お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

この日、君は~10月10日:2

遅くなりました-!!(汗) 銀さん誕生日、別名失明ネタです。ずっとやりたかったんだー。
銀桂ふたりっきりにするとマジゲンカになるので、そうならないようにまとめるの苦労しました。お登勢さんは最高デス。


あ、今週のジャンプとよりぬきさんと大河は、明日(今日か、もう)アップしますー。







 結局近藤から、銀時の現状は真選組メンバーに筒抜けになった。しかも、「万事屋に炭水化物を与えることなかれ」という局中法度と共にである。
 これによって、沖田や山崎あたりからせびるという手は完全に使えなくなった。土方は論外である。
 ならば、と頼ろうとしたさっちゃんは、神楽によって手を打たれていた。「銀さんが不能になるなんて耐えられないっ、それじゃぁ私を罵って踏みつけて虐げてくれる銀さんじゃなくなっちゃうじゃないぃぃっ」と、涙ながらに訴えられ、代わりに糖分のように甘い私の…とかこれ以上書いたらR18になりそうなことを言い出したので雨の中簀巻きにして蹴りだしてやった。
 スナックお登勢のメンバーは、最初から手が回っている。九兵衛はもちろん、すまいるの子達や吉原メンバーも、「銀時の健康のために」と口をそろえて糖分のお布施を断ってきた。
「……しかしそれも、今日までの話だ」
 久しぶりの太陽が昇る。昨夜までの雨に濡れた屋根瓦が朝の光に反射してきらきらと光る。都会の汚れはきれいに洗い流され、すがすがしい空気が銀時を出迎える。
 大丈夫。さっきやってたブラック星占いも、天秤座の人は今日サイコーの運勢だと言っていた。今までのことは、すべてこの日を祝福するための伏線だったのだ。
 誕生日。この日ばかりは甘いものをとることが許される。ケーキなくして何が誕生日か。今日こそ、この日こそ。
「糖分王に、俺はなるっ!!」


