お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

ある晴れた日に:1

記憶を頼りに、ここまで書き直しましたー。まだ途中だけど。

リク「桂さんを巡って、沖田VS神楽」








「あ。」
 川沿いの道は見晴らしがいいように見えて、一度土手を降りると結構死角が多いことを、神楽は知っている。かくれんぼには物足りないけど秘密基地感はお気に入りで、この道を散歩するときにはいつも寄り道をしていた。今日も今日とて覗いた先に、丸くて白い物体をまず見つける。
「エリー! ってことは」
 はたして、謎のオッサンの向こうから、小さな頭が顔を出した。日陰にあって艶を消した黒い髪は、いっそう深さと細さを増して見えた。
「ヅラ!」
「リーダーこんにちわ。それと、ヅラじゃない桂だ」
「何してるアルか?」
 リードを引いて土手を降りると、巨大白ふわもこ(肉球つき)に桂の顔がほころぶ。ちょっとだけムっときたが、さわらせてやる代わりにいろいろせびってやろうと決めて、笑顔を持ち直した。かぶき町の女王様は、こんなことで腹を立ててはいけないのだ。
「散歩、というか、休憩だ」
「ふーん。たかが10キロ歩くくらいで休憩とは、なまったもんアルなぁヅラぁ。あれ?」
「そうは言うがな、リーダー」
 桂はそこで、闇雲にペットを歩かせることへの負担や、時々立ち止まって風や雲の流れや道ばたの草花や通りすがりの人や猫の営みに目を向けることへの意義とかを、滔々と語った。もちろん、そんな眠たくなるような話に耳を傾ける神楽ではない。
「散歩は一番身近な冒険だと、ちいさんも言っていてな。……リーダー?」
「ヅラ。それ、何アルか」
「あぁ、柏餅と草だんごだ。もうすぐ端午の節句だろう」
「何でそれ、私のぶんもないアルか」
 桂とエリザベスの間には、柏の葉っぱとだんごの串と、残っただんごが二本。エリザベスの手には食べかけのだんご、桂の手には手をつけられていない柏餅と、湯気を立てる水筒のふた。桂は目を瞬かせてから、ふたを置いて「はい」とだんごを差し出した。
「んなもんで足りるかぁぁぁ!」
「げふぉっ!」
 河原の砂利の上を桂が滑る。跳ね飛んだだんごと柏餅を口でキャッチして胃袋直送便に送り込んで、神楽は仁王立ちに立った。
「お前は部下のくせに、私のことをなんにも判ってないアルかっ。だんごだったら百本、柏餅だったら百こ、それと酢昆布も忘れてもらっては困るアル!」
「そ、それはうかつだった……すまないリーダー……」
 よれよれの声で呟きながら、桂は起きあがる様子を見せない。エリザベスがいそいそと駆け寄る、その手が隠したのはワンカップか。
『大丈夫ですか、桂さん』
「平気だ、エリザベス。こうして寝っ転がっていると、気持ちいいなぁ」
『頭血、噴水になってますよ』
「そうか?」
 上半身を起こして、ごしごしと無造作に拭く。まだなんか血が滲んでいるのに、これでよし、とうなづく桂の目の前に、神楽はだんごの串をつきつけた。
「他にもあるんだロ、んまい棒とか。さっさと出すヨロシ」
「うむ。だがこのんまい棒チョコバーは、銀時の攘夷参加の見返りとして提供するもの。いかにリーダーといえど、おとなしく献上するわけにはいかん」
「じゃぁ買ってこいヨ。私にだんごと柏餅を200個ずつ献上しろヨ」
「リーダー、だんごは一個二個ではなく。一本二本もしくは一串二串と数えるのが正しいのだ」
「んなもんどーでもいいアル」
「いや、よくないぞ。言葉の乱れは風紀の乱れに繋がって、」
