お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

夜の女王のアリア:前

今日は某試験でした。ってもう終わってるやーん!
受験生の皆様お疲れ様でしたー、てことで、応援企画(遅)

音大パロで、沖田&桂。某さま入れ知恵ありがとうございまーす(笑)







「あ。」
 キャンパスの掲示板前は、休講やレポート提出や呼び出しの貼り紙をチェックするために、休み時間にはいつも賑わう。鬱陶しい人混みを避ける為に、わざわざ時間をずらしてやって来た沖田の声に振り返る者は、誰もいない。午前最初の授業中、今構内にいる者は授業に出ているか、練習室に籠もっているだろう。誰が好き好んで、寒風吹きすさぶ外に長居したいだろうか。
 沖田とて、早く暖房の利いた食堂あたりに引っ込みたかったが、もう一度掲示板の真ん中にでかでかと貼られた紙を読み上げる。
「入学試験期間により、1月30日、31日の構内への立ち入りを禁止する」
 冷たい風が、薄茶の髪を揺する。姉の用意してくれたマフラーと耳当てがあっても、北風に刺される頬は痛い。それでも沖田は、三たび貼り紙に目を通した。他の、休講や呼び出しのチェックなど、この際どうでもいいと思った。
「……そっか」
 ゆっくりと、息を吐く。ついでに冷気に鼻をくすぐられ、盛大なくしゃみを漏らした。鼻先が冷えている。咳は……出ない。喉をやられた日には、姉がどれだけ心配するか。そんな思いは、させたくない。
「もうそんな、季節か」
 小さく呟いて、マフラーに顔を埋める。誰もいないと判っていても、緩む口元を表に出したくはなかった。


 寒さが厳しくなるのと比例して、昼食時の食堂の混雑は激しくなる。午前の授業終了のチャイムが鳴ってもう三十分は経つというのに、まだトレイを持ってうろうろしている学生が目に付くほどだ。
 二時限めのなかった山崎のおかげで沖田らは無事に座る席を確保し、ゆっくりとランチをたいらげていた。土方が食欲の失せるような真似をしているため、ここら付近にはあまり人は近寄ろうともしない。のんびり出来るのは良いことだが。
「そうなんだよなー。練習室使えなくなるんだよなー」
「近藤さーん。きつねうどん延びやすぜ」
 腕組みしたままどうしたもんかーと考えこむ近藤のトレイに、沖田は七味の瓶を振りかざす。
「ちょっ、止めて総悟。なにするのーっ」
「何って、七味入れようかと。延びたうどんは食いでがないですし」
「入れなくていい俺がやるからっ」
 慌てて瓶を奪い取った近藤は、ほんの一振りだけ、七味を入れる。あれだけで足りるのだろうか、と沖田は思わざるをえない。
「でも正直、困りますよね。スタジオ借りるのは金がかかりますし」
「だよなぁ」
 近藤はまた手を止めてしまった。食べるのも忘れるのはまぁ仕方ない。タダで使える学内の練習室が使えないというのは、結構な痛手なのだ。楽器は一日練習しないと、その分だけ腕が鈍る。かといって、個人宅で練習できるものでもない。防音設備の整ってる家など、滅多にあるものではないのだ。
「去年はどうしてたんでさぁ」
「松平先生のとこのスタジオに集まってたんですよ」
 ラーメンをとっくに食べ終えた山崎が答える。後輩の自分に対しても敬語を使うあたり、自分の教育が行き届いているようで満足でもあり、物足りなくもあったりする。
「今年もそうすりゃいいじゃねぇですかぃ」
「とっつぁんに聞いたら許してくれなくてさぁ。ほら、栗子ちゃんが今年はいるじゃん? 学内ソロコンが近いから、栗子ちゃんのために貸し切りにしてて」
「ソロコン出るのはあの娘だけじゃねーだろうに」
 昼食の間終始眉を寄せていた土方が、とん、と丼を置いた。マヨの一滴も残さないあたり、さすがである。
「そうそう、総悟だって出るんだろ? 一年は強制参加なところがあるし。伴奏決まったのか?」
「いや、まだですけど」
「お妙さんに頼んでみようか。な、それがいい!」
 沖田の伴奏にかこつけて、意中の人と仲良くなりたいのが顔どころか体中に書いてある。子はかすがい、という奴だ。子じゃないけど。
「引き受けてくれるわけねーだろ。それ以前に、ピアノ巧いのかあの女」
「確か、専攻はフルートですよね」
「お妙さんならきっと上手さ、多分!」
「多分かよ」
 冷静に土方はツッコむ。彼女の腕前がどれほどのものか、知らないのは沖田もそうだが頼んでみようかなぁと空っぽの皿をつつきながら考える。無駄だとは思うが、近藤の願いなら考えないでもない。
「んで、それはさておき休みはどーすんだ」
「伊東さんちのスタジオはどうだろう?」
「アイツに頼むのかよ」
「値引きなんて聞いてくれないと思いますよ?」
「え、そうかな」
「当たり前だろ。そういう馴れ合いをする奴じゃねぇぞ」
「でも、場所の確保はさせてくれそうじゃん」
「まぁ、それは……」
 多分散々勿体ぶった挙げ句、土方あたりは無理難題を押しつけられそうだがそれはそれである。じゃぁ話してみて、スタジオ代は四人で割り勘、と進む話に、沖田は「はーい」と手を挙げた。
「俺、その日用事ありやすから。人数に入れないでくだせぇ」
「え、なになにっ?」
 近藤の目が途端輝いた。身を乗り出すついでにテーブルにぶつかって、きつねうどんがこぼれそうな勢いである。
「デート、デートなのか総悟っ? どこのお嬢さんとだ、俺の知ってる人か?」
「残念ながら違いやす」
「何だよ勿体ぶらないで正直に言えよー」
「だから違うって」
「何かあるのか?」
 食後の一服とばかりにタバコを口にくわえて、土方が問う。近藤がまた無駄に妄想を繰り広げるだろうことを予測しながらも沖田は、秘密でさぁ、と笑ってみせた。


