お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

かくれんぼ:下

小ネタのはずだったのに、ぎりぎりページに収まりきらない分量になるという謎。
ちなみに元ネタは、ACの手当のCMです。







 最早かくれんぼの王様となった銀時に教えることはもうない。小太郎がそういうので、はれて銀時は単独デビューすることとなった。
「……いや、デビューもなにも、うれしくないんだけど」
 小太郎ともばらばらで、ずっとつきあう必要もなくなった。このまま帰っちゃおうかなぁと、ぼんやり考える。
「ま、ちびすけが怒るだろーけど」
 鬼が数え始める間際、晋助は銀時の襟を掴んで言ったのだ。逃げるな、と。
『おまえをかくれんぼの王様なんて、みとめないからな!』
「いーじゃん、別に……」
 松陽にここへ連れてこられてからずっと、小太郎は銀時をかまおうとするし、晋助は何かとこっちを睨んでくる。一方的に、張り合おうとしてくるのだ。そうして松陽も含めて三人して、銀時の中を引っかき回そうとする。
「めんどくせーだけなのに」
 今までは、無視してやり過ごせばよかった。悪意めいたものには慣れてるし、こっちが何もしなければそのうち向こうは飽きてかまわなくなる。今まではそれでよかったのに、もう何ヶ月も状況は変わってない。いや。
「めんどくせーのが強くなってんのかなぁ」
 ここでこんな、みんなで遊ぶなんて。
 もういーかい。もういーよ。声が響いて、鬼が動き出した。やっぱり本堂の床下を覗いて、お稲荷さんのお堂を回って、鐘つき堂に登って。それらの動きは全部、こっちに丸見えだ。
 やがて、見つけた!と叫ぶ声が聞こえた。探す追っ手が一人しかいないんだから、鬼の動きを見て逃げ回れば見つからないのに。
「ま、遊びだしなぁ」
 銀時のやったことなんか、せいぜいズルにしか見られないのだ。見つかることへの恐怖も、追われる恐ろしさも、死ぬかもしれないという切迫感もここにはない。
 それまで知らなかったことを知れるのはいいことだ。小太郎はそう言ったけれど、本当にそれは正しいのか。あの、屍の広がる世界を知っても、あいつはそう言えるのか。
「……まぶしーなー……」
 本堂の屋根の上は、遮るものは何もない。西に傾きつつある太陽は、まだ遠い春を呼び寄せたかのように眩しく、そしてあたたかい。下からは、きゃいきゃいと騒ぐ、笑い声が聞こえてくる。
 やがて、下のざわめきは少しぴりぴりしたものになった。
「だから、もう帰っちゃったんじゃないの?」
「これだけさがして見つからないんだから、そうだよ」
「だめだ。見つかるまでさがす」
 小太郎の声だ。きりっとした声音は、剣術の試合の時よりも張りつめている。
「でも、銀時やる気なかったじゃん」
「帰っちゃったんだよ」
「そんなの、ゆるすわけないだろ」
 これは、晋助の声だ。屋根の上から覗くと、自分以外の子はみんな集まっていた。その影は、いつの間にか長く伸びている。
「勝ち逃げなんて、ぜったいゆるさない。それに、小太郎の言うとおり本当にかくれてたらどうするんだ。あいつの一人勝ちだぞ」
「かくれんぼってそういう遊びじゃ…」
「そうだ。銀時はまだここにいる。おいて帰るわけにはいかない」
 ここからだと、揺れる黒髪の尾っぽしか見えない。けれど、そのまなざしの強さを銀時は確信する。
「銀時を一人のこして帰るなんて、いやだ」
 ……や、「いや」じゃないだろう。もう帰る時間だ。増して小太郎や晋助はイイトコの子なんだから、早く帰らないと家の人が心配するだろう。自分なんかを置いてけぼりにしないようにと案じている場合ではない。
 それなのに。
 落ちようとしている陽のあたたかさは、風の冷たさに押し退けられようとしている。それなのに、胸の奥にぽっと灯るようなあたたかさを、確かに感じる。
「!」
 不意に、黒い髪が跳ねた。不思議さを感じる前にばっと振り向かれる。
「銀時っ。おまえ、そんなとこに!」
 叫んだのは晋助だ。琥珀のまなざしはまっすぐに銀時を見据えて、そしてその顔はまばゆいばかりにほころんだ。
「銀時、見つけた!」
「おまえ、どうやって登ったんだ。屋根の上なんてズルいぞ!」
 中じゃなければいいんじゃなかったのかよ。呟く前に、小太郎は側の木へと駆け寄った。
「ここから登ったんだな。よーし」
「え、て、ちょ、何やってんのヅラぁっ?」
「ヅラじゃない桂だ!」
 腕をまくって幹に取り付いた小太郎に、他の子たちも騒ぎだした。というか、枝に裾が引っかかっているのだけれど。
「待っていろ銀時、今助けに行くからな」
「はぁ?」
「下りられなくなったんだろう。待っていろ、二人なら下りるのもこわくないぞ!」
「ネコかよ俺は!」
 剣の腕も立つし、運動神経がいいのは知っている。けれど、優等生の小太郎がこんな真似をするなんて。子供たちは危ない先生を呼んでくると大騒ぎだ。晋助一人が、またやらかしたと言わんばかりに肩をすくめている。
「銀時!」
 やがて、屋根の上に差しかかる枝まで辿りついた小太郎は、まっすぐに手を差し伸べた。さっきまでつないでいた右手だ。
「いっしょに行こう、銀時」
 あのときの手と、同じだと思った。

「また随分と、カワイイ鬼がいたものですね」
 普段なら近寄らせもしない。けれど、その手が頭に触れるまで、自分は動くことも忘れていた。
「くれてあげますよ、私の剣」
 刀を構えた銀時に警戒することもなく、その手は自分の刀を放って寄越した。
「そいつの本当の使い方を知りたきゃ、付いてくるといい」
 動こうとしない自分にそう、手を差し伸べて。むき出しの足に血豆ができていることを気づくと、ためらわずに背中へと背負いあげた。

「帰ろう、銀時」
 薄闇が世界を覆おうとする。けれど確かに、微笑んだ小太郎がそこにいる。手を、差し出してくれている。
「……下りられなくなったんじゃねーの。ネコといっしょにするな」
「ちがうのか?」
 下からは、早く下りてこいと晋助が怒鳴っている。
「銀時! ちゃんと下りてこいよ! 落っこちるなよ、明日も勝負だからな!」
「だからかくれんぼでなんの勝負なんだっつの」
 めんどくさい。きっと松陽にもばれて、怒られるのだろう。それでも。
「銀時」
「手つなぎながらのほうがアブナイだろ。一人で下りられる」
「気をつけろよ」
 そばを素通りして枝に捕まる銀時に、小太郎はにっこり頷いてくれる。
「俺が支えててやるからな」
「だからいーって」
 まともに見るにはその顔は眩しすぎて。
 つなぎかえすには、その手はこそばゆすぎた。




                               ~Fin~
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by wakame81 | 2011-03-20 17:45 | 小説。  

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