お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

かみさまのいうとおり:7

やっとこれで終わりです。
すいません反省してきますー←猿でもできる。







『桂さん、ご無事で』
「うむ。おかえりエリザベス。ご苦労だったな」
『とっても苦労でした、誰かのせいで』
「おい、その誰かって俺のことですか。電波大王の代役を務めた俺に何のねぎらいもなしですか」
 抗議の声は、きれいにスルーされた。夜目にも白いふわふわ頭が、同じく白いお化けペンギンに手を伸ばし、笑みすら浮かべている。個人的に、すっごい嫌な図だ。
『会合の詳細は、こちらに記してあります。いずれ、坂本さんからも文が届くかと』
「そうか。わざわざ記録まで取っておいてくれたのだな。さすがはエリザベス」
 坂田銀時の外見とエリザベスが仲のいいことだけでなく、居心地の悪さを感じる。もう帰っていいかなジャンプ買いに行っていいかな、あれでも帰るって万事屋と桂の隠れ屋と、どっちに帰ればいいんだ?と首を捻っていたら。
「銀時」
 自分の声で自分の名前を呼ばれると、とっても違和感がある。
「リーダーや新八君も心配している。ひとまず万事屋に戻ろう」
 ぶーたれるふりをして、顔ごと目を逸らす。鏡で面と向かっても、ここまでまっすぐに自分の顔を見たことはなかった。白血球王は……いや、アレは俺であって俺でないし。
「えー、俺ジャンプ買わないとなんですけど」
「だったら、俺も付き合おう。エリザベスは同志達へのお土産を置いたら、万事屋へ向かってくれ。リーダー達へのお土産は忘れていまいな」
『抜かりはありません』
「よし」
 頷いて、桂(in銀時)はさっさと歩き出す。真選組に見つからないようお気をつけて、と言葉を残してエリザベスは隠れ屋への道を辿り始めた。数歩先で、見知ったはんてんをまとった背中が立ち止まる。
「銀時?」
「……へいへい」
 眼を伏せて頭をぼりぼりと掻いて、後を追う。掻きむしる指に髪は絡まってくれず、流れ落ちていく違和感にまだ慣れないでいる。
 ジャンプをコンビニで買い込んで、さて読もうとしたら歩き読みは危ないと取り上げられた。文句を言おうとしても、いつもと僅かに高さの違う眼に、それも自分のものに、直視できないでいる。よくコイツは物怖じせずまっすぐこっちを見れるなヅラだからか、と独り言のように呟いて、自分が(今は桂のものである)坂田銀時の顔を見られないのは、それが理由じゃないと悟っていた。
「どうした、銀時。ジャンプを読めないことをそんなに拗ねずともよいではないか」
「拗ねんの当たり前だろ。世の中の楽しみが奪われたも当然なんだぞ」
「甘味のことは別に良いらしいな。良い心がけだ、そうやって摂生すれば糖尿にも悩まされずに済むぞ。後は適度な運動だな。そんなあなたに御朗報です、今攘夷志士になると、真選組との追いかけっこがついてくる! 日頃の運動不足解消にぴったりです。さぁ、今すぐご応募を」
「誰がするか。てかどこに応募すんだよ、どこにも応募テロップ出てねーだろ」
「うむ。これが原作やアニメだったら、出してくれたものを。恨むなら文字書きの若布を恨むがいい」
「そーゆー問題か」
 殴ろうとした途端、桂(in銀時)の眼がこっちを向いた。振り上げられた手が咄嗟に、茶色の眼と額をべちっと叩く。
「……銀時、今のはマジ痛い」
「たりめーだろ。ついでに、甘いもんは別腹だからね。ジャンプが無くても生きていけないけど、糖分も無かったら生きていけないからね銀さんは」
「自慢そうに言うことじゃないぞ、どうせだったら攘夷と」
「言えるかぁぁっ」
 食器の鳴る音、テレビの音、母に今日あったことを楽しそうに話す声。長屋通りの一家団欒の音は、壁に遮られて遠い。日が暮れて強くなった風が戸板を揺すり、桶を転がす音だけが、二人の話す言葉を申し訳程度に遮る。かぶき町の灯りはまだ見えない。
