お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

ある晴れた日のように:5

ついでだから、最後まであっぷしちゃおうぜの巻。
ここから、最後の段落になります。長かった……いろいろと長かった……!!

ジャンプ感想は、水曜日になりまーす。ただ余韻をあけるためです、深い意味などない!








 週末、桂は再び病院を訪れた。ねんざした足の湿布をもらい、今度はエレベーターで病室へ向かう。ぽかぽかと日は暖かくて風もない。部屋でじっとしているのはもったいない日よりに、暇を持て余しているだろう少女の姿が簡単に想像ついて、少しだけ笑い。
「……ふぅ」
 そしてため息を落とした。
 開けられた窓からやわらかな陽射しとそよ風が入り込む。小春日和を満喫している廊下を進み、突き当たりの部屋へとついた。当然のごとく女性部屋なので、少し緊張する。
 咳払いをしてから、「失礼します」と声をかけた。
 左奥のカーテンの前で立つ。
「……リーダー?」
「ヅラアルか?」
 声はすぐに返り、入室を促される。カーテンをくぐった先にはマンガや雑誌が積み上げられた丸イスがあって、その一番上にパステルカラーの表紙のマンガが勢いよく置かれた。雑誌の塔が揺れる。
「よくきたアルな! まぁ座れアル」
「座るって」
 まさか、神楽の寝ているベッドに腰掛けるわけにもいかない。崩さないように雑誌の塔を移動させて、やっと桂は腰を落ち着けた。
「ずいぶん荷物が増えたな」
 一週間前は長居できなかったから病室をじっくり眺めることもなかったが、あのときはもっと簡素だった気がする。今神楽のスペースを占めているのは雑誌だけではない、お菓子の箱やお菓子の箱や、床頭台には新聞、ふりかけの袋が山になっている。
「そこにあるのはもう読んじゃったアル。ヅラ、借りてくアルか?」
 塔のてっぺんに積まれたマンガを手に取ってみる。ふわふわした感じのイラストで、いかにも少女マンガな空気を放っている。
「リーダーはこういうマンガが好きか?」
「んー、私はこっちのが好きアル。これは、クラスのみんなが持ってきてくれたネ」
 差し出されたのは、一転しておどろおどろしい絵柄の表紙だった。「実録!鬼嫁物語」とつづるのは、ショッキングイエローの文字だ。
「ホラーが好きなのか」
「それよりもっと怖いネ。泉ビン子も真っ青な、人の世の恐ろしさを描いたマンガアル」
 それからつらつらと神楽は説明をしてくれたが、ぐわーとかゴシャーとか擬音が多くてしかたない。とりあえずホラーみたいなものなんだろう、と桂は解釈した。
「そうだヅラ! 約束のブツは持ってきたアルか?」
「ああ」
 ずっと肩にかけていた鞄をおろす。まず取り出したのは。
「一週間分のノートだ」
「そっちじゃないアルー」
 これも、一応神楽に頼まれていたものなのだけれど。首をひねりながら、次のものを取り出す。
「一人じゃ淋しいだろうと思って、エリザベスが作ってくれたのだが。ぷちエリザベスぬいぐるみだ」
「これ、あいつが作ったアルか。器用アルな」
 タオル生地を使っているから手ざわりは極上だ。神楽も気に入ったようで、すべすべと頭を撫ですさっている。
「それから、買ったものですまないのだが、ごはんですよを」
「キャッホォォォゥえらいアルヅラっ。さすが私の部下ネっ」
 エリザベスぐるみよりも喜ばれたことを悔やんではいけない。病院食に不平たらたらだったとは、見舞いに行ったメンツからの共通の報告だ。断って冷蔵庫を開けると、中にもご飯ですよがあった。持ってきたので五つめになる。
 それから、神楽は病院食のまずさをつらつらと語り始めた。話は看護婦や医師の癖に及び、それから昼ドラの詳しい説明へと移る。ひと段落すると神楽は学校のことを聞きたがり、問われるままに桂も答えた。
