お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

凸と凹の肖像

四天王編、お登勢さんがやられた当日の夜の話。……すいません、リク残り二つとか、サイト海藻もとい改装の前にこっち上げちゃってすいません-。これ上げとかないと、四天王編の感想アップできないんですー。

えーと、これで、うちでは銀桂ハッピーエンドフラグが、やっと立ちました←遅すぎるにもほどがある。








 夜中に目を醒ました途端、左肩に痛みが走った。
「いっててててててててぇっ。……あのヤブ医者、なーにが『痛み止め出しとくからねー』だ、全然効いてねーじゃねーかっ。痛みの引かない痛み止めなんて、何の価値もないからね。ヤムチャだってもっと活躍するからね、かませ犬となって敵の強さをアピールするっつー大事な仕事があるからねっ」
 全ヤムチャファンの皆様ごめんなさい。
 それはさておき、喚いていても痛みは収まらない。ナースコールを押そうとして、伸ばした手を途中で止める。
 ここのナースは、男の夢を裏切るかのような猛者ばかりである。今はどうせ、急患に忙しくて、殺しても死なないと思われてるほど何回も入院してくる銀時のことなんか、気にかけてもらえない可能性が高い。
「あーっ、もうっ。痛いのは生きてる証拠っつったってなぁ、痛いもんはどーしようもないんだよっ。せめて、痛み紛らわすためにパフェとかいちご牛乳とか持ってこいってんだ」
 それが、聞き届けられないことも、知っている。どうせだったら銀時の体を知り尽くしているここ大江戸病院ではなく、別の、もっと甘やかしてくれるところに入院させてもらいたかった。そうなったらなったで、「アイツの側から離れるなんて」と不平をこぼすことなど棚の上だ。
「つーかこれしきの傷で入院しなきゃいけねーほど銀さんヤワじゃないからね。痛み止めと甘ーいシロップ(子供用お薬)だけもらえればいいんだから。なーにが検査入院だ、ちょっとコンクリ詰められて季節はずれに海水浴して、ついでに肩ちょっと穴空いたくらいじゃねーかっ。あ、言ってたら余計痛くなってきた痛たたたたたたっ」
 ひとしきり騒いで、やっと喚くのを止めた。暴れれば痛みは増すだけだ。そしてもっと大きな痛みは、大声を上げようが何しようが、消えることはない。
「あーーーっ、くそっ!」
 何だって言うんだ。何で、お登勢が命狙われなければならない。何で、自分たちの平穏が壊されなきゃならない。
 理由は、ちゃんと知っている。お登勢が、望んでもいないのに担ぎあげられた立場を放っぽりだせるようなタチでもないのも、よく判ってる。
 ピラ子の手を跳ねのけて、次郎長に掴みかかった事実が、これから何を生み出すのかも、推測だけど判ってる。
 二人部屋だが、もう一つのベッドにネームプレートはかかっていない。上げた声はわんわんと響いて、やがてうつろに消えた。一人には広すぎる部屋は余計に、がらんとして何もなく感じる。
「何だよこれ何の嫌がらせだよ。入院中そりゃ散々騒ぎましたけどね? だったら個室でいーじゃん何で相部屋に俺一人きりとかいう展開になるわけっ?」
 ナースコールを押し続けていれば、さすがに誰かは顔を出すだろう。別に、動けないわけではない。廊下に出たって咎められるわけでもない。
 けれど、誰かを呼ぶもしくは会いに行くという選択肢を、銀時は敢えて外した。
 人恋しい。薬の匂いがかすかに漂う中一人は、気が落ち込んで仕方ない。けれど、「誰か」じゃイヤだ。
 どうせだったら。
「呼んだか、銀時?」
 その時、ゆっくりと居室のドアが引き開けられる。消灯時間のとっくに過ぎた廊下から差し込む光はない。相変わらず深い闇の中、けれどさらりと流れる黒髪は見まごうことはなかった。
「銀時?」
 小さく、首が傾げられる。その頭の上には斜めに乗っけられたハンチング帽、口元を隠すのは小さなチョビ髭、そしてまとうのはいつもの羽織ではなくぶかぶか気味のオーバーオール。
「って、何でカツオだぁぁぁぁっ!!」
 とっさの跳び蹴りは狙いを外すことなくその顔面に激突した。廊下へと突き飛ばしてドアを閉める。
「ったたたたたたぁぁっ。今のでぜってー傷口開いたな。ったく、余計なことさせやがって、何のつもりだよあのバカヅラは」
「バカヅラじゃない、カツオだ」
「何でいンだよおめーはぁぁっ」
 いつの間に、カツオもとい桂は部屋の中でパイプ椅子を取り出していた。姿勢正しく腰を下ろしたところで、もう一度蹴りを食らわせる。
「てゆーか、どっから入ったっ。ストーカーか、家庭内害虫かっ」
「ふっ。世界一の配管工と言われている俺を舐めてもらっては困るな」
「配管工じゃねーだろ、ただの頭の痛いコスプレ野郎だろ。何の用だよ、見舞いってんならパフェ的なモン置いてとっとと帰れっ」
「おや。立たないな」
 銀時が蹴り倒したついでに、パイプ椅子は噛み合わせがおかしくなったようだ。どうやってもまっすぐに立たないそれを丁寧に片づけて、桂はベッドに腰をかける。
「来んなよウゼェ」
「呼んだのではなかったか?」
「うっせーよ誰も呼んでねーよっ」
「そうか」
 何が、「そうか」なのか、桂は一人腕組みをしてうなづいている。銀時は深いため息をついて、その反対側にどっかりと座った。
