お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

とおい日の唄

27日の、史実の松陰先生の命日から2日も遅刻してしまいました。今年の、松陽先生追悼話です。

今年は紅桜イヤーということで、この話も紅桜直後です。
うちのサイトでは、時系列とエピソード発生時期を、原作準拠かつジャンプ連載に合わせています。なので、紅桜は6月ではなく、秋の話になります。
そして、坂&桂です。銀さんにしたかったけど、直後だとまだ療養中なので。むしろ精神的な意味で。

そういや、雪降るわ台風くるわの騒ぎになってるけど、追悼話にどうしても絡ませづらい高杉のノロイかなんかでしょうか。仕方ないじゃーん。高桂で追悼話書くと、めっちゃ暗くなるかギンタマン一話くらいのアクションものになるしかないんだもんー。









 がたり、と戸が動く音がして、桂は顔を上げた。灯りのつけない部屋は、いつの間にか薄暗くなっている。肩からはんてんが滑り落ちて、露わになった首筋を冷えた空気が撫でる。思わずくしゃみが出た。
「エリザベス?」
 答えはない。向かっていた文机には書類のほかにメモ書きが一枚文鎮の下敷きになっている。目を凝らしてみれば、何とか「夕飯の買い出しに行ってきます」という文字が読みとれた。
 もう一度、物音がしたのはそのときだった。寝起きの頭が一瞬にして冴える。エリザベスが外出しているのなら、今この家には他に誰もいない。
 気配を押し殺して傍らの刀を取る。がた、ごとと物音は台所からしているようだ。そっとふすまを開け、部屋を出た。
 猫ならいい。彼らの好きそうな魚などおいてあったか桂は覚えていないが、家もない野良の腹の足しになるならとっておきのそばだってあげてもかまわない。そのお礼に肉球をモフらせてもらえたら、なおのこと良い。が、エリザベスは出かけるときに、四つ足の泥棒さんが侵入できるような隙間など作っておきはしない。
 ならば。
 台所の前まで足を進める。中で鼻歌を歌っているのは、猫のような愛らしいサイズの生き物ではない。
 気配が、桂の潜んでいる戸の近くまで寄ってきた。呼吸を整える。三、二、一。がちゃがちゃ棚をいじくっていた気配がそこから離れようとした刹那、桂は戸を蹴破り、間髪入れず刀を振りおろした。
 衝撃に、金属音が続く。相手の頭をかち割る寸前で、刀は黒い銃身に受け止められていた。
「……あっはっはー、なんじゃ、たまげたぞ。ヅラ」
「不法侵入などするからこういう目にあうのだ。それと、ヅラじゃない桂だ」
「まっこと久しぶりじゃのーヅラぁっ(はぁと)」
「だからヅラじゃないと言ってるだろう」
 苦情もなんのその、短銃を放りだしついでにハートもまき散らして、闖入者……坂本辰馬は桂に抱きついてきた。


「な! 不法侵入じゃなかったじゃろ?」
 あれから数時間後。勝手に立ち入った罪で廊下に正座をさせられていた坂本の潔白は、帰ってきたエリザベスによって証明された。街中でばったり出会った桂の忠実なペットに、訪問を許可されたのなら仕方ない。渡された鍵まで見せられては、桂も早合点を認めざるをえなかった。
「どう見ても、不法侵入以外の何物でもなかっただろう。せめて呼び鈴を鳴らさんか」
「寝ちょるって聞いてたからのー。起こしてしまうのは忍びのうてな」
「それでこっそりか。貴様はどこのサンタクロースだ。まだクリスマスには二ヶ月早いぞ」
「なんちゃーがやないだ、本番もちゃんと来るきに」
 あっはっはー。笑い声こそ元気だが、本人は明らかに元気ではない。放り出された足をつつくと、盛大に廊下を転がる。
「うぎょぇぁぁぁぁあっはっはー。何するんじゃぁヅラぁ」
「足が痺れてるならおとなしくしていろ」
「してるやか~」
「うるさくてかなわん」
 放っといて部屋に戻って書類を片づけてもいいのだが、そしたら廊下で淋しいさみしいとやかましいことこの上ない。台所で夕食の準備をしているエリザベスにも、『何とかしてください』と言われる始末だ。
「まったく。たかが三分の正座で根を上げるとはな。かつて雲竜迸馬と言われた男が、情けない」
「いや、五分はがんばったぜよ~」
「がんばりが足らん」
「そこを何らぁ~土産に免じて許してくれ~」
 そんな甘い顔をそうそうできるか。言おうとした台詞はまたもやくしゃみに邪魔された。
「風邪か?」
「そんなわけはあるまい。この方二十年以上も風邪を引いたことなどないのだぞ。そんな柔な鍛え方などしておらん」
「でも、ほら」
 首筋、と坂本は、ポケットからマフラーを取り出した。もこもことして白く、しかもエリザベスのようなつぶらな瞳とくちばしがついている。
 サングラスの奥で、人なつこく目が細められた。その裏から滲み出る、「取引」という単語を正確に読みとって桂はため息をつく。
「……仕方あるまい。エリザベスが許したのであれば」
「ほきこそヅラじゃぁ! 許す心を忘れん、真のリーダーの鑑ぜよ」
「ヅラじゃない桂だ」
 もこもこのマフラーを首に巻いてみる。暖かい。ふわふわとした長い毛に、頬を埋める。
「髪のほうだって、ほがーに短くするがも二十年来やお? じゃったら風邪を引いたって仕方ないじゃろ」
「髪など…、」
 大したものではない、という言葉を、坂本は視線で封じた。立ち上がってマフラーにも巻き込めなかった髪の先に人差し指で触れる。
「大したものだぞ? ほら、ないと冷やっこいろう」
 な?と目は笑う。桂はため息をついて、口を開いた。
「というか貴様。足が痺れたというのは嘘か」
「あ。」