 ちょうど、一年前の事だ。
 進路をこの音大に定めたのは、ひとえに近藤がいたからに他ならない。土方も山崎もいて、自分だけ別の大学というのは何だか悔しい。偏差値的にはもっと上の大学を選べたとしてもだ。
 自分の受験でもないのに(いや、だからこそか)晴れますようにとてるてる坊主を量産してくれた姉と今冬のおかげで、入試当日は暖かい晴天に見舞われた。寒くないようにと、もこもこ着せられたコートやらマフラーやら毛糸の帽子やらが暑いくらいだ。
 どうやら運も味方してくれたらしい、暖房の入る部屋で沖田はぼんやりと時間が来るのを待っていた。周りでは、まだ諦めのつかない受験生がテキストを開いたり、ノートにかじりついたりしている。
「まぁ、無駄な悪足掻きしちゃって」
 わざと聞こえるように言えば、周囲の学ランやブレザーの肩がびくっと跳ね上がった。ついでに幾つか、敵意の籠もった視線を感じたが、そんなものに恐れ入る沖田ではない。
 第一付け焼き刃で何ができるものか。高校での授業をばっちり睡眠学習の場にしてしまうほど要領のいい沖田はそう思う。辺りに知られたら、それこそ抹殺を企まれそうな事実である。
 とりあえず、眠くなりそうだ。あくびをかみ殺しているうちに、時計の針は定められた時を刻んだ。
 がらり、と教室前方の引き戸が開く。教室中の視線が、そちらへと向いた。入ってきたのは、薄茶の長い髪の男と、その後ろから目つきの悪い眼帯の男と、もう一人。




                                     ~続く~
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by wakame81 | 2010-01-31 19:31 | 小説:音大パロ  

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