お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

行進曲「YouthfulDays」:3

これでラストー。

そういや、みすちるの曲で同じタイトルのがあったような……。

ちなみに、出てないけど銀時くんこの世界にいます。高&桂と幼なじみやってます。公立の中学進んだんで同じ学校じゃないです。
高杉くんが「小太郎」呼びじゃなくて「桂」呼びなのは、そーゆーわけです<いらん設定。








 力を込めて引っ張ると、細い身体は簡単に揺らいだ。高杉からは追う声はない。ただ西郷が、利用記録を書いていけと口を挟んだだけだ。桂を離さないままボールペンで名前を走り書きし、早足で保健室を出る。
 廊下を突っ切り、階段に出るまで桂は抵抗しなかった。すぐ右には第一体育館への渡り廊下へ降り口がある。生徒の出入りが多いそこを避けて、階段を登り踊り場で立ち止まる。そこでやっと、土方は振り向いた。
 まだ、掴んだ手は離さない。
 振り返った先の桂は、まだ眼を丸くしたままだった。抵抗しなかったのではなく、することすら忘れていたのだと気づく。
「……あのなぁ」
「土方?」
「甘やかしてんじゃねーよ」
 もう一度繰り返すと、眼はぱちぱちと瞬く。そして、まぁるい形からいつもの細長さへと戻った。
「何のことだ。だいたい、俺をここまで引っ張ってきて晋助をどうするつもりだ。まだ、話は終わってなかったのだぞ」
「それだよ」
「何?」
 苛立ちとともに、掴んだ手に籠もる力が強くなっていく。それを半ば自覚しながら、土方は止めはしなかった。
「お前、いつもあんな風に高杉に構ってんのか」
「そうだが」
 それがどうしたと言わんばかりに言い切られた。一瞬で駆け登った怒りまかせの手に締め付けられ、桂の顔が歪む。
「土方っ」
 上がった声に慌てて力を緩めた。途端、桂が腕を振り払おうとしたので、空いた手でもう片方の腕も捕らえる。
「何のつもりだっ」
「だから、甘やかしてるってんだよ。お前がそうやって高杉を構うから、アイツがつけあがるんだ」
 細い眼は、再び見開かれた。踊り場の窓から差し込む光の中で見る瞳は、思いの外色素が薄い。そういえば、さっき倒れ込まれた時もそうだった。和風美人な外見からてっきり黒眼だと思っていたが、違うんだなぁと頭の片隅で考える。
「アイツがサボろうがそれで先生に怒られようが、お前には関係ないだろ。いや、幼なじみってんなら気になんだろーが、それでお前がアイツの面倒見なきゃいけねーわけじゃねーだろ。お前は高杉のお袋かよ」
「お袋じゃない、幼なじみだ。晋助の母上は、それは素晴らしい人だぞ。俺なんか足下にも及ばないくらいに」
「何張り合ってんだよ。俺が言いてぇのはそれじゃねぇ。お前がアイツの母親バリに世話焼きまくって、どうなるってんだ。一生アイツの面倒見てく気か?」
 桂は何か言いかけて口を開き、結局押し黙った。何を言おうとしたのか、土方は知りたくもない。
「サボった末にアイツが怒られるってんなら、いっぺんこっ酷く怒られりゃいーんだ。その方が、目が醒めるだろーよ」
 桂は口をつぐんだままだ。土方が話し終えると、あたりは静かになる。階段の下から、遠くはしゃぐ声が聞こえてきた。高いあれは、一年生か。
 急に、土方は人目が気になった。要領よく回ればもうテストを終わらせる奴もいるかもしれない。場所を変えるかいやそれも不自然か、と迷い答えを出す前に、桂が口を開く。
「……土方」
「何だよ」
「腕、痛い」
「あ、悪ぃ」
 動揺のあまり、手を離してしまった。桂に逃げられる可能性なんか、すっかり忘れていた。思い出したのは離したあとで、さらに土方は狼狽える。
「目から鱗だ」
 逃げてもおかしくないのだが、桂はその場から動かなかった。掴まれていた場所をさするでもなく、土方を見据える。
「は?」
「俺は気づかなかった。晋助に厳しくしてるつもりだった。まさか、甘やかしてるように見えたなどと」
「いや、見えたっつーかほとんどそのもの」
「ありがとう」
 感謝の言葉に、今度こそ冷静さを保てなかった。耳を疑い、響いた言葉を反芻する。
「いつも、髪を切れと煩い奴だと思っていた。良い奴、だったのだな」
 そして。
 凛々しいはずの口元はふわりとほころび、鋭い眼はやわらかく細められる。
 瞬間、世界は差し込む陽射しが描く窓の形に切り取られた。階下を行き交いする生徒の声は遠く聞こえなくなる。大気が暖かいのは、午後の光のせいだけではないはずだ。
「血は、もう大丈夫なのか」
「あ、あぁ。止まった」
「そうか。今日はもう安静にしておけ。俺が、先生に言付けてやる。残りのテストも後日に回してもらえ」
 言うなり、桂は階段を駆け降りていった。土方が止める間もなかった。切り取られた空間は世界とまた繋がり、下でばったり桂と出くわしただろう下級生の驚く声が耳に届く。
 けれど、依然としてここはあたたかかった。ぬくもりのみなもとなど、今し方去っていったというのに、これはその名残だろうか。
「……桂、が」
 笑いかけてくれた。思い出すだけで、ぬくもりは土方を満たす。いや、それ以上の熱が身体の奥に生まれる。
「……かつら」