 まぁ誕生日だと言いつつも、仕事は当然入るわけである。一日の重労働、そして今日の昼まで続いた怒濤の卵ラッシュを乗り越え、やっと銀時はスナックお登勢までたどり着いた。
 輪飾りだの紙の花だの、学芸会のような飾り付けにも銀時はツッコミを入れなかった。焼きそばも炒飯もちゃんとある。心なしか、キャベツだの白菜だのコンブワカメの量が多い、というよりほとんど野菜でところどころにそばやご飯が見えるくらいのものだが、炭水化物であることに代わりはない。
「ケーキ、届キマシタヨー」
 キャサリンが、リボンでラッピングされた箱を持ってくる。さすがに、先月銀時が作った特大エリザベスケーキほどではないが、その大きさに銀時は満足した。正直、他のプレゼントなんていらないとすら思った。
「やっぱり、誕生日にはケーキが不可欠ですもんね」
「今年は特注アル!」
「よかったじゃん銀さん。うわ、どんなんだろー楽しみだなぁ」
「ちょ、俺の誕生日ケーキだからね、長谷川さんのじゃないからね。俺が満足したらおこぼれに預かるの忘れないでよね。てか、長谷川さんには焼きそばも炒飯もみんなあげたじゃん!」
「取ったりはしないよぉ」
 いや、どうだろう。長谷川はすでに酔っぱらっている。酔いに任せて何をしでかすか判らないのが酔っぱらいである。
 それ以上に油断ならないのが神楽だ。銀時がこの日までどれほど我慢を強いられてきたか理解はしていても、胃袋ブラックホールの本能を押さえきれるかどうか。「銀ちゃんにこの量は毒アル!」とかいって、半分以上持っていこうとしても不思議ではない。
 定春もしかりである。奴こそケダモノだ。一応、炒飯もとい米入り野菜炒めや焼きそばもとい麺入りキャベツ炒めをたらふく食わせたとはいえ、肉食獣なのだ。糖分のかぐわしい香りに、眠れる野生が目覚めてもおかしくはない。
「つーか、お前ら散れっ。銀さんのケーキから半径百メートルに近寄んじゃねぇ、これは俺の糖分だぁぁぁっ」
「そんなに離れたら店の外に出ちゃいますよ」
「かぶき町からも出てしまうアル」
「いや、かぶき町そんなに狭くないし」
 ごたごた言うメンツを、壁際に追いやる。さっきの言葉は紛れもなく本気だったが、さすがに大人げないと五百歩、いや千歩譲ってやる。
 とにかく、これは俺のためだけのケーキ、俺のためだけの糖分である。リボンをとくところからキャサリンにも誰の手にも触れさせず、銀時手ずから行うべきなのだ。
 赤く光沢のあるリボンも、白く堅い紙の箱も、ケーキから銀時を阻む何ものでもない。いっそ引きちぎりたいのを耐えて、一つ一つ封を解いていく。その目つきに、かつての白夜叉以上の鬼神の姿を見たと、語ったものがいたとかいないとか。
 最後の結び目を外し、シールを剥ぐ。中のケーキを潰さないよう、これ以上内丁寧さで箱の隙間に指を入れる。
 中から、ドライアイスが溢れ落ちる。閉ざされた空間から解放され、白く冷たい空気が流れ出ていく。
 その向こうの、甘美なる生クリームとスポンジとイチゴの芸術作品が姿を現すまで、あと3秒、あと2秒、あと、
「……なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁっ!!」
 まず、目をこする。頬をつねる。新八を呼び寄せて頬をつねる。もう一度目をこすって、中を見て、どこかにドッキリの看板がないかを確かめて、中を見て。
「……なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁっ!」
「何って、特製ケーキアル」
「銀さんの健康のために、特別に作ってもらったんですよ」
 しれっという子供達の、さもいいことをしたという表情が信じられなかった。
 そこにあるのは、マッチ棒ほどの細さのショートケーキだった。つまみ食いして削りに削りすぎて、ポッキーのように儚くなってしまったのとは違う。側面を飾る生クリームのなめらかさは、まごうことなきプロの技だ。あらゆる糖分に精通した自分には判る。
「ま、健康のためなら仕方ないさね」
「餓鬼ドモノ愛デスネ、アリガタガリヤガレー」
「あっはっはっはっは、銀さん、愛されてんじゃーん。怒っちゃだめだよ、こうやって、心配されてるうちが花なんだから」
「記録します。愛とは、誕生日のケーキをできるだけ細く儚くする行為である」
 無言で震える銀時の、変化を何人かが察した。新八が恐る恐る顔を覗きこもうとして止め、神楽がまだ料理の残ってる皿を持って定春とともに壁際まで逃げる。たまとキャサリンも、お登勢に呼ばれて奥へと引っ込んだ。
「んじゃ、ろーそく刺そうかぁ~」
 唯一、酔っぱらって危機察知力の落ちた長谷川が、舞い上がった声とともにケーキに近づく。これじゃ何本させるかなぁと箱の中覗いたあとの、彼についての目撃証言は得られていない。


