お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

黒猫deタンゴ:4

それにしてもタイトルが安直きわまりないです(爆)。

しかし、すごい雨と風ですねー。ハルコミ行かれる方、お気をつけてくださいー。







 ひょっとしたらこの船は、近々動くのかもしれない。
 入り浸るようになってから聞いた情報で、黒猫はそう判断した。自分とて、ずっと高杉の部屋に籠もっていたわけではない。
 白猫はお土産のことなど忘れて食事を漁っているわけだから、もう一人への土産を自分が調達しなくてはならない。あのゴリラを、この船に連れてくるわけにもいかないのだ。自分達が、バナナを手に入れてやらねばならないではないか。
(お前、食うもん漁りにきてるの、スパイしにきてるの、それともバカ杉のお守りにきてるの?)
 猫の姿では眉毛も毛並みに紛れるし、口の開き方にも人間と比べて限界がある。それでも、そう言った白猫がものすごく拗ねていることは、よく判った。もちろん二番目だ、と返したら、嘘つけと蹴り倒された。
(嘘では、ないのだが)
 それでも、気になるのだ。
 今も船の主は、昼日中からうたた寝をしている。残暑厳しい夏のこととはいえ、薄掛けもかけずにだ。着物をちゃんと着ないから袂が肌けて、へそまで覗いて見える。小さい頃から腹を出して寝ては風邪を引いたのは誰だと思っているのだ。指折り数えてやろうか。
 そもそも、この時間に寝るから夜眠れなくなるのだ。
 どんなに夜遅く訪れても、高杉がちゃんと布団で寝ているところを見たことがない。大抵は酒を煽っていて、せいぜいうたた寝をしているくらいだ。それも、畳に伏せることすらせず、壁にもたりかかりながらだ。
「ナォ」
 起きろ、と声をかけても、高杉は目を開けるどころか身じろぎもしない。
 もっと近寄って、耳元で鳴いてやる。うるさい、と言わんばかりに手を払われた。それから、起きる様子はない。
 引っ掻いてやろうか。包帯に覆われた下、頬に前足を乗せる。肉球に感じる肌は、固い。ちゃんと食べているのだろうな、好き嫌いが多いのは相変わらずで、魚ばかりが並んでいた。甘い物や脂っこい物を偏食するよりはマシなのだろうか。いやもう少し、食べた方がいい。
 そんなことを考えていたからか、爪を立てるのが遅くなった。頬に傷を残す前に、また手で追われる。
 せめて、腹を覆うものを、と思って周りを見渡すが、ちょうどよいものが見あたらない。
 前に薄掛けの代わりになりそうなものをくわえて引きずってきたら、誰かのフンドシで吹いたことがある。適当なものを持ってくるのはそれ以降諦めた。
 なら、どうするか。
「…………ナァ」
 良いことを思いついた。嬉しくてついゴロゴロと喉がなる。白猫が見たらいい気はしないだろう、あれは猫の姿でいることをなかなか認めようとはしない。猫は猫で楽しいのに、と、自分は思うのだけれど。いつもは逃げられてしまう猫たちには逃げられないし、新しい逃げ道にも気づけたし、珍しい人の珍しいトコロを見れたし、久しぶりに虫なんて食ったし。
 閑話休題。
 思いついたことはとても妙案に思えて、黒猫は早速実行に移した。
 普通にやるのではつまらない、というか普段自分がされたくて仕方ないことを簡単にやってやるのは癪に障る。というわけで、黒猫はちょっと離れてから助走をつけて、勢いよく無防備な腹の上に飛び乗ってやった。
「ぐぇ」
 なんか潰れたような声がする。ついでに起きてしまえばいい。顔を見上げるが、目は閉じられたままだ。
 仕方ないので当初の計画を続行する。これも猫の習性か、自分が丸くなろうとする場所をふみふみしていると、不意に大きな骨ばった手に触れられた。
「…………ヅラ?」
 閉じていたはずの目が、半ば開かれている。ぼんやりと焦点のぶれた瞳は、まだ眠っているのだろうか。
「ヅラ」
 もう一度名を呼ばれ、手はあやすように背中を撫でる。
「ニャォ」
「…………ん……」
 一つしか見ることのできない翠は、瞼の向こうに隠れようとしていた。手はまだ、ゆっくりと背中を撫でる。
 止めていたふみふみ運動を再開して、それから腹の上で丸くなる。ぽんぽんと二回、頭を軽く叩いてから手は滑り落ちていった。
「ナォ」
 応えはない。また眠ってしまったのか、聞こえていたとしても言葉の意味など理解できるわけもない。
(……どうして、猫なんだろうな)
 叱ってやりたいことなど、幾らでもある。時間も不規則な食生活や、ろくに寝ない夜と寝てばかりの昼間のこと、最後の記憶からちっとも減っていない酒や、むしろ増えた煙草のこと。昨年来から続いた陰謀のこと。先月のものなど悪趣味極まりなかった。そのくせ、いいタイミングで姿を現したりして。
(いい加減に、しろというのに)

