お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

Star Puzzle March:4

これでラストー。ここからしんみりパートに……って本当何で???







「そろそろ時間だなー」
 腕時計を見ながら、銀八は呟く。
授業の終わりを告げるチャイムが鳴るまであと僅か、なのだがバーベキューはやっと最後のシメに入ったところだ。休み時間も含めてあと20分足らず、片付けまで終わる訳がない。次の授業はみんなサボリか、と、受験生を受け持つ教師にあるまじきことをぼんやりと考える。
「新八君、確か買い出しメモには『そば』と書いておいたはずだが」
「だから、焼きそばですよ」
「いや、そばと言ったら普通は日本そばだろう。何故ないのだ」
「そばはバーベキューではムリでしょう。それとも、まさか鉄板で焼く気だったんですか?」
「いや、鍋でお湯を沸かして茹でようと」
「次の調理実習でやってください」
「ヅラー、焼きそばに不満なら私が全部食べてやるネ!」
「いや、マヨにつけたほうが桂も食べられるだろ」
「そんなゲテ食いはアンタ一人にしときなせぇ。勿体ないお化けが出やすぜ」
「というか、土方君はこっちに来ないでくれるかね」
「どーいう意味だ伊東ぉぉっ」
「こっちはもう焼き上がりましたよー」
「ありがとうございますっ、お妙さぁぁーーーーん(はぁと)」
「貴様に食わすお妙ちゃんの焼きそばはないっ」どげしっ。
「いやむしろ、近藤さんと九兵衛さんの二人で食べちゃってください」
「あら新ちゃん、何か?」
 賑やかねーと、一人で焼きそば宇治銀時Verを作りながら呟く。土方の黄色い悪夢と同列に並べられるのは不愉快だが、みんな悪寒を感じて近寄ってこない。
 桂なら、呼べばくるかなーと思うのだが、あの輪の中から引っ張り出すつもりもなかった。
「銀八先生ー(はぁと) ほら、焼きそばさっちゃんスペシャルできあがりましたよぉっ。私の愛のように焼きそばと絡まる納豆のコラボレーション、ぜひ味わってぇ。なんだったら私ごとぉぉぉ(はぁと)」
 ぽいっとすれ違いざまに眼鏡を跳ね飛ばしてやったら、さっちゃんは銀八を素通りして桜の木に納豆まみれの焼きそばを食わせていた。
 輪の中心で、黒く長い髪が冷たい風に揺れる。焼きそばの中のたこさんウィンナーを神楽に譲っている。エリザベスが『もっとちゃんと食べなきゃダメですよ』と、皿を焼きそばでてんこもりにしている。マヨを勧める土方を伊東が止め、その隙に沖田が土方の皿にタバスコを振りかけている。山崎が桂に話しかけようとして、沖田他に見事に邪魔されている。やっと戻って来た長谷川が、桂に焼きそばをねだろうとし、屁怒絽が親切にも自分の分を分けようとして腰を抜かされている。
 お妙もいて、近藤もいて、九兵衛もいて、たまもいて、キャサリンもいて、阿音百音もいて、おりょうもいて、ハム子とその彼氏のハムもいて。
「何黄昏れてんですか」
 新聞紙引いて地べたに腰を下ろす銀八の上から、声とともにコップが差し出された。少しばかり呆れたような、けれど仕方ないなぁというような笑みを、ぼんやりと見上げる。
 初めて会った時は、もう少し若かった。昔の掴み所のない、だらしのない行動に本気で呆れた目を向けられたこともあったけれど、その頃と大して変わらない歳の癖に今そんな風に笑えるのは、一度大人になった記憶を新八もまた持っているからだろう。
「んー。飲み物サンキュ……てこれお茶じゃん」
「当たり前ですよ。相変わらずそんな、血糖値上がるようなモノ飲んで。どうせまた、糖尿一歩手前なんでしょ」
「今は医学が発達してっからいーんだよ」
「医学が発達しても、どうしようもないものはあるでしょう。第一今の先生は、元英雄じゃなくてただのオッサンですから」
「お前も口が達者になったね」
「師匠が師匠ですからね」
 同じようにお茶の入ったコップを持ちながら、新八は担任の隣に腰を下ろす。新聞紙はないから、お尻が土につかないように宙に浮かせながら。
「お前何そのウンコ座り」
「モノ食ってる時に、よくそんな単語口にできますねアンタ」
「あっちに混ざんなくていいの?」
 楽しそーじゃん。
 百年以上の時と、長い眠りを隔てても変わらない、気怠げな声に新八は笑う。懐かしいその声音を、とても嬉しく思うし、時々ひどく淋しく感じる。
「僕は、たぶんいつでも混ざれますから。先生こそ、行かないんですか?」
「今行ったらボツリヌス菌以上の毒物食わされんじゃん。ぜってーヤだ」
「天の邪鬼も変わりませんねー」
 聞き流せばいいのに、思わず隣に顔を向けてしまった。眼鏡の向こうの黒い目は視線だけこっちに流れて、くすりと笑う。
「桂さんや高杉さんや坂本先生ほどじゃないけど、僕だってずっと、そばにいたんですから」
「怖いなー。バカ本と晋ちゃんじゃないけど、昔のこと知ってるヤツって」
 誤魔化すようにおどけた言葉は、吹いてきた風に紛れて消えた。輪の中で、また髪が揺れる。人と人の合間からも、自分にはそれが見える。笑い声が、波のように重なる。
 ずっと夢見てきたはずの光景なのに、何度目にしても足りない。
「遠慮すること、ないんじゃないですか?」
「……そーゆーんじゃねぇの」
 ついた嘘を新八は見抜いているだろうに、何も追求してこない。
「二度もないから、奇跡っていうんじゃん」