「そっちは大変だったようだな。まぁ江戸から遠いところだし。だが良い温泉だったのだろう」
「何お前、行ったことあんの?」
「いや、坂本に聞いただけだが。それでどうだった。温泉の具合は」
「……まー、悪くはなかったかな」
「そうか。さすがは坂本だな。他の者はなかなか気づかないような良いものを探してくるのが相変わらず上手い」
 その坂本から、深く刺さるようなまなざしを受けたのはつい26時間前のことだ。坂本本人に視線を突き刺したつもりはないだろう。羨ましいと言いながら、羨望も嫉妬も責める意志すら込められていなかった。
 だからこそ、あのまなざしは銀時の心臓に深く刺さったまま、抜ける素振りすらない。
「万事屋の方も、なかなか楽しかったぞ」
「そりゃ、ようござんしたねー。でも言っとくけど、楽しかったからって苦労してねーわけじゃ」
「うん」
 視線は、手元のジャンプに注がれていた。その手を覆うのは、赤茶の手袋だ。安物で、ほつれかけそうなのを繕って誤魔化して、ずっと使い続けている。はんてんもマフラーも、同じものを何年も使っている。
「お前はかぶき町にいっぱい知り合いがいるな」
「まぁ、かぶき町で店構えてっからね」
「夕刻にちょっと道を歩くと、寄っていかないかと名指しで声をかけられる」
「向こうはそれがお仕事だからね」
「お妙殿やたま殿が、差し入れを持ってきてくれたぞ」
「げ。たまはともかくお妙までかよ。ちゃんと処理したろーな」
「真選組の近藤も、お妙殿と一緒にやってきたし」
「や、アレはお妙のストーカーですから」
「さっさんも来たぞ。捕縛術の新しい技を教えてくれた」
「さっちゃんの捕縛術って、それひょっとして緊縛とかじゃ」
「そういう名だと、沖田が言っていたな」
「おいおいおいぃぃっ、あのどS王子にそれ見せちゃったわけぇっ? どんな噂広められっかたまったもんじゃねーよっ」
「あと土方には、入れ替わってるのを見破られそうになった」
「は? なんで土方が」
「さぁ」
 くすくす、と笑い声を漏らす。顔を上げれば、怒ったように眉を寄せた桂小太郎(中身は銀時)の顔が目に入った。怒ってるのではなく考え込んでいるのだと、判るのは自分自身のことだからだろうか、それとも中身が銀時だからだろうか。
 やっとこっちを向いた、と口に出しては言わない。言えばまた銀時は、視線をそらしてしまう。まだ怒ってるからではないことは、桂はよく判っていた。自分も、もう怒ってはいない。
 さぁ、仲直りしよう。
「仕事はなくとも、人の輪が大きくなっていくことが、子供たちには大事なのだな」
 笑うと、銀時ははっと眼を見開いた。事の始まりを、やっと思い出した。
「リーダーを養うのが大変なら、少しばかり援助してもいいぞ。まぁ俺も身内があり、一党を率い、日本の行く末を背負う身。おやつ程度しか融通できないだろうが。それでも少しはリーダーの腹の足しにはなろう。どうだ、妙案とは思わぬか」
「いやそれ、俺が情けないから止めて」
 ただでさえ、と銀時は、桂の小さな口の中でもごもごと呟く。返事をじっと待っていると、や、何でもないと早口に言われた。
「何だ、坂本あたりに何か言われたか」
「………………。」
「何となく、そんな気がした」
 眼を細める姿を、直視できない。さっきまでの後ろめたさとは違う。その笑みが、遠い遠い思い出と重なる。
 重ねて見るのは初めてじゃない。けれど、はっきりと「父親」を見たのは、初めてだと思う。
 ほんの数日のくせにこんな顔しやがって、と。ちょっとばっかり悔しくて。
「……言われたわけじゃ、ねーけど。」
「なら、良いではないか」
 そして、こそばゆい。
「……桂。」
「桂じゃない、いやなくない桂だ。」
