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お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

貴き石を抱いて眠れ~8月25日~

桂マイナーcpアンソロ、6月シティのコタ誕で発行しました。当分は、記事全部にバナーをはっつけておこうと思います。



アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については、こちらをごらんください。

今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手かinfoあっとまーくk-dokkin.daa.jpまでお願いします(爆)

通販も、再開してます。詳しくは、こちら。

虎の穴さんでも、アンソロ通販開始となりました。こっちにはノベルティついておりません。欲しい方は、ご一報ください。


台風はいまどこら辺でしょうか。足が遅い癖に威力だけはやたらでっかいみたいですねー。瀬戸内が直撃くらうのなんて、滅多にないんじゃないでしょーか。
関西、四国、中国の皆様、大丈夫でしょうか???

十日ほど遅れて、いや一年と十日ほど遅れて幾松っちゃん誕生日。ここから、誕生日石シリーズ復活です。
8月25日の誕生日石は、ファイヤーアゲート。訳すと、「火焔瑪瑙」ってところかな? オパールみたいな、光の加減で色合いの変わる、遊色の宝石だそうです。
キーワードは、「意外と自信を持っていない人」。







「いい加減にしなさいよ、次来たらラーメンの出汁ぶっかけるからねっ」
 のれんを潜ろうとしたら、そんな声とともに逃げ出してきた男たちがいた。避ける余裕もなくぶつかって、よろめいたのは桂より二周りは横に大きい男のほうだ。
「あ、すみませんっ」
「……いや」
 男の風体はむしろたれぎみな目が人良さそげで、どうやらあのろくでもない義弟やその関係ではなさそうだ。注いだ視線からわずかに警戒を解くと、仲間に助けられて立ち上がった男の目が不意に見開かれる。
「あの、……もしや、桂小太郎さんでは?」
「いかにもそうだが」
「やっぱり!」
「本物だ!」
「あの、すみません私どもは大江戸テレビの者なのですが、ぜひあなたに取材を」
「いや、それよりあなたのご協力がいただきたいのです、こちらのご主人をぜひともあなたから説得してくれませ」
「まだいたの、あんたたち」
 奥からお玉が飛んできた。がつんと勢いよく、それは桂のおでこにぶち当たる。
「その人は関係ないって言ってるでしょ、とっとと帰らないと今すぐラーメンのゆで汁ぶっかけるわよっ」



「ほう、テレビ取材とな」
 額に貼られたばんそうこうをさすりながら、落としていった名詞を見る。そういえば、一人は以前に密着取材を受けたときに、顔をあわせたような。
「あれはいい仕事をしていたな、アナウンサーしかり、キャメラマンしかり。今度の取材も真っ当なものなら、受けてみてはどうだ?」
「冗談じゃないわよ……」
 薬箱を奥へしまって戻ってきた幾松は、心底げんなりしながら答えた。水を汲んで、桂の座るカウンターに置く。
「ご注文は?」
「チャーハンを頼む」
「好きだね、あんたも」
 幾松の手がチャーシューを取った。とんとんとん、荒く刻む音がまな板の上で踊る。
「あんたが前に、ここで取材受けたでしょ? あれから大変だったんだから」
「そういえば、しばらく混んでいたな」
「ここに来ればあんたに会えるんじゃないかって連中が張り込みにきたのよ。ラーメンも頼まずにさ。営業妨害もはなただしいわ」
「ほう」
「おまけに、あのときあんたを追ってきてた真選組の子もしばらく入り浸るし! やりづらいったらなかったわよ」
「それは初耳だな」
「あんた来なくて正解だったわ、全メニュー制覇するまでずっと来てたんだもの」
 これ以上店で鬼ごっこされたくないの!と大声を張り上げつつ、手は素早く食材をみじん切りにした。卵がかき混ぜられ、ご飯が投入される。
「だが、客が増えるのはいいことだろう」
「一気に増えられたって困るのよ」
 ネギ、チャーシュー、ピーマンが中華鍋に飛び込む。続けて卵と絡まったご飯だ。大きな鍋とお玉を、幾松は額に汗を浮かべて振るう。
「はい、チャーハンお待ち!」
「いただきます」
「召し上がれ」
 レンゲですくえば、ぱらりとご飯がほぐれる。桂が見よう見まねでやってみても、同じようになったことはない。
「うむ。やはり、幾松殿のチャーハンは美味しいな」
「そりゃどうも」
「取材を受ける価値はあると思うが」
「だから冗談じゃないって」
 調理器具をさっと洗う。そこへ常連の二人連れがやってきて、ラーメンとチャーシュー麺を注文する。
「いきなり客が増えたって困るのよ。店は私一人しかいないし、うざいロンゲのバイトは急に辞めちゃうし」
「急に、とは頂けないな。せめて三ヶ月前には辞意を表明すべきだ」
「あんたが言うな」
 麺が手早く茹でられる。相変わらず、ラーメンを作る姿は手際が良く美しい。
「少しずつ、口コミでいいのよ」
 勢いよく麺が降りおろされ、湯きりがなされる。口は動かしながらも、その眼はいつだって真剣に食材や器具に、そして客たちに注がれている。
「私には、それで十分なの。それに、」
 まだ、あいつの味の足下にも及ばないし。
 小さなつぶやきに桂は顔を上げた。主人の姿はもう目の前になく、テーブル席へできあがった料理を運びに動いていた。

 江戸一番のラーメン屋になる。そう言い切るからには、それなりの腕の主だったのだろう。古くからの客の中には、今でも前の主人の味を懐かしむものもいる。
「けれど俺は、幾松殿の味が好きだ」
 次の注文を受けて冷蔵庫に向かった幾松の手が、ぴたりと止まった。
「なに、言ってんのよ」
 すぐに時は動き、扉が開けられてビール瓶が出てくる。勢いよくふたを開けて、客の元に届けて。
「……でも、ありがと」
 そう細められた眼の下は、コンロの火にあぶられたかのようにほのかに赤く染まっていた。




                                     ~Fin~

by wakame81 | 2011-09-04 15:40 | 小説:貴き石を抱いて眠れ  

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