「……いきなり俺を呼び出すから何かと思えば、これか」
 荒れ狂う嵐から三十分後。スナック「お登勢」では、床に正座させられた桂小太郎がいた。黒い髪を割って見える、スイカサイズのおたんこぶが痛々しい。
「まったく、お前という奴は。せっかくリーダーや新八君やお登勢殿や皆がお前の誕生日を祝ってくれるというのに、何が不満だというのだ」
「何から何まで不満に決まってんだろっ。なんだよこれ。そもそも今までろくに糖分食わせてもらえねーしっ? 俺は苦行僧でも願掛けのために糖分断ちしてるわけでもねーんだよっ。そりゃ、俺の健康のためって言われたら多少の我慢はするよ? でも多少どころじゃねーじゃん、むしろ拷問じゃんっ。お前ら俺をいじめてそんなに楽しいか、俺はイジメルシュミはあってもいじめられるシュミはねーんだよっ」
「銀時。苛められっ子世にはばかるという言葉があってな」
「憎まれっ子だろーがっ。適当なウソぶっこいてんじゃねぇぇぇっ」
「ちっ。騙されんか」
「たりめーだっ」
 ガツン、という音と共に、おたんこぶが雪だるま型に膨れあがる。壁際ではエリザベスがプラカードを振りかざそうとして新八に止められている。
「銀ちゃぁん」
 神楽の上げた声は、珍しく震えていた。壁際から離れ、流水紋の袖をつい、と引く。
「ごめんなさいアル。銀ちゃんが目ぇ見えなくなっちゃうってヅラに言われて、それでいろいろヅラに教えてもらって、糖分取らせないようにしたけど、銀ちゃんがそこまで苦しんでたなんて気づかなかったネ。ケーキも、ヅラに、クリームあるなら大丈夫って保証してもらって」
「ていうか、さりげに桂さんに全責任おっ被せてない?」
「ごめんなさいアル」
 細かい内容はともかく、しょんぼりと肩を縮こまらせた神楽に、銀時は桂へと振り上げた手を止めた。「銀さん」と、今度は壁際から名を呼ばれる。
「確かに、ちょっとやり過ぎました。でも、本当に心配だったんです。もし、銀さんの目が見えなくなっちゃったらって思うと」
 まだエリザベスを羽交い締めにしたままの、新八の顔が俯く。それまで、『桂さんに何しとんじゃワレェ』とヤクザもびっくりの形相でプラカードを振り回していたエリザベスは、そっと動きを止めた。
「まったく、アンタも大人げないねぇ」
 厨房へと続くのれんをくぐって、お登勢がフロアに戻ってきた。後ろから、キャサリンとたまも続く。そして、ふわりと漂う匂い。
「いい歳だってのに、甘い物が食べられないからって駄々こねんじゃないよ」
「男トシテ、イヤ人トシテ最低デース」
「記録します。銀時様は、人として最低で」
「記録すんなっ」
「ほら」
 お登勢に促され、キャサリンとたまが前に出た。二人の持っているお盆の上には、手のひらサイズのまぁるいものが積まれている。さっきから漂っていた、甘く香ばしい匂いはそれからしていた。
 ぐぅ、と銀時の腹が鳴る。まるで磁石に引き寄せられるように、強い引力を感じる。ふらふらと、足がそちらへと向いた。
「カルメ焼きだよ。生憎うちには生クリームだのいちごだのはなくてね。ま、小麦粉じゃなくて重曹使ってるから、普通のケーキよりはカロリー低いだろ」
 ほら、と目の前に出された。一つ取る、手が震える。あれほど、砂漠でオアシスを求めるがごとく渇望していた糖分だというのに、口に運ぶことができない。
「皆が、お前をどれだけ必要としているか、判っているだろう」
 静かな声は、後ろから響いた。正座したままの桂と目が合う。その琥珀は、ふ、と細められた。
「ここは、お前の場所だ。お前の国だ。荷はいずれ肩から降り、繋ぐ手となるだろう。それを、二度と離すな。その為の努力は、お前の義務であり、権利だ」
「……っだよ……」
 最初に大騒ぎしたのは、神楽にいらんこと吹き込んでこの騒動を大きくさせたのは、桂のくせに。
 カルメ焼きを持つのとは反対の手で、もう一度桂の頭を殴る。頬を膨らませながらの苦情と、またプラカードを振り上げたエリザベスに背を向けて、カルメ焼きをかじった。……耳が、熱い。
 口の中に、さくさくとした歯触りと濃厚な甘さと、焦がした香ばしさが広がる。
 初めて食べた甘いお菓子と、同じ味がした。






                      ~続く~
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by wakame81 | 2010-06-22 00:30 | 小説:この日、君は  

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