「今回も、かなりの手傷を負ったようだな。寝てなくて良いのか?」
「おめーがそこにいると邪魔で寝っ転がれねーんだよ」
「そうか」
「だから、そうか、じゃねーっつーの。帰れったら帰れ」
「お登勢殿は、」
 げしげしとオーバーオールに包まれた背中を蹴飛ばしていた足は、出された名に動きを止めた。
「まだ意識を回復していないそうだな。新八君から聞いたぞ」
 桂が向けているのは背中で、その琥珀をこちらからみることはできない。それでも、その後ろ姿を直視することすら辛くて、銀時は視線を落とす。
「間に合ったようだな」
「うっせーよ。下手な慰めなんていらねーんだよ。気づいてんだろ、おめーも」
 か細い命を繋ぎ止めたのは、銀時が駆けつけたからではない。最初から、致命的にならないぎりぎりのところに、傷は与えられていた。
 自分はまた、護れなかった。
「なら、これからどうする」
 俯いた頭を、手がくしゃりと撫でる。細く長い指は触れれば固い肉刺をところどころに持っていることを、銀時は知っている。
 手首を掴んで引き寄せれば、細い体はたやすく腕の中に落ちてきた。自分でやっておきながら、体重を支えるには不自然な姿勢だと思う。桂も同様に苦しいはずなのに、何も言わず手を背中に回してくれた。
「銀時」
 呼ぶ声も、咎めるためのものではない。甘えだと自覚しながら、抱きしめる腕に力を入れる。手が長い髪に触れて、桂だ、と妙な実感に苦しいような、泣きたいような思いで胸がいっぱいになった。
 これから何をするのか。何をしたいのか。そんなもの、とうに決まっている。
 足がすくむのでもない、最初の一歩を踏み出す勇気がないのでもない。誰かに背中を押されずとも、踏み切るだろう自分を予見している。
 ただ。
 ほんの少しだけ。
「……銀時」
「うっせーよ。黙って抱きつかれてろ」
「そうか、充電中か」
 桂の手がぽんぽんと背中を叩く。昔、そうされていたのと同じように、けれどあの時よりも細い、手に、自分が大きくなったのだと場違いな感想を思った。
「もう、決めているのだな」
「うっせーつってんだろ。もう黙れ、針と糸で縫いつけてやろーか」
「いや……良かった」
 耳元で落とされた声は笑いを含んでいて、自然腕に力がこもった。
「……ワリぃ」
 呟きは口を押しつけた肩の布にくぐもって、桂に届いたかは判らない。そんな謝罪しかできなくて、さらに強く抱きしめた。
 自分で決めたことなのに、そんなことまで桂に甘えてしまう。
「いや」
 背中を叩いていた桂の手が止まって、しがみつくようにパジャマを握られた。滅多にないことに、銀時は目を開く。
「俺もお前に甘えにきたのだ」
「……ヅラ?」
「ヅラじゃない桂だ。じゃないカツオだ。俺が懇意にしている家族が、今大変なことになっていてな。友として助けになりたいのだが、今はそれもままならぬのだ」
 いつもの姿でなく、ヅラ子の扮装でもないこの格好を選んだ理由を、銀時はようやっと察した。かまっ娘倶楽部は元攘夷志士だった者が多い。だからこそ、桂は手を出せないのだ。
 たとえ、個人として手を伸ばそうとしても、攘夷党党首の肩書きは常について回る。西郷の立場を余計悪くすることになるだろうし、引いてはかぶき町の危ういバランスを完全に崩すことにもなりかねない。
「立場に縛られて何もできぬ、というのは、お前にとってはおかしくてしようがないのかもしれぬが」
「あぁ、おかしいね」
 立場、大義、そんなものに縛られる。それは、銀時が捨てた重荷の一つだ。
「けど、否定する気はねーし、迷いながらそれでも捨てねーヤツのことは、スゴいと思う」
 一瞬響いた、息を飲む音は触れあう身体ごしに伝わってきた。それが桂の救いになればいいと、今までとは違う強さを腕に込める。
「どーせ、あっちも何とかしないといけなさそうだし。ついでだから引き受けてやるよ。見返りは、パフェ一年分な」
「確か、一ヶ月に一つだったな」
「違ーよ、三日に一こだっ」
「そうだな。それでこそ銀時だ」
 声を立てて笑いながら、桂は体を起こす。銀時も肩に手を置いて、手伝ってやった。少しだけ身体を離して向き合った顔は、ちょび髭なんかつけているくせに可愛らしく感じる。
(いや、ヅラがかわいいなんてありえないから。第一、かわいくも何ともないコスプレだから、マリ○だから。オッサンだから)
「子供たちは、どうするのだ?」
「あぁっ?」
 内面の動揺をごまかそうとして、ついぶっきらぼうな声を上げてしまった。一瞬ヒヤリとするが、桂は気にした素振りはない。
「連れていくのか」
「んなわけねーだろ。アイツら巻き込む訳にいかねーよ」
「そうか」
 くすくすと笑う顔は、どことなく銀時を苛立たせた。かわいくねぇ。さっきとは真逆の感情で、その頭をはたく。
「何が言いてーんだよお前は」
「特に大したことではないのだが」
「なら黙ってろっつーの」
「あの子たちを甘く見ない方がよいぞ」
 ムカつきと呆れとバカらしさと、そしていとおしさを掻き立てるような顔で、桂は笑った。

「何しろ、宇宙一バカな侍だからな」





                       ~Fin~
[PR]

by wakame81 | 2010-04-11 15:48 | 小説。  

<< 第304訓。 通販と、攘夷喫茶のレポート。 >>