 そしてまた、滔々とお説教が始まった。桂が風紀委員のパラレルなんてどっかにあっただろうか。そんなことを思いながら、お説教してる人の前でついあくびをしてしまった。駆け回るのに疲れて戻ってきた定春も、寝そべって大きな口を緊張感なく開ける。
 怒られるかと思ったが(それでも神楽は、桂の怒った姿を怖いと思ったことはない。新八はそうでもないよというのだが)、驚いたことにあくびの三人目の感染者は桂だった。銀時が見たらまたツッコミをいれるだろうほど盛大に、口を開ける。
「む、いかんいかん」
「何だヨヅラ、お前も小うるさいオセッキョーなんか飽き飽きしてるアルか。だったら早く、私にだんごと柏餅と酢昆布を献上するアル」
「飽きているわけではない。春眠暁を覚えずと言って、」
「いーから行くネ!」
 腕をつかんで引っ張り立たせた。神楽が負わせた傷なんて、見た目ほどにもダメージを与えているわけはないはずなのだが、草履と足袋をつけた足はふらふらしていて危なっかしい。
『私が行きますよ』
 そこへ、さっとエリザベスはプラカードを掲げた。
『桂さんは、ここで待っていてください』
「しかし、エリザベス。お前一人でお使いなど大丈夫か? シャンプーとリンスととりーとめんとも間違えるお前ではないか」
「ヅラ、お前の目にはこれがどんだけ幼稚園児に見えてるアルか。どう見たってオッサンだロ」
「いやしかし、」
『大丈夫ですよ。桂さんはいつも、ご自分がいなくなった時のことを考えろと言うじゃないですか。これでも一派のナンバー2として、桂さんの補佐をしているんです。任せてください』
「そうか? だが心配だ、やはり俺も」
 諦めの悪さは桂の長所、いや短所?だが、その足はまだ常の確かさを取り戻してはいなかった。そういや、顔色だってなんかいつもより白い。血が出ているだけではないその真っ白さに、神楽は桂の腕を引く。
「定春ー」
 アォンっと、愛犬はでかい図体に似合わない声を上げた。桂の細い眉が垂れ下がる。このギャップもかわいいとは、二人の共通した意見だ。
「眠いアルか?」
「アンっ」
「んじゃ、ここで昼寝と、ヅラのお守りをやってるヨロシ」
「リーダー?」
 ぽいっと定春の腹の上に桂を放り投げると、抵抗もなくなった。ふかふかな体毛に桂が逆らえるわけがないのだ。
「その間、私とエリーでだんご買ってくるアル。財布寄越せヨ」
 桂が取り出す前に懐をまさぐる。いつも形だけなされる小言は、今日は飛んでこない。
「んじゃ、いい子にお留守番してろヨ。行くヨ、エリー!」
 白い手を引っ張って土手を駈けあがる。少し走ってから振り向くと、白ふわもこと黒い影は仲良く寝っ転がっていた。肉球をいじってる風でもない。だとしたら、頭からかぶりつかれる故の悲鳴が聞こえてくるだろう。
「エリー、ヅラどうしたアルか?」
 あんな、弱々しい桂を目にしたのは初めてではないだろうか。エリザベスが行方不明になったときも桂はふてぶてしい態度を崩さなかったし、自分が大怪我して行方をくらませたときも重傷だとは思えないほどピンピンしていた。風邪だってひいたことないのは、インフル大流行の折に知らされている。
『最近、寝不足なのだ』
「夜眠れてないアルか。昼間に寝てるアルか」
『いや、色々忙しいので。夜にも邪魔が入るし』
「じゃま?」
 ゴルゴなみの凛々しい眉毛に、ガッデムと炎をまとってたエリザベスだったが、神楽の言葉にはっと不穏な空気を消す。
『いや、何でもない。店はこっちだ』
 土手の上から道路へと降りる前に、もう一度振り向いた。久しぶりの暖かな空気と日差しと、やわらかい風が彼に吹けばいい。草の向こうに隠れた姿とさっき見たあくびに、そう思った。