「おい」

 かけられた声は、あたたかだった大気からぬくもりを一切奪っていった。土方の中にも、芽生えた熱に替わるようにひやりとしたものが落ちる。
「桂は」
 踊り場まで登る途中に立ち止まって、その眼はこちらを見上げてきた。睨みつけるなんて生易しいものではない。土方も目つきが悪いとよく言われるが、こいつだって相当なものだ。片方が眼帯に覆われているからといって、その凶暴さは少しも損なわれてはくれない。
「桂をどうした」
「……別に」
 土方の中の冷たいものは、少しずつ大きくなる。尊大な、高杉への怯えではない。同じものを高杉もうちに持っている。
 こんな、熱を持たない怒りもあるのだと、土方は初めて知った。
「別に、どうもしやしてねーよ。ただ、お前を甘やかしすぎてるって言っただけだ」
「はっ」
 高杉に浮かんだのは、怒りではなく嘲りだった。滲ませる余裕が、一層土方の中の氷を大きくする。
「何の権利があって、テメェが口を挟む?」
「権利とかじゃねーだろ。目に余るんだよ、お前が桂にそうやって甘えんのが」
「天下の風紀委員長サマは、人のプライベートにまで口を突っ込むのが仕事ってか。さすがだな」
「違ぇよっ」
 踏みだそうとした足を、堪えた。殴りかかってはだめだ。それは、負けを認めることになる。
「俺はただ、桂が振り回されて迷惑だろうとっ」
「違うクラスに顔まで出されてる俺が迷惑してるったぁ取らねーんだな。なんでだ?」
 問いかけながら、高杉の口は歪む。土方は言葉に詰まり、答えを探そうとした。
「テメェが桂びいきで物事見てるからだろ」
 じゃぁそれは何でだ?
 続く問いに、土方の頭は麻痺する。答え、は探すまでもなく浮上している。なのに、口に出すのがためらわれた。
「テメェのそれは、好意じゃねーよ」
 土方の肩が跳ねた。半ば、無意識だった。心に秘めた想いどころか不安すら、言い当てられて反論する力すら失う。
「男ばっかの環境で、ただアイツが珍しいだけだ。見た目のきれいなアイツを、女みたいに見て気を紛らわせてるだけだ。ただの興味本位、いやそれ以下の最低な感情さ」
「ち、が」
「違うって、言い切れんのか?」
 笑う声は、昔閉じこめられた冷蔵庫の中よりも冷たかった。さっきまでここはあんなに暖かくて、まるで天国のようだったのに、これはどうしてなのだろう。高杉から降り注がれた言葉だけではない。自分の中の、冷たい感情だけではない。もう一つ生まれた冷ややかな視線が、高杉の言葉を肯定する。
 言うだけ言って、高杉は背を向けた。あの視線が途切れたのをきっかけに、土方の手がぴくりと動く。追おうとしたのか、反論しようとしたのか、自分でも判らない感情に足は縫い止められ、影が階段へと落ちる。
 それは、背中から光が注がれているからであって。
 そして唐突に、土方はぬくもりを感じた。


