お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

黒猫deタンゴ:3

文字数の割り振りの仕方をまちがいましたー(爆)。三つの筈が、四つになってやんの……。








 失礼しますよ、と障子越しにかけられた声に、万斉は顔を上げた。
「どうぞ」
 入室の許可に、バチが弦を打つ音が重なる。まず見えたのは傷だらけの手、それが音を立てずに障子を開き、その向こうに、ひょっとこのような顔が現れた。
「仕事中でしたか。失礼しますよ」
 改めて、武市は部屋へと入る。襖と畳の和室づくりの部屋には、ところ狭しと音響機材やエレキギター、シンセサイザーが置かれ、壁には寺門通のポスターが何枚も貼られている。違和感もここに極まれり、である。
 武市は慣れている風で、簡単に座る場所を見つけて腰を下ろした。向かいでまだ三味線を爪弾いている男に対し、咎めるでもなく口を開く。
「今、あちらさんから連絡がありましてね。次の降下のことなんですが、予定より早まりましてら」ベベンっ。
 強い音に遮られた。言葉を紡ぐ形のまま口は固まり、視線は目の前の男に集中する。
 サングラスの奥に感情を隠したまま、万斉はバチを繰り、弦から歌を引き起こす。メロディのみでワンフレーズ、それから和音を重ねてもうワンフレーズが、一息に奏でられる。
 もう一度、別のコードで飾られたメロディが爪弾かれた後に、万斉はようやく手を止める。迎える武市は、ゆっくりと息を吐いた。
「お忙しいようですね」
「今ちょうど、降ってきたのでな。で、いかがなさったでござるか……あ、ちょっと待った。今のを描き写させて欲しいでござる」
 右手がバチを置き、身体の脇のペンをとって五線譜へと伸ばされる。再び、武市は大きく息を吐き出す。
「……どうやら、今は話しても意味がないようですね」
「すまないでござる」
「声は全然謝ってませんよ」
 よっこらせ、と膝を立てる。浮かしかけた腰を、万斉の声が止めた。
「そういや、今日は猫は来ていないでござるか?」
「あぁ」
 一度止めた動きを再開させて、武市は立ち上がった。中途半端な姿勢は腰に響く。少しのけぞる姿勢で、腰を拳で叩く。
「私は、見ていませんよ。もっとも、避けられてるようですからね」
「武市殿は、猫に嫌われるタチでござったか」
「さぁ。また子さんよりは嫌われてないと思いますけど」
「また子殿は猫見たら追っかけるからでござる」
「全くですよ」
「まぁ、武市殿の言ったことを真に受けてる訳でもないでござろうが」
 黒い深淵をもつ眼が、小さく瞬く。万斉は譜面に走らせていた手を止めた。
「武市殿も、まさか本当にあれが桂かどこかの手のものとは思ってはいないでござろう?」
 再び、ペンを握った手が動く。八分音符が五線を昇り、頂点を打つように鋭い音が描かれる。
「どうでしょうね。不確定要素はないに越した方がよいのは確かです」
「確か昨日とっ捕まえて、身体中調べたのでござろう?」
「レントゲンにはかけられませんでしたけどね。途中で逃げられましたし」
「そりゃ、逃げるでござろうなぁ」
「ま、最低限の目的は果たしましたし、いいとしますよ」
 そう言う顔が、満足そうに笑う、ことなどない。不快げに歪むことはあるが、武市が表情を変えるのは、大概少女が絡んだときだ。サングラスをかけた万斉以上に、相対する物はやりづらいと思うだろう。
「盗聴機……でござるか」
「猫なんかにつけても、まぁ壊されるでしょうけどね。保険ですよ」
「やはり、警戒しているのでござるか?」
「どちらかと言いますとね、」
 立った姿勢から目線をあわせば、自然見下ろす形になる。万斉はペンを置いて、武市を見上げた。
「猫が囮、という可能性の方がまだありそうですが。まぁ、杞憂に終わるでしょうけどね」
 それでは、と武市は障子に手をかけた。退室を見届けてから、万斉はまたバチを取る。先ほど描き留めたフレーズを奏で、さらに新しいメロディーを続ける。
「それで、主は武市殿とまた子殿と、どちらから逃げてきたのでござるか」
 やおら手を止め、そう声を投げかけた。サングラス越しに投げた視線の反対側にあるアンプの影から、白いもふもふ姿がのっそりと現れる。
「どうやら、餌をねだるのが目的ではないようでござるな」
 すり寄って愛想を振りまくこともせず、むしろ半径1メートルより内側に近づかないように円を描きながら、白猫は窓の方へと歩く。そのくせ視線はこちらへと向けられているのだから、万斉としては面白くて仕方がない。
 まぁ、動きのしなやかさでは、黒猫に及ぶべくもない。どうもこの白猫は、飼い猫の行儀の良さも野良猫のしなやかさもピンと来ないのだ。読みづらい。
 それが、血統書つきのような艶やかさと隙のない動きでこれまた経歴の読めない黒猫と一緒にいるのだから、興味はつきない。好奇心レベルだけれど。
「というか、主、どこかで会ったでござるか?」
 普通の猫なら、魂から奏でる音が聞こえることがそもそも少ない。たまに聞こえてきても、音楽と呼べるほど整ったものではない。ただの音の羅列だ。
 それが、この二匹の猫達は、それはそれは良い音色を奏でるのだ。それも、聞き覚えのあるような。
「武市殿の杞憂も、あながち外れてはいなさそうでござるな。また、晋助のところへ行くのか?」
 白猫は台所で食べる物を漁るくらいだが、黒猫はここにくるとずっと高杉の部屋に入り浸る。また子が目の敵にするのも頷けるほどだ。
 万斉の問いに答えず、白猫はぷい、と顔を背けて窓から出ていく。
 バチを弦に当てようかと思ったが、止めた。手の中でしばし、バチを弄ぶ。
「そんなことはないとも思うが、どうにも似ているでござる」
 いやそれはないと、首を振る。人間が猫になるなんて、起こりうる訳がないのだから。





                               ~続く~
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by wakame81 | 2010-03-21 06:47 | 小説。  

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