 さすがの神楽も、部下からすべてを毟りとろうとは考えていない。店に数が並んでいなかったこともあって、だんごと柏餅はあわせて28個に押さえてやった。そのかわり、エリザベスがカキノタネやさきイカやチーカマを買ってくれた。
 意気揚々と、元の土手に戻る。風が強くなっていて、少し肌寒い。まぁ定春が一緒なのだから、桂も寒くはないだろう。
「ヅラー」
 戦利品を見せびらかすのが待ち遠しくて、早足になる。そばはないが、桂は驚いて、そして笑ってくれるだろう。ひょっとしたらこれで病院に誘えるかもしれない。お見舞いに持っていくために、多めに買ったのだから。
「ヅラっ」
 土手を駈け降りる。風がそよぎ、遠くで鳥が鳴いている。静かで暖かい春の昼下がり、白ふわもこの向こうから茶色い頭がぴょこっと顔を出した。
 茶色い?
「なーんだ、帰ってきちまったのかィ」
 悪びれずそう呟いた相手に、思わず手が出ていた。
 差していた傘を閉じ、定春を飛び越えて殴りかかる。予想通り沖田は後ろへ飛びすさり、そこへ傘の銃口を向けた。迷いなく引き金を引く。
「お前ェェェェェっ。ヅラに何したアルかっ! 正直に吐かないと撃つ!!」
「もう撃ってるだろーがぃ。日本語は正しく使えよバーカ」
 威嚇とはいえ、沖田はそれを顔色一つ変えずにかわした。もうちょっと本気で狙ってやればよかった。
「さっさと吐くアル。次は外さないネ。三秒いないに言わないと撃つ!」
「ヅラっつーのは何でぃ」
「はい三秒っ!!」
 発射と同時に、沖田が何か黒いものを投げつけてきた。ひらひらとしたそれは神楽の視界を遮り、狙いを外させる。
「あーあ。人の制服ボロボロにしやがって。弁償しろい弁償」
「次はお前をボロボロにしてやるアルっ! ヅラはどうしたネっ!」
「だからヅラってのはなんなんでぃ。アデランスでも探せば?」
 言う顔はにやついていて、判っててとぼけているようにしか見えない。第三射を、指に力を入れた途端、目の前に白い四角いものが突き出される。
『落ち着け』
 それにはそう書かれていた。脇を見ると、エリザベスが眉を険しくして沖田を睨んでいる。
「エリーっ」
『後ろを見ろ』
「え?」
 銃口は沖田に向けたまま振り返る。定春がつぶらな目をこっちに向けている。まだその顔はかわいいままだが、力の入った前足はいつでも臨戦態勢に入れることを確信させた。
 そしてその白ふわもこの毛並みに埋もれるように。
「……ヅラぁっ!」
 ぬ”ーぬ”ーといういびきに、どうして気づかなかったのか。瞼をきちんと閉じて、桂はまだぐっすり眠っていた。左手が定春の首の毛を、まるでねんこ毛布であるかのように握りしめている。
『何のつもりだ、小僧』
「何って別に? そーだなぁ、額に肉とか、ほっぺたに百とか? あ、百は金きらきんじゃないからダメか」
『ふざけるな』
「ふざけてねーでさぁ」
 ぎり、という音は、エリザベスの手元から聞こえた。神楽が開けた距離は今は仇となって、エリザベスはうかつに飛び込めないでいる。だらりとした姿勢の沖田だが、桂の忠実なペットが動いた瞬間、逃げるか抜くかするだろう。
『油断も隙もない……桂さんのいるところに、昼も夜も現れやがって』
「夜も?」
「江戸を騒がすテロリストをとっ捕まえんのが、俺らの仕事だからねぃ。桂が寝てるなら丁度いいや、神妙にお縄についてもらうぜぃ……そこどけよ」
 沖田がニヤリと目を細めるのと一緒に、エリザベスのまとう気配も刺々しくなっていく。定春が首を低くし、前足に力を込めている。もしこの子が猫だったら、毛を逆立てているだろう。神楽は左手で『伏せ』の合図をし、辺りの瑞々しい若草を発火させかねないほど火花を散らせている二人の間へ割り込んだ。
「待つアル、エリー。このケンカ、私がもらったネ」
『何?』
「へーぇ? てめーが仲裁に入るなんざ、明日辺りダイヤモンドダストでも降るんじゃねぇのかぃ」
「誰が、止めるなんて言ったアルか」
 傘の先を、まっすぐ沖田に向ける。最初はきょとんと目を丸くしていた沖田は、次いで口端を持ち上げた。
「エリーはヅラを頼むアル」
『正気か』
 沖田から目を離さない神楽を気遣ってか、眼の端でプラカードは掲げられた。
『こんな、天気の下で』
 小さく書き添えられたその文字に、神楽は笑ってみせる。
「平気アル。こんなの、ハンディにもならないネ」
 降り注ぐ光が、目と肌と、呼吸を灼いていく。その刺すような感覚を、意地で払いのける。それよりももっと別なモノが、神楽の腹の底をチクチクと刺激する。
「お前、毎日毎晩ヅラのジャマしてるアルか」
「ん? まーね。桂の邪魔すんのが、俺の仕事だからねぃ」
 当たり前だろそれがどうしたと言わんばかりの態度は、ささくれ立つ苛立ちをさらに加速させた。
 だったら、さっきのあの静けさはなんだというのか。
 顔を見るまで、夜兎である神楽すら沖田がいることに気づかなかった。まどろみを誘うようなやさしく静かな空気を、桂と沖田がそろっていて、作り上げていたというのか。
(そんなの、認めない)
 沖田の手が腰ではなく、ズボンのポケットへと伸びる。互いにゆっくりと腰を落とし、そして同時に動いた。





                           ~続く~
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by wakame81 | 2010-05-02 22:16 | 小説。  

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