お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

海の底の月を拾う:3

ようやっと三本めー。
書き上がってみたら、ちゃんと脳内プロットを物理メモにしたはずなのに、前に書いた話と骨格が似ていることが発覚しましたorz。








 そういや、と銀時は近い記憶を掘り起こす。高杉が船を停めていた埠頭は、ここからさほど遠くない。何でアイツがそんなところに、という答えなど見当もつかないうちに、ターゲットは一件の小屋の前で立ち止まった。ボロい、小さな小屋だ。こういう漁師小屋を、そういえば昔よく見かけた。
 がたつきそうな引き戸の前に立ったまま、動くそぶりはない。視線はただ、戸に注がれているようだ。開けるのか、ただ足を止めてみただけなのか、判断する材料は銀時にはない。いっそ声をかけて問い質そうかと思った時、ターゲットはきびすを返した。
 そのまままた歩き出す背中を見送ってから、銀時は影から姿を現す。後を追ってここまで来たのはヤツに用があったからだ。なのに何故か、足は小屋の前へと吸い寄せられた。
「……ここに何があるってんだよ」
 首をひねってみても判るはずもない。中に、誰かいる気配はない。思い切って戸を開けてみる。
 日の沈んだ界隈、灯りもない小屋の中は真っ暗に近かった。眼を潜めながら中に入る。漁師小屋、の割には網やその他漁に使いそうなものは見あたらない。土間と、何本か薪の残った竈と、奥にはぼろぼろの畳と三つ折りにされている布団、そして文机が辛うじて目に映る。竈の隣の流しに立って、蛇口をひねってみる。水は出た。ここが、一応使われてはいる証拠だ。
 入り口に気配を感じて、銀時は振り返った。
「なぁんだ、旦那だったんですかぃ」
 半ば開けられた戸板にもたれかかるようにしながら、沖田がこっちを見つめてくる。いつもの制服じゃない、薄緑の袴の、私服だ。
「かぶき町からずーっとつけてくるから、どこのストーカーだと思いやしたぜ」
「どこのって、そりゃストーカーはおたくのボスなんじゃないの?」
「近藤さんはメスゴリラ追っかける趣味はあっても、野郎のケツ追っかける趣味はありやせんぜ」
「とりあえずそれ、本人が聞いたら半殺しにされると思うよ」
 んで、と銀時は視線を巡らした。沖田は動こうとはしない。
「ここ、何? 沖田くん、ここに用があって来たんでしょ?」
「用っていうほどのもんじゃありやせんよ。最近、廃墟探検の面白さにはまりやして」
「誰も住んでないとはいえ勝手に人んち入り込むのは不法侵入じゃなかったっけ」
「心配ご無用でさぁ。俺なら、捜査上の理由があったっつー名目が立ちやすから」
「そーゆーの、職権乱用ってゆーんじゃない? ついでに、ただの趣味なら俺が後つけてたからって素通りして尾行者の動向を確かめるなんてこと、普通しないよね」
 暗がりの中で赤茶の瞳が、すっと深まった。この眼を、銀時は知っている。妖刀の行方を追っている時、夕日の中で「まるで生きているような刀」について銀時に告げた時の眼だ。地球防衛軍からの情報が強く裏付けされたにも関わらず、深く、昏い色を見せるまなざしに、喜びよりも不安の方が大きくなったのを今でも覚えている。
「そういやさ」
 同じように沸き起こる不安を抑えながら、銀時は続けた。沖田が知らせた刀は桂を斬り、そして直後銀時を襲ったのだ。
「カツラ、だっけ? 沖田くんたちが追っかけてるの。それが髪を切られたって、なんで知ってたの?」
「そりゃ、髪の毛短くなった実物を見てるからでさぁ。この前捕り物やってたの、旦那も見たでしょう」
「短くなったとはいえさ、普通は自分で切ったって思うじゃん。なんで、「切られた」って言ったの」
 ぴり、と。空気に緊張が走った。
「沖田くん」
 言わずに逃げるかもしれない、それに備えて銀時の腰がわずかに低くなる。足も手も、指先に至るまで、沖田の動きを逃がすまいと構える。
「…………旦那は」
 息を吐くように、沖田は口を開いた。わずかな呼吸一つでは、張りつめる空気は微塵も拭われはしなかったが。
「ここに桂がいたって俺が言ったら、信じやすか」
「え?」
 沖田へ向けていた全ての神経が、一瞬にして逸らされる。
 桂が、ここに。視線だけを泳がせて、もう一度室内を探る。竈にも流しにも畳の上にもどこにも、この場所と桂を結びつけるものはない。けれど。
