お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

行進曲「YouthflDayz」:2

ちなみにこの人達何をやってるかというと、全校いっせいに体力診断テストをやってるわけです。
そして保健室の先生の人選、幾松っちゃんでもよかったのですが、そしたら桂くんの矢印がそっちに向かいそうだったので全力で阻止しました(爆)。






「あと、何だっけ」
「あれは? 踏み台昇降」
「それは授業でやるってよー」
 体育館での診断を終えて、土方達は渡り廊下へと出た。ハンドボール投げや斜め懸垂など、グラウンドで行われるものはすでに終わっている。そういや、桂の姿は外では見なかった。今頃は、そっちに回っているのだろうか。
「持久走も授業だっけか。かったりー」
「だよなー」
「今やるっつわれてもイヤだけどなー」
 授業中でよかった、と思う。長い髪をたなびかせて走る桂の姿は、それはそれは美しいのだ。目を奪われるほどのそれを、見られないのは惜しい。クラスが違うならともかく、同じじゃないのは班だけという理由でなんて。
 原田やクラスメイトは、配られたプリントに頭をつきあわせている。空白なのは、身長、体重など。健康診断も一緒にやるつもりか、この学校は。
「それじゃ、保健室か?」
「保健室じゃないってよ」
「うっそ。じゃぁどこだよ。去年保健室じゃなかったっけ?」
 やいのやいのと騒ぎながら、向かったのは第二体育館、通称武道館である。三階建てで、一階の駐車場部分は弓道部の練習場になっているし、二階には柔道場と剣道場があるのだ。
 身体測定が行われているのは三階で、狭い階段を登りつめた先に扉がある。第一体育館ほど広くはないが、学年単位で集まるには充分な場所だ。土方ら剣道部も、体力づくりにこの狭い階段は使う。今年で三年目に入るわけだが、それでもきついものはキツイ。息を切らせて、扉の取っ手に手をかけた。途端。
「そうだ、保健室だ!」
 こっちが開ける前に扉は開かれた。持ち前の反射神経のたまものか、とっさに後ろへ下がってドアとの激突は避けられた。が、その後に少し目を見開いた桂が飛び出してきたことは想定外だった。向こうも避け損ねてたのか、そのまま土方へと突進する。
 受け身を取れたのは不幸中の幸いだろうか。背中を打ちつける痛みよりも、胸と腹にかけられた体重の方が痛かった。そっちこそ受け身を取れ、という苦情を感じる前に、鼻をいい匂いがくすぐる。汗くさいのではもちろんない、石鹸のにおいにも似てけれど違う。呼吸に、さらりと細い感触が頬を滑って、後から桂の髪だと気づいた。
「土方さんっ? え、桂?」
「大丈夫かよ二人とも」
 級友達の声に、一瞬ジャマくせぇと思ってしまった自分を恥じた。「悪ぃ」と言いながら、自分にもたれかかってくる桂を助け起こそうとして。
(……うわ)
 顔のすぐ間近で、前髪が揺れた。人形みたいな白い肌が、黒い髪とコントラストになって目に付く。思っていたより長い睫毛の向こうで、上目がちに瞳がこちらを向く。透明感と深みを合わせもった、吸い込まれるような色だった。
 その目が物憂げに瞬き。

