お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

黒猫deタンゴ:2

こっちやりつつ、オフ本編集中です。

それにしても、鬼兵隊書くの楽しい……(笑)。








 むくり、とまた子は身体を起こした。障子を閉めていることを差し引いても部屋の中は暗く、まだ夜明けまで遠いのだと知らされる。もう一度布団をかぶっても、ひとたび追い払われた眠気はすぐに戻ってくる気配はなかった。
「……お腹空いたっす」
 やっぱり、夕食を抜いたのがまずかったのだろうか。いや、寝る前にいっぱいモノを食べると消化しきれなくて太ってしまう。そうでなくても夏に体重を落とすどころか増やしてしまった。夏にやせるというのはデマか。
「あぁぁぁぁでも痩せないと、晋助様にみっともない姿見られるのはイヤっす……」
 だったら、腹を出すような衣装を控えればいいのに、という武市の言葉が、呼んでもいないのに蘇ってきた。しかも嫌みったらしく、「ぽっこりお腹を出してかわいらしいのは小学校低学年までですよ」とまで付け加えやがった、変態め。
 もう一度、布団を頭からひっ被る。空いてない空いてないお腹なんて空いてない……。唱えた呪文はむなしく、空腹感をより刺激するだけだった。
「……お水だけなら、いいっすよね」
 ジュースも何も飲まない。水で腹をごまかすだけだ。そう言い聞かせて、そろりと寝床から這い出る。
 深夜の船は明かりを落として、桟橋沿いにたゆたっている。覚束ない足下にももう慣れた。どうやら外はうっすらと白みはじめているらしく、灯火もないのに廊下がぼんやりと見える。
 二、三人の見張りを残して寝静まっている船は、とても静かだ。或いは、彼女の主は起きているかもしれない。確かめることはできずに、どうか誰にも見られませんようにと厨房へ向かう。夕食を抜いた挙げ句に空腹で眠れないなんて、晋助様に知られたら恥ずかしさできっと死ねる。
「ん?」
 誰もいないはずの厨房のドアが、わずかに開いている。瞬時に意識は、年頃の少女から手練れの戦士へと切り替わった。銃を持ってきていない。誰かを呼ぶか、いやその間に逃げられるかもしれない。
 隙間から、そっと中を窺う。くせ者の姿は見えない。けれど、わずかに気配は感じる。
 中にあるはずの包丁の存在を頼りに、小さく開いた戸をさらに開いて身を中へと滑り込ませる。気配は奥、冷蔵庫の前からだ。カッカッと、何かを貪り食うような音に、背筋に汗を感じた。恐怖は次いで、怒りへと変換された。
「誰かいるっすかっ!」
 声を張り上げ、手探りで見つけた明かりのスイッチを入れる。包丁はない、が幽霊の類なんかに晋助様のための食料を食われるのは我慢ならない。生きたモノが相手なら、尚更。
「出てこいっすっ!!」
 怒鳴りながら冷蔵庫前に目をやって、ぽかんと口を開けた。こちらに背を向けて、顔だけ振り向いて固まっているのは、まごうことなき。
「昼間の猫ぉぉっ?」
 正確にはうち一匹、白いほうはまた子の声に我に返ったらしい。食い散らかしていたソーセージやハムやプリンの残骸を蹴飛ばして、ばっと出入り口へ向かう。
「逃がさないっす、この泥棒猫っ!」
 とっさにドアへと走り、閉めようと手を伸ばす。逃げ道さえ塞いでしまえば、あとは時間の問題で性悪猫を懲らしめられる。白猫もそれを悟ったのか、走る足が速くなった。
「くっ! 待てぇぇっす!」
 タッチの差だった。閉じられかけたドアをすり抜けるように、白猫は廊下へ飛び出る。ドアへかける力を逆向きにしてまた子も厨房から走り出た。
「泥棒っ、ドロボーっすよ!」
 こうなったら、ダイエットがどうのとか恥ずかしがってる場合ではない。怒鳴りながら廊下の明かりをつけて回る。何事か、と、何人かが部屋から顔を出す、その足下を白猫は素早く走り去る。
 まずい。
 猫がどっちへ向かっているのか、また子は気づいてしまった。このまま奥へと行けば、そこにあるのは主の自室だ。
「待つっす! 晋助様の邪魔はさせないっ」
 船と言っても、生活空間は和の造りを模している。つまり、扉はみんな障子と同じ外見をしている。もちろんそう簡単に部外者に出入りをさせないために、同じなのはあくまでも外見だけで、素材は頑丈かつ計量な天人の技術を流用しているのだが。
 白猫はそらもうテレビにでも出演できそうな器用さで、突き当たりの障子を勢いよく開けた。いや、二足歩行してないか今?
「フニャォォォッ」
 その叫びは、威嚇というより何かを呼んでいるようにも聞こえた。部屋は仄明るい。まだ、なのか、もう、なのか、とにかく起きていた主は、じりじりと炎がくすぶるような眼を、床の上に投げかけている。そこに何があるのか見止めた瞬間、白猫が唸った。
「フゥゥゥゥゥゥっ」
 胡乱げな隻眼が、ゆっくりと白猫に向けられる。
 畳のしかれた床は濡れていて、その真ん中に黒い物体が縮こまっていた。側には愛用の瓢箪が転がって、未だ畳の上に染みを広げ続けている。ぴくん、と黒い三角形の耳が震え、小さな鼻先を立ててそれは身を震わせた。滴が細かく跳ね、行灯の灯りに煌めく。
「フニャゥっ」
「ニャォ」
 毛を逆立てる白猫を、黒猫の一鳴きが制した。びくっと、ハリネズミのように膨れ上がった白い身体が震え、止まる。
 黒猫はもう一度だけ、身体を震わせて水滴を払った。艶やかな黒い毛並みはしっとりと濡れ、極上の絹織物を思わせる。そして固まったままの白猫に近寄り、顔をすり合わせた。
「ニャァ」
 その声は、まっすぐに高杉へと向けられた。光彩の絞られた眼が、歪められた隻眼を捉える。
 白猫に鼻先で胴をつつかれて、黒猫はなめらかな動きできびすを返す。また子が我に返ったのは、二匹が足下をすり抜けて廊下へ出てたっぷり一分は経ったあとだった。
「し、晋助様、大丈夫っすかっ?」
 高杉は視線をまた子へ投げかけ、床で転がってる瓢箪を指し示す。中身はあらかた出尽くしたらしい、口からの酒の流れが途切れていた。
「あぁぁぁぁぁぁ、シミになっちゃうっす。晋助様のお部屋が……」
「片づけとけ」
 高杉が立ち上がり、また子の横を通り過ぎる。声はいつもよりも尚低く、機嫌の悪さにまた子は身震いした。
「これ、あの黒猫っすよね。晋助様のお酒ひっくり返すなんてっ」
 憤慨の声に応じてくれるなんて、最初から期待してない。それでも、煙管だけを手に部屋から出ていく後ろ姿を見送りながら、ため息がこぼれるのを抑えきれなかった。