 ほんの一ヶ月も遡らない。それは、春休みのことだった。
 寮から離れた、隣町の図書館は土方のお気に入りの場所だった。勉強も剣道も、努力している姿を見られるのがどうにも恥ずかしくて、だから土方は勉強をするときには寮ではなくこの図書館へと通った。学校の最寄り駅から三つも離れているこの場所に、土方を知るものなんていないはずだった。
 だから、そこで桂を見つけたときは、ぎょっとしたのだ。
 最初は、他人のそら似だと思った。私服だったし、よく似てるだけの女の子だと思いたかった。が、足下においてあるのは学校指定の鞄で、だとしたら間違いようがなかった。
 頬杖をついて俯いている桂は、どうやら土方に気づいてないらしい。とにかくここでは勉強できないと思って、借りた本だけ返して、ついでに続きの小説を借りようと書架の間に身を隠して、目的の本を探していた。
 鈍い音が響いたのはしばらくしてからで、書架の間から読書机を覗くと、突っ伏している桂が見えた。
(お、おい桂!?)
 具合でも悪いのか。顔を合わせての気まずさもすっかり忘れて土方は駆け寄り、そしてその顔が気持ちよさそうにまどろんでいるのに気づいた。最初に見つけたときから、ただ居眠りしていただけかと思うと怒りが湧いてきて、つい起こして苦情を言いたくなった。
 そして、その顔を覗き込んで。
 やわらかそうなほっぺたと、うっすらと開かれた口元を見て、つい。
(……触りてぇ)
 そう、思ってしまったのだ。


「待てよ、高杉っ」
 張り上げた声の大きさに、土方が一番驚いた。一番下まで降りきっていた高杉が足を止めて、振り返る。もう一度見上げてきた顔は、少しだけ眉を寄せていたがそれだけだ。
 ひょっとしたら、ほかの生徒にも聞かれたかもしれないという後悔を、土方はむりやりねじ伏せた。
「違う。お前の言うとおりじゃねぇ」
 腹をくくると、びっくりするほど冷静になれた。さっきまでの氷結地獄がなんだというのだ。自分の中には、あの日のぬくもりと熱がある。
「興味本位なんかじゃねぇし、女の代わりにもしてねぇ」
 桂に惚れていると自覚したあの日、眠る顔にむらむらしたのは事実だ。同じ感情をあれ以降も感じ続けているし、さっきだってそれで鼻血を出した。けれど、それだけじゃない。
 それだけだとしたら、同時に抱くぬくもりの理由がつかない。幼なじみの男や姉弟の顔を見ると感じる、日だまりのようなあたたかさは、ただむらっとしてるだけじゃ生まれない。
「俺は、桂が好きだ」
 思い切ろうとしていた、はずだった。気の迷いだと、土方自身が言い聞かせていた。けれど、もう認めよう。
「……へぇ?」
 高杉が、もう一度あの笑みを浮かべる。今度は、恐怖も凍り付くような何かも感じなかった。
「アイツは、俺のだ」
「お前の、幼なじみ、だろ?」
 桂は確かに高杉をそう言った。まっすぐに、てらいもなく。高杉がなんと言おうと、それは事実だ。
 その証拠に、高杉の顔から笑みが消えた。初めての、余裕のない顔に土方は息をつく。
「だったら、イーブンだ」
「イーブンね」
 はっ、と、再び吐き捨てるような笑いが階段に響く。
「させねぇよ、イーブンになんか」
 それだけ言い捨てると、今度こそ高杉は土方に背を向けた。土方も止めず、後ろ姿を見送る。ジャージの背中が見えなくなって、やっと大きく息を吐いた。あの温もりと向けられた笑顔を盾にしても、背中に走る汗は止められなかった。
 イーブン。それこそ、事実ではない。土方が初めて眼にした笑顔も、高杉はそれこそたくさん見てきたのだろう。自分はやっと自覚したばかりで、それこそスタートラインに立ったに過ぎない。
 それでも。
「のんきにしてんじゃねぇぞウサギさんよぉ。死ぬ気になりゃあ亀だって勝てるんだからな」
 これでやっと、走り出すことができるのだから。





                         ~Fin~
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by wakame81 | 2010-04-18 10:13 | 小説。  

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