 あの時。
 桂の手を掴めたのが最終的に自分だったことは、とても幸運な偶然だと思ってる。
 ずっと桂を支えてきた奴でもよかった。惜しみない援助を送り続けてきた男でもよかった。最後に力強い盟友となった男でもよかった。不器用ながら変わらぬ士道を抱き続けた男でもよかった。ただがむしゃらに桂に向かってきた少年でもよかった。ずっと桂の手を引っ張り続けてきた少女の手でもよかった。何も特別な力もないくせに、桂の友人であり続けた男でもよかった。
 敵の手に、落ちるかもしれなかった。その為の罠など数え切れないほどあった。
 道を違え、夢を絶ち切り、それでも始まりとそして目指す場所は変わらず同じだったあの男が、いなくならなければ、きっと。自分の手には。

「奇跡、なんかじゃないですよ」
 酒も入ってないのにぐるぐる落ち続けていた思考は、その一言で引き戻される。見上げれば新八も、輪の中を眩しそうに見ていた。
「銀さんが桂さんと紡いできたモノは、そんな簡単なもんじゃないですよ」
「だったら何だよ。必然とかいうつもりー?」
 それはない。だって、自分は一度、あの手を振り解いて逃げたのだ。それをもう一度桂が自分から望んでくれたなんて、どれだけ都合のいい話だというのだ。週刊誌の裏によくある、ツボとかお守りとかブレスレットとかの広告よりも眉唾だ。
「でも、桂さんは幸せでしたよ」
 憶測よりももっと強く、新八は言い切る。まなざしは少しだけ遠く、けれどはっきりとした口調で。
「でなけりゃ、最期にあんな安らかな顔なんてできませんよ」
 鼻をずずっと鳴らしたのは、冷たい風のせい、ばかりではないのだろう。寒さから身を守るように、銀八は膝を抱えた腕の中に首を竦めて目を閉じて。
 そして、瞼の裏に夢よりも遠い記憶を描く。
「置いてったのに?」
「置いてっても」
「それも二度目だよ?」
「そうでしたね」
 それでも、と笑うように声は揺れた。
「僕はちゃんと、見届けたんですから」
 ゆっくりと、目を開けた。
 焼きそばはいつの間にか食べ尽くされたのか。皿やコップを集め、鉄板を下ろしている生徒達の姿が目に入る。真ん中で指示を出しているのは、他でもないクラス委員長で。
「せんせーいっ」
 呼ぶ声は、琥珀色のまなざしは、しっかりと銀八に向けられている。
「しっかりしてくださいよ、銀さん」
 とん、と背中を押された。遠く過ぎ去った日の記憶と重なって、知らず笑みがこぼれ落ちる。
「片付けぐらい、手伝ってください」
「お前は担任をこき使うつもりか。立ってる者は親でも使えって言っても、先生座ってますから」
「働かざる者食うべからずです」
 きっぱりと言い切る声に、やれやれと呟きながら立ち上がる。
 あと三ヶ月。
 そうすれば、彼は自分の庇護から離れ、一人の大人として立つようになる。
 そうしたら。


「本腰入れて邪魔してやるから覚悟しとけ」
「だーから他クラスの人は自分とこに帰りなさいっ」




                       ~Fin~
[PR]

by wakame81 | 2010-01-13 23:17 | 小説。  

<< 第191話。 Star Puzzle Mar... >>