よりぬきさんが密着取材で沖田と桂が追いかけっこで桂さんのカリスマぱねぇとか沖田の「あばよ、桂」が色っぽくて仕方ないどうしてくれようとか、そんなものが全部すっ飛びました今週ジャンプ。
何だ、昨日の夜からの横浜の大雨はこのせいか!!
皆の衆、恵みの雨だぞーーーーーーーーーーーーーーー!!!てかむしろ嵐です。
とりあえず、小ネタ一本できました(爆)。勢いだけで書いたので、いろいろめちゃくちゃです。拍手でもよかったんだけど、それにしたって微妙すぎる。いろいろと。
もちろん小説にもなりきれないので、小ネタってことで。
本誌ネタバレ、沖桂です。沖vs銀さん要素がボカシですら出てきませんでしたスミマセン。
ちゃんとした感想は明日書きます-。
「我が野望って、アンタいつから江戸征服なんて下手な野望考えてたんですかバカイザー!」
そんなの、決まっている。
あの時のことを、忘れるなんてきっと一生できっこない。
「あら、珍しいこと」
陽が傾き、世界はほのかな金色を帯びる。もう少しすれば白光に褪せることのない、本来の色を取り戻して街は闇に沈むのだろう。彩るは、原色のネオンと着飾った男女だ。イミテーションの輝きが氾濫し、行くものは呑み込まれるか溺れるかしかない。
その中で、他の何よりも異質な光が、今目の前にある。
「こんなところにあなたが来るなんて。今は仕事中ではなくて? それとも、ストーカーは代々の局長のお家芸とでも言う気かしら」
「そんなみみっちいシュミをもったつもりは無いつもりだが」
ふふ、と口元は孤を描く。唇はつややかだがまとう色は控えめで、肌のきめこまやかさも細筆で描いたような眉も化粧の恩恵ではないことを沖田は知っている。唯一はっきりと判るのは、前は控えめだった睫毛が増えていることくらいか。
(あぁ、それだけじゃない)
剥き出しになった腕のたおやかさも、脇から腰、尻へかけてのやわらかい曲線も、以前のコイツは持ち得なかったものだ。
「でしたら、何の御用でこちらへ? 用事でないのなら私は行かせてもらうわ。これでも、忙しいの」
判ってる癖に。すっと背を向けようとしたそいつの腕を、沖田は素早く捕らえた。抵抗もなく、『彼女』はとらわれの身となる。
「何か?」
鼻を寄せれば、香るのはコロンか白粉か。とにかく以前のコイツに感じたことは……。
「そういや、女装してた時はこんな匂いだったか」
琥珀の瞳は小さく瞬いた。見上げる必要はない、沖田と同じ高さで。
「女装だなんて、皇帝といっても女心はまだ勉強が足らないようね」
「女装だろう。いくらタマを取ったからといっても、アンタは男だ」
「いいえ、オカマよ。女も男も、そんなものもう超えようとしているの」
超えたところでどうだっていうのか。沖田の知っていたあの男と、今目の前の『彼女』はあまりにもかけ離れてしまった。
『なんで……どーゆーことでぃっ。言えっ』
『なんでも何もあるまい。攘夷の波は、もう俺の手を離れた。いずれ大きな渦となり、日本という船を夜明けまで運んでくれるだろう』
『諦めた…ってゆーのかっ』
『そうではない。攘夷の旗頭となるのは俺個人ではなく、皆の志だ。その、あるべき姿に戻ったに過ぎない。むしろ、皆の志が一個人に集約されることこそ、おかしいというものだろう』
『だけど……っ』
『もう、彼奴はいない。俺がやらなければならないことはもうないのだ。だから俺は、俺という魂を鍛えるために、まず男女の枠組みを取っ払ってみようかと』
押さえ付けた身体は、男でも女でもなくなった。触れても応えることはもう二度とない。
こんなやり方で、沖田の手から永遠に逃げられるなど、思ってもみなかった。
『……操でも立てたつもりですかぃ。高杉に、それとも旦那に?』
『さて』
持ち上げられた口端に、どうしようもないほど泣きたくなった。攘夷を止めた。侍としての力を捨てた。そして女ですらない。
どう足掻いても手の届かないところへ行こうというのなら。
どんな手を使おうとも。
「そういえば、新八君が真選組に就職したそうじゃない」
不意に切り替わった話題に、反応するのが一瞬遅れた。少しの間をおいての頷きに、琥珀は小さく細められる。
「近藤さん直々の推薦だからな。筋が良いのは皆も知っている」
「あの子を彼が、どれだけ大事な家族と思っているのかも?」
至近距離の笑みに、身体の芯がスゥっと冷えていく。背骨を通って胆の奥底まで落ちたそれは、冷やしすぎた手が逆に火照るように沖田の中の何かに火を灯す。
「人質に取ったつもりでしょうけれど、そう簡単にはいかないわ。この街も……銀時も」
「やってみなければ、判らないだろう」
「そうね」
引き寄せる前に顔が寄せられ、唇の端にやわらかい感触が触れる。次の瞬間、掴んだ手からするりと『彼女』はくぐり抜けた。
「やってみなければ、判らないわね」
深い色のドレスを翻して、『彼女』の姿は人混みへと消えた。いくらこの街で異彩を放つといってもかつてのまばゆいほどの光は掠れ、辿ることもできなくなった。
それでも時折、研ぎ澄まされた刃のような閃きを、こうして垣間見せる。
「……絶対、手に入れてやりやすぜ。たとえ旦那を、蹴落としても」
近藤はとうに去り、土方は腑抜けた。
沖田に残されたのは、もう桂しかいないのだ。
~Fin~