 何故だか銀時は、沖田の言葉を本当だと感じた。証拠も何もないと言うのに。或いは、鼻も捉えられないほどの残り香を、魂のどこかで感じ取ったのかもしれない。
 少なくとも真っ向から否定しない沈黙を、沖田は悟ったようだ。ゆるゆると息を吐き、体の力を抜く。緊張が弛んだというより、諦めのように思えた。
「何で、知ってんの」
「偶然でさぁ」
「ここ、沖田くんの別宅? まさかここに連れ込んでたの?」
「まさか。連れ込むんなら屯所か、SM設備のそろったとこにしやすよ」
「ここにいるアイツと、一緒にいた?」
「……まぁ」
 薄ら笑うような顔に、目の前が真っ赤になりかけた。思わず木刀に手が伸びる。抜かなかったのは、相手が沖田で、高杉でも似蔵でもないからだ。
「……アイツに何した」
「何もしてやしませんよ」
「本当だな?」
「信じてくださいって」
 参ったと言うように両手を上げる沖田に、木刀を握る手を離す。ゆっくりと、深い息を吐いて、ぐつぐつ音を立てている感情を逃がそうとする。
 それを遮ったのは、沖田自身だった。
「……すぐ、信じるんですねぇ」
「何が」
「俺は真選組で、桂は指名手配のテロリストですぜ? 何かしないわけないじゃねぇですかぃ」
 ましてや、俺は近藤さんみたいに正直じゃないですから。
 両の手をぎゅっと握りしめる。挑発だ、とっさにそう思った。数日前に桂の無事な姿は見ているのだし、あの後この場所で何かあったのなら、血の匂いにせよ何にせよ、自分が感じ取れないはずがない。
「…………沖田くんも、嘘が好きだねぇ。多串君が苦労するのも判るわ」
「何で、嘘だって思いやす」
「だって。アイツがそう簡単に、やられるわけねーだろ」
 口に出して、これほど白々しい言葉もなかったろう。同じ台詞を吐いたのはこの前のことだ。そして言葉を向けた相手はまさに、桂をその手で斬ったのだ。
「重傷、負っていても?」
「たとえ今にも死にそうでも」
 そんなわけない。桂がバカみたいに強いのを銀時は一番よく知っている。けれどそれにも限界があることだって、知っている。
「アイツが、やられるわけはねぇ」
 ほんの一月足らず前まで、それは銀時にとって絶対だった。けれど、あっけないほど簡単にそれは覆され、証を目の前に突きつけられた。
 死ぬ訳がない? やられるわけがない? 嘘だ。死なない人間がどこにいる。
「……ふーん。」
 沖田の声が低くなる。
「随分と信用なさってるこって」
 わずかな予備動作を、銀時は見逃さなかった。気を弛ませていたわけではない、けれど沖田への意識とは別のものに縛られかけていた状態にしては、上々の反応だろう。跳ぶように仕掛けられた居合いを、木刀で受ける。小柄な体のくせに鋭い打ち込み、受けながら後ろに飛んでいなかったらせっかく新調した獲物をへし折られていただろう。
「なんのつもりよ、沖田くんっ」
「俺と奴との間にそれほどの差があるか、確かめてもらいやしょうか」
 鍔競り合いは一瞬、すぐに沖田が間合いを取った。腕力では銀時に敵わないのを、今の一撃で悟ったか。
 木刀を構える。銀時が沖田に劣るとしたらスピードだろが、狭い室内は逆に沖田の足を殺すことになる。
「気が進まないんだけど……ねっ」
 体の奥から熱が暴れるように吹き出て、腕を通して木刀に伝わる。数日間の苛立ちが、ついに迸り出たようだ。仕掛けてきたのはあっち、と言い訳を立てて地を蹴る。肉薄し、木刀を薙ぐ。手応えはない、考えるより前に体は反応して振り返る。天井高く浮くのは沖田の姿、狭さを逆に利用して壁を蹴って駆けあがったのだと悟る。
「おめーは若島津かっ」
 振り下ろされる刃に体は追いついた。受け流して落ちてくる体に一撃を。そう狙った木刀が砕いたのは、いきなり現れた細長い棒のようなもの。それは炸裂し、煙を吐き出して視界を奪った。




                                   ~続く~
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by wakame81 | 2010-02-07 22:49 | 小説。  

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