「……クシュンっ」
 神楽のくしゃみで、桂もようやっと日が傾いていることに気がついた。少しだけ開けた窓のそばで、カーテンが風にたなびいている。病室も、ほのかに薄暗くなっていた。
「じゃぁ、俺はそろそろ帰るから」
 窓を閉めながら、もっと早いうちに来れば良かったと後悔する。いや、訪れてすぐにでも散歩に誘えばよかった。窓の外に向けられた神楽の視線が、よけいにそれを悔やませた。
「ヅラ、」
 空色の眼が向けられる。謝罪はした、それでもなお拭えない後悔が乾いたタオルを濡らす水のように、桂の中に染み込んで広がる。
「今日はありがとネ」
 それをすべて、一瞬でかき消すような笑顔を向けられた。夏の陽射しよりも眩しいのに、春の木漏れ日のようにやわらかい。まるで、今日の陽のように。
「……いや、外に連れていけなくて、すまない」
「そんなことないアル! ヅラが来てくれて、楽しかったアル」
「だが、」
「次の時は外出許可取るから、外に連れてくヨロシ。肉まん食べたいアル!」
 あとピザまんとーあんまんとー。すぐ近くのコンビニで毎年何が並ぶか、熟知しているのだろう。口端からよだれを垂らしながら神楽は指折り数える。
「約束アルよ!」
「わかった、約束だ」
 右小指を差し出された。一瞬ためらうが、向けられた笑顔に背中を押されて桂も小指を絡める。
「じゃ、またネ!」
「ルージャ」
 病室を出て、数メートル歩いたところで桂は後ろから呼び止められた。驚かず、深呼吸をして振り返る。
「ずいぶん長居してたみたいだな」
「……はい」
 星海坊主の眼光を、真正面から受け止める。数々の不良をたじろがせ、おとなしくさせてきたという曰く付きのまなざしは押しつぶされそうなほどに圧力を備えている。まして、桂は愛娘を怪我させた身だ。
「先週はちゃんと謝れませんでしたが」
 視線を、まっすぐに見返す。星海坊主は少しだけ眼を見開いた。
「神楽さんを怪我させてしまい、申し訳ありませんでした」
 深く、頭を下げる。来たときは患者や見舞い客で賑わっていた廊下も、日が影ってざわめきは消え失せている。角向こうのエレベーターが動く音が、やけに響く。
「いや、もういい」
 ひどく穏やかな声に、桂は頭を上げた。一歩前にでた星海坊主の視線は、病室のドアに向けられている。
「もういい、とは」
「正直お前に思うところがまだ残っているのは確かなんだが。神楽ちゃんが、言うんでな」
 巌のようなまなざしは、やわらかく細められた。桂もつられるように、同じ方向へ目をやる。
「神楽ちゃんのした怪我について、怒っていいのは神楽ちゃん自身だけだ、と。他に、誰もこのことで怒る権利はないとな」
「それ、は」
「当の本人が、そう言っているんだ。俺がいつまでも怒る理由も、ないだろう」
 違う、という言葉は、ついに星海坊主には届かなかった。発せられる前に「じゃ、また来てくれよ」と病室のドアを潜っていってしまったからだ。
「違う、というのに」
 小さく、顔を伏せる。夕日に照らされて、足下に暖かな朱金の光が落ちる。
 誰も、お前を怒っていやしねーよ。
 土方の言葉が、ゆっくりと耳に響いてくる。
「……弱ったな……」
 いっそ、罵ってくれれば楽だったのに。

 床から伝わる熱が、足下から桂を包んでいく。大きく息を吐いて「よし。」と顔を上げる、その眼に陽射しが映りこんで、金色にきらめいた。





                                    ~Fin~
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by wakame81 | 2011-01-17 21:21 | 小説:3Z  

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