 こんなに近くにいるのに、自分が猫であるがために言葉を交わすこともできない。
 けれど。
 猫の姿でなければ、こんな距離まで近づくことも、きっと許されなかった。

 幾分か涼しくなった風が、開け放しの窓から吹き込む。ほのかに紅色を滲ませた青い空の向こうに、まぁるく白い月が見える。
 もう、そんな時分か。
 もう一度起こそうかどうかためらって、規則正しく上下する胸元を見やって、結局黒猫は、己の瞼をゆっくりと下ろした。


「今日、来なかったっすね。昨日もだけど」
 右半分がわずかに平坦になった月が、深みを増した空へと登ろうとしている。
 船を動かすのに、純粋な戦闘要員であるまた子の出番はない。せいぜい襲撃を警戒して、高杉の側にくっついているくらいだ。
 実際の指揮を執るのは武市で、今鬼兵隊の船は彼の指示によって港を離れようとしている。スピードを上げていく舳先が水面を掻き分け、白い波が扇状に船の後ろへと広がっていく。
「今日じゃなくても、よかったんじゃないっすか?」
 腰に二丁拳銃をさしたまた子の、髪が風に煽られて後ろへとたなびく。前に来たら鬱陶しそうだ、邪魔じゃないのだろうかと高杉はぼんやりと考えた。
「どうした。猫に随分と執心してンじゃねぇか」
「いや、そんなんじゃないっすけど。万斉から、木天蓼星の重鎮が何か事件に巻き込まれただか狼藉者に襲われたとかで、病院に運ばれたばっかりじゃないっすか。警備も厳重になってると思うっすよ」
「奴らの国王が来ているってーのは、公には知らされてなかった。何か知られるとまずいことでもしに来たんだろうさ。警察の手は、まずそっちに動く」
「あ、さすが晋助様。そういうことっすか!」
 はしゃいだ声は、無理にあげているようにも聞こえた。
 右手の煙管に火はついていない。姿勢を崩さずに、正面から見据えてやると、あっけないほど簡単に白状した。
「いや、あんな性悪猫でも、これで会えなくなるかと思うと、ちょっと寂しいかなーなんて。いや、ちょっとだけっすよ!」
 ムキになって否定するまた子の、顔どころではなく耳まで真っ赤である。そんなに言いよどむことか、と高杉は視線を逸らしてやった。
「これが今生の別れって奴でもねぇだろ」
「そうっすか?」
「案外簡単に、会えたりするかもしれねぇぜ」
 目を瞬かせながら、また子は高杉の言葉を反芻しているようだった。正面を向くと、風を真っ向から受ける。これでは火をつけても、満足に吸えないだろう。別に、散々煙草を咎められたからではない。
 手にしていた煙管を袂へとしまう。軽く伏せた瞼の裏で、黒い猫が「ほら、身体に悪いだろう」と、懐かしい声で笑った。





                                    ~Fin~
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by wakame81 | 2010-03-21 06:51 | 小説。  

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