 鮮度が命!というわけでもないが、せっかくなので今夜のご飯は坂本の土産が多く並ぶことになった。エリザベスも心得ていたのだろう、炊き立てのご飯の横にアカアジの干物、マイカとサトイモの煮付け、サツマイモのきんぴら、柿、そして日本酒のとっくりが並ぶ。
「それじゃ、乾杯でもするか!」
「何にだ 」
「二十年ぶりのヅラの風邪にあべし!」
 空のお猪口を投げつけて、慎ましやかにいただきますをエリザベスとかわした。すぐさま坂本も復活して、きんぴらを箸でつまむ。
「おおっ。このきんぴらは絶品だなぁ!」
「当たり前だ、エリザベスのお手製だぞ」
「こがーに料理の腕をあげたのか。しょうまっことこたう子だなぁエリザベス!」
『お褒めに与りありがとうございます』
 干物をつつきながらも、エリザベスは礼の言葉を欠かさない。礼儀正しい良い子だと頷きながら、桂もきんぴらを口にした。よく火を通したサツマイモがほくほくと口の中で崩れる。
「ささ、ヅラこじゃんと食べてくれ! きもってお酌してくれ~」
「自分でしろ」
 にべもなく断られても坂本の笑い声は止まない。言われたとおりに手酌しながら、桂のお猪口にもどんどん注いでいく。酔うのが相変わらず早い。普段から酔っぱらっているような奴、と評したのは銀時だったか、それとも。
「どうしたヅラぁっ。箸が止まっちゅうぞぉ」
 今食べている最中だ、と口にものが入っている状態ではなかなかしゃべれない。ならば実力行使、と干物の切れ端を口に押しつけようとする手を箸で刺す。
「あっはっは~なんだ、わしを食べたいかえ? 辛抱きかんなぁ、エリザベスが見てるやかはやちっくと待ってくれ~」
「(ごっくん)煮ても焼いても食えんものを誰が食うか」
『静かにしてください』
 プラカードの角で殴られても、坂本の舌は止まらなかった。食べるのとしゃべるのと、両方で口を使っているというのに桂の倍のスピードで椀を空にし、杯を重ねていく。桂もようようと食事を終え、差し出されたとっくりから酒を受けた。
 温められて強くなった酒の味と匂いが、口の中に広がる。ゆっくりと飲み込めばじわりと染みるような熱さが、喉から胸へと降りて体中に広がる。
 幼い頃は、ただ見ているだけだった酒。
「ほきな、鎖につながれたお姫様を助け出したわしは、……どうしたヅラぁ、お猪口なんか見つめて」
「この日にお前が来るのは、久しぶりだな」
 きょと、と坂本は瞬きをした。すぐに笑顔は戻り、陽気な笑いが響く。
「そういやそうやろうか? いやーわし宇宙をまたにかけてるからなぁ」
「いつもは荷だけが届いた。今年来たのは、訳があるのか」
「ただの偶然ちや。たまたま、地球に帰れたから」
 視線をまっすぐに坂本に向ける。受け止めた視線はへらりと揺れて、合っているのにはぐらかされたように感じる。
「さつまいもに、アジの干物に柿にマイカに萩の地酒。別にこれは、先生の好物というわけではないぞ」
 もう一度、笑顔が剥がれ落ちる。今度は取り戻すまでにわずかに間が空いた。
「……マジでか」
「誰に聞いたかは知らないが、今から思うと実はこうだったのではないかと気づくことがある。これらのものも、よく食していらっしゃったが萩ではそう贅沢もできんしな」
 イカやアジはふるさとの海でよく取れたものだし、柿もサツマイモもこの季節のものだ。その土地に根付いて採れたものを愛し、食べ物を通して季節の巡りを感じさせようというのは、かの師の教育方針であり、また在りようだったのだろう。
 気づいたのは今になってからだ。
「彼奴に今年も、送ったのか」
 今度は笑みに紛らわそうとはしなかった。視線を逸らさず、坂本は頷く。
「あれから鬼兵隊の行方もとんと掴めのうてな、なんぼかツテを使ってはみたが、今日中に届いたかは判らん」
「そうか」
 お猪口に目を落とす。
 わざわざ思い出させるように贈ってきた坂本を、何のつもりだと詰ったのは自分だったかそれとも彼奴だったのか、桂はもう覚えていない。それでも酒と食べ物に罪はないと最終的に受け取った品々を、今年は彼奴は受け取るのだろうか。

「……毎年しつこく送りつけてきたお前の気持ちが、今なら判る気がする」

 ぽつりとつぶやく。
 大きな手のひらが伸びてきて、頭をわしゃわしゃと撫でた。短くなった髪はするりするりと指先から落ちていく。ほんの一瞬だけ、坂本の目は細くなり。
 無言のままに、短い髪に口づけられた。





                                 ~Fin~
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by wakame81 | 2010-10-29 22:39 | 小説。  

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