどな)
 同時に、銀時が一歩でも動こうものなら、指の一本でも動かそうものなら、桂は一瞬にして逃げおせようにも感じる。その髪の先にすら、手を触れさせることなく。
 まるで、猫のように。
「……」
 そっと、殺すように息を吐き出す。公園の中の遊歩道でもあるここは木々に囲まれ、傾いた日差しは枝に遮られて届きづらい。互いの細かな表情はもちろん、小さな動きなら目では判らないはずだ。普通ならば。
 それでも、小さな身じろぎが何をどう壊してしまうか判らない。
「…………」
 頭を掻くこともできず、もう一度、息を吐く。
 桂相手に、こんな張りつめた空気を感じたのはいつぶりだろうか。
 出会って間もない頃は、針のような気を張っていたのは自分の方だった、気がする。
 なら、あのときは。次第に遠くなる黒絹に手を絡ませて、抱き寄せたいと思い詰めた日々は。実際にその肩を掴んで押し倒した時は。桂の期待をすべて裏切るのを覚悟で、離れることを決意した瞬間は。
(いや、あのときすら)
 ここまで、一歩でも、1センチでも、足を踏み外したらこの縁の糸を永遠に踏み外してもう戻れないような、そんな感覚にはならなかった。
 結局、自分は信じていなかったのだ。あれですべてをもう終わりにしてもいいと思いながら、実際に終わりになってしまうなどと、思っていなかったのだ。

(人の縁とは、そういうものだよ)

 低く柔らかく穏やかな、大空のような声で、いつかそう言われた。
(自分が一方的に切れると思っても、結びあわせた相手も同じとは限らない。きれいに切ったつもりでも相手側の切り口をずたずたにほつれさせていたり、こちらからは見えない一本が、まだ繋がっていたりね)
 そう言う顔が、なんとなくしてやったりと笑っていたのは、今だから思うことだろうか。
「てーか、結構性格悪かったよな」
「何のことだ?」
 気がつくと、桂はこちらを振り返っていた。思い馳せる時間はもう終わったのだろうか。ことり、と首を傾げる仕草に、するりと口は動いた。
「いやだから、松陽の」
「なんと! 貴殿もやはり、松陽先生とゆかりのある者だったか!」
「あ。」
 口を押さえてももう遅かった。
 立ち上がった桂は目をきらきらさせながら(薄闇の中なのにそれが見えた。何でだ)銀時の両腕を捕まえる。
「なんだ、そうならそうと、早く言ってくれればよかったのに。こんな日に、こんな場所にやってくるから、ひょっとしたらと思ったが。これもきっと、松陽先生のお導きに違いあるまい!」
「いや偶然、たまたま通りかかってちょっと気まぐれ起こしただけだから」
「その気まぐれこそ、先生のお導きなのだ! 貴殿、名をなんという。先生とはどのような縁なのだ。一緒に日本の夜明けを目指す気はないか?」
「ありませんこれっぽっちも」
「遠慮することはない。貴殿のその眠たそうな目を覚ますのは、日本の夜明けをその手で掴むことに他ならぬ!」
「ねーよそんな仰々しい目覚まし時計。てか肩バンバン叩くな、痛てぇだろーが」
「目覚まし時計は仰々しく鳴る方が目覚めもスッキリというものだぞ。……あり?」
 なんかもう、こういうところは全然変わらねーというか、こいつ誰にでもこんな風に勧誘かけてんのかよくあそこまで党員かき集められたなぁと妙に感心していると、不意に桂は押し黙った。銀時を捕まえていた手を離し、腕組みをして首をひねっている。
「なに、どしたの」
「昔、誰かとこんなやりとりをしたような」
「……あー」
 もらした息は、今度は気づかれなかったらしい。いつ、
どのような話の流れでかわしたやりとりなのか、当の銀時も定かでないのに、今の桂では思い出すこともできないだろう。それでも、うんうん首をひねりながら考えるのを止めようとしない桂に、もう一度、判りやすくため息をつく。
「とにかく。俺は攘夷なんてやる気ないし、あのひととはちょっと旅先で一緒になっただけだし、そんな親しい仲でもないから」
「そうか、残念だ。ちなみにこの後時間はあるか?」
「……なんで?」
「袖振りあうも、とやらだ。今宵一晩、先生の思い出を語り合おうではないか。奢るぞ?」
「………………」
 ちょっと、どころではなく心が動いた。いや、奢りうんぬんだけではなく。
 あわよくば、とは期待しなくもなかったのだ。こいつが少しだけでも覚えていたら、いやいなくとも、第三者を介した振りをすればあるいは、と。
 去年、一昨年のように。笑い飛ばせるような、ささやかな話を肴にして。
 けれど、だめだ。当の桂を目の前にして、ひしひしとそれを思い知る。
 絶対、自分はぼろを出す。あるいは、耐えきれなくなる。
 そうなったときに、待っているのは新八や神楽らが向けた拒絶か、否定か、あるいはそれ以上の混沌か。
「えーっと、奢りは魅力だけど、明日早いんで止めときます」
「そうか、残念だ。良い夜泣きそばがあるというのに」
 やっぱそばかよ。思わず殴り倒そうとする手を何とか堪える。耐えろ銀時、いろんなものを。
「それに、金時に会わせたらきっと奴も喜んだだろうに。残念だ」
「え。」



                                    ~続く~
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by wakame81 | 2011-11-05 15:00 | 小説。  

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