(うっわ、めちゃくちゃびしょぬれじゃねーか)
(ちゃんと、払ったのだが)
(払えてねーよ濡れまくってるよ。ポセイドン編のアテナだって、水牢入れられたけどこんなに濡れてなかったからね。もっと乾いてたからね)
(小宇宙の目覚めが足りないのだろうか。もっと燃やして、黄金聖闘士の域にまで高めなければ)
(おめーが言うと、ややこしくなっから止めろ。……うっわ酒くさっ)
(当たり前だろう。酒を浴びたのだからな)
(つかさ、何やってたのバカ杉と。何やったらこんな酒まみれになるの。猫酒にでもされそうになってたわけ?)
(あれはまむし酒の類は飲もうともしなかっただろう)
(俺だってやだよ、見たくもねーよ。てか、まむし酒じゃないなら何)
(彼奴、こんな夜更けにまで酒を飲もうとしてたのだぞ。見つけてしまった以上、止めねばならんだろう)
(それで揉みあってるうちに頭からひっ被ってか? 何やってんだよお前は。いーじゃんよ昼間じゃねぇんだし)
(いいわけあるか。たまには休肝日を設けないと、身体に悪いだろう)
(お前は母親か。つーか、まっすぐ歩けてねーぞヅラ)
(ヅラじゃないかつ)
(あ。)
 どっぽーーーーん。




                                   ~続く~
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by wakame81 | 2010-03-20 01:05 | 小説。  

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