「……さっさと退け、土方」

「テメ何偉そうに…っ」
 思わず突き飛ばすように桂の肩を押して身体を起こした途端、ぬるりとしたものが鼻から滴り落ちた。


 そんなわけで、桂と仲良く保健室である。
「ふん、手間のかかる」
「頼んでねーよ。だいたいなぁ、いちいち大げさなんだよ。たかが鼻血だろーが」
「俺とて、お前が鼻血を出そうが耳血を出そうがどうでもいい。たまたま、保健室に用事があっただけだ。大げさなというなら、お前の級友に言えばいい」
「お前のクラスメイトでもあるだろーがよ」
 先をさっさと歩く桂がどんな顔をしたのか、土方からは見えない。クラス委員なんてものを引き受けておきながら、いつも一人でいる印象を、土方は強める。そういえば今年で三年になるくせに、桂が誰かと親しいという話を聞かない。ただ一人を除いて。
「……なぁ」
「何だ」
「保健室に、何の用事なんだよ。俺の付き添いじゃねーんならさ」
 ちらりと、白い顔はこっちを向いた。その視線を土方が捉える前に、桂は再び前を向く。
「お前に関係ない」
 答える声は突き放すような鋭さはなく、淡々とした感じが余計に拒まれた気がした。それは苛立ちに火をつけ、返す声はつい荒くなる。l
「関係ねーじゃねーだろ。第一お前、保健室がどーのこーの言いながらドア開けたよな。この鼻血、誰のせいだと思ってんだよ」
「たかが鼻血、だと言ったのはお前だろう土方」
「そーゆー問題じゃねぇよ、話すり替えんなっ」
「だとしても、お前に言うべき話ではない」
「あぁっ?」
 怒鳴っても、桂は応じない。さっさと足を運んで、『保健室』と書かれたプレートの前で立ち上がる。一応ケガ人に対する配慮はねーのかと毒づく土方が追いつくよりも前に、ドアは開けられた。
「あら、どうしたの」
 迎えた声は野太く、土方は中に入る前に覚悟を強いられた。いつまでたっても、保健室の主には慣れない。桂はといえば緊張を髪の毛ほども感じさせず、敷居をまたぐ。
「西郷先生、ケガ人です。ケガといっても鼻血を出した程度で、ティッシュでも詰めとけば治るぐらいでしょうが」
「悪かったな鼻血程度で!」
 一応、土方を優先させてくれはしたらしい。けれど、感謝の言葉はあまりの物言いに吹き飛んでしまった。
「あら。鼻血といっても侮れないんだよ」
 どこからどう見ても男にしか見えない体格のくせに、ばっちりと化粧を施した顔で西郷は笑った。……のだと思う。その顔で口端を持ち上げられても、癒しどころか恐怖しか感じない。
「どうしたの。頭は打った?」
「いや、頭はぶつけては……」
「そう。じゃ、顔面かしら」
 とりあえず、顔洗ってうがいをしてらっしゃいと西郷は流しを指し示す。後ろめたさに、土方は素直に従った。鼻血の理由が桂にぶつかられたではなく、髪の感触と匂いにむらむらしたからなんて誰が言えるものか。
「でも、珍しいね。アンタが付き添うなんて」
「別に、付き添った訳じゃありません」
 西郷の問いに答える桂はやっぱり淡々としていた。無関心というより、慣れているような態度は、土方を密かに感嘆させる。
「でも来たじゃない。それとも、別の理由? あの子をケガさせたの自分とか?」
「別に。土方の自業自得です」
 その言い方はねーだろていうかそもそも原因はそっちだろという文句は、残念ながら顔を洗っている最中なために口にできなかった。さっきの後ろめたさなどあっという間に消し飛ぶ。
「じゃぁ、やっぱりあの子かしら。今日は見てないわよ」
「いや」
 妙に強い口調で、桂は返した。蛇口を閉めて顔を上げた土方は、そのまなざしが一層強まったのを見た。
「あいつは、ここにいる」
 鋭い視線はカーテン越しのベッドに巡らされる。うち一つでぴたりと止まり、次いでカーテンが跳ね上げられる。
「あぁっ?」
「ちっ」
「え、ちょっと、いつの間にいたのよっ?」
 奥のベッドから身体を起こしたそいつは、サボりを悪びれずに舌打ちする。西郷の詰問すら無視するそいつに、桂は無言で近寄ると振りかざしたゲンコツを落とした。
 ごん。
 派手に響いた音に、土方すら肩をすくめる。
「何をやってるんだ晋助っ。こんなところで、西郷先生にも黙ってっ。いつからここにいた。まさか、朝から一日中じゃないだろうなっ?」
「朝からじゃねーよ、一限は一応出た」
「ほぼ一日中じゃないか。しかも、体力診断は全部サボりか。どうするつもりだ、クラスの皆も心配して探していたぞっ」
「んなわけねーだろ」
「今からでも来い。ちゃんと、全部計るんだ。お前一人のために先生達に後日計り直しさせるつもりかっ?」
「別に出なくたって死にゃしねーだろ」
「そういう問題ではないっ。それとも、命と引き替えにしなければお前は動かないっていうのかっ?」
「話がずれてるだろ」
「晋助っ」
 顔を拭く手も止まったまま、土方は口を開けて二人のやりとりを見つめる。こんな、大きな声で怒鳴る桂なんて初めて見た。今までどんなにしつこく追いかけ回しても、どんなにくどくどと髪を切るよう言っても、柳に風とばかりに受け流すだけでこんな風に抵抗されたことなんてなかったのだ。
「何だよ……っ」
「何だもなにも、これがいつもだからねぇ」
 ほら、したたってるわよと促され、土方はまだ濡れたままの顔を思い出した。高杉に対して怒るべき西郷は、ため息をついて土方を丸いすに座らせる。
「気持ち悪くは?」
「ない」
「とりあえず血圧測るから、腕出して。それと、これで鼻の付け根冷やしてて」
 おとなしく伸ばされた土方の右腕に、西郷は手際よく血圧刑を巻き付ける。電池式じゃない、古いタイプだ。シュコシュコと空気を入れ、聴診器を耳に当てる。
「うーん、ちょっと高いかな」
 そりゃそうだ。深呼吸して気を楽にしてーと言われても、すぐ脇では桂が高杉を叱りとばしている。落ち着いて、なんてできるわけもない。
「頭ぶつけてないなら、大丈夫かしら。体力診断、あと何が残ってるの。ふんふん……運動系のはもう終わってるのね。これなら、残り受けても大丈夫だね。……聞いてる?」
「え? あ」
 意識は視線ごと、隣のやりとりに向けられていた。はっと我に返り《鬼神》とも噂される保健教諭に恐る恐る振り返る。内心の恐怖とは裏腹に、西郷は呆れたような笑みを浮かべていた。
「ほら、二人とも。ケガ人の子がいるんだから、あまり騒がないの」
「だが先生。晋助が」
「低血圧だって言ったろ。聞けよ桂」
「もう昼過ぎだっ。それに、本当に具合が悪いならどうしてこそこそと保健室に忍び込むっ」
 一方的な言い合いは、また始まる。西郷は相変わらず、高杉のサボリを咎める様子もない。いいのか、と尋ねると、肩をすくめられた。
「他に何もやることがなければアタシも言うけどね。今はアンタがいるわけだし」
「は?」
「だって、高杉くんを叱るのはあの子でもできるけど、ケガした子や具合悪い子の対応はアタシにしかできないでしょ?」
 そう言われてしまえば、土方には返す言葉がない。
(や、本当にねぇのか?)
 やかましいやりとりは、まだ続いている。今から受けろ、めんどくさいの応酬が飛び交っている。面倒だというのはともかく、今からだと残り時間もあまりないのは確かだ。だけれども。
「おい、桂」
 名を呼ぶと同時に手が出て、細い腕を掴んだ。上がる叱咤を止めて、見開かれた瞳がこっちを向く。
「行くぞ」
「え?」
「甘やかしてんじゃねーよ」



                        ~続く~
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by wakame81 | 2010-04-18 08:25 | 小説。  

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