 名を呼んで答えるのは坂田銀時の外見、けれど銀時の眼に写るのは見紛うことないまっすぐな魂だった。人の気配は先ほどから途絶えた。そっと、頬に手を伸ばす。指の背中にふわふわの毛が触れる。いつもは小憎ったらしい落ち着きのない髪が、何だかいとおしく感じた。
「……こら。」
 近づけようとした唇は、その半分も踏破できないうちに止められた。間近で茶の瞳が細められる。
「何だ往来で」
 そういや自分の声って、低く潜めると無駄に色気があるって言われたな。言ったのは坂本で、その時は何をアホなことをと笑い飛ばしたのだった。今こうやって、実感するとは思わなかった。
「……悪ぃ、なんかしたくなった」
 戻ったら今度意識してみよう。そんなことを考えながら、ふわふわの毛から覗く耳に囁く。自分の好きな、桂のやわらかな声音は再現できただろうか。
「罰当たり者が。祟られるだろう」
「たたっ……?」
 そこでやっと、銀時は今自分がどこにいるのか気づいた。すぐ側の、一段高くなったところに小さな木造の祠がある。背を向けたそれの向こうには闇に沈むように真っ赤な鳥居と旗が連なっていて、狐の石像が見えなくてもそこが何かを顕していた。
 ここで賑やかに熊手が売られていたのは、ほんの数日前の事だ。
「あー、……嫌?」
 場所は確かにアレだが、なら移動しても、と言外に滲ませる。桂はそれを正確に読み取って、ゆっくりと口の端を持ち上げた。
「 今この体だと、どちらが上になるんだ?」
「…………あ。」
「今日は、これくらいにしておけ」
 いたずらに、眼が笑う。先ほど詰め損ねた距離が消え、柔らかい感触が唇に触れた。


 翌日。午前5時40分。
「うーー…………」
 何となく催すモノを感じて、眼を開ける。見慣れた襖、見慣れた天井、見慣れたくなかった白ペンギンの蒲団をかぶった姿が眼に入ってまだ悪夢が終わんねーのかよ…と呟く。それにしてもなんか近い。昨日、坂田家でご飯を食べて新八を返して神楽が押し入れに引っ込んで男三人で和室に雑魚寝になったときは、エリザベスの側に寝る権利を桂(in銀時)が主張したために、自分は一番端に横になったはずだ。
 身体を起こす。部屋にいるのはどうやら自分とエリザベスだけのようだ。この時間ならアレか、と寒さに身震いし、伸びをして便所に向かう。帰りに台所によって冷蔵庫を覗いて、それからふ、と玄関へ向かった。
 鍵は無論開いている。からりと音を立ててドアを開け、屋根の上を見上げる。
「……お前そこホント大好きだよねー。アレか、何とかと煙は高いところが好きとかいうヤツか」
「何とかじゃない桂だ。おはよう銀時」
 夏でもあるまいし、夜明けどころか闇を払うのにすらまだ時間が早い。ほんの僅か、濃藍から青になろうとしている空から視線を下ろし、桂が応じた。風に、黒く長い髪がたなびいている。
「何だよ早ぇーじゃん」
「ふと眼が醒めたのでな。登ってみた」
「登ってみた、じゃねーよ。今から夜明けを待つ気かよ。風邪引くだろーってお前は引かない特異体質だったんだっけ。てか、目立つだろ。戻ったんならちょっとは忍べやコラ」
 自分もよじ登って、ぽかりと殴る。握りしめた指にかすかに触れた感触は滑らかで、とても懐かしく、心地よい。
「つーか、曇ってんじゃん。今日は日の出見れねんじゃね?」
「風が強いからな。ひょっとしたら東の空くらい吹き飛ばしてくれるやもしれん」
「いやムリだから。風向き考えろよ、東の方に向かって吹いてんだろ」
「あ、そうか」
 ぽん、と手を打つ。その手首の細さも、普段取り澄ましているくせに時折見せる子供じみた仕草も、よく知っている。銀時はあくびを一つしてから髪に手をやった。掻きむしれば引っかかるのは生まれてからずっと馴染んできた感触だ。
 なーにがお願い事を叶えるお稲荷さんだ。売り言葉に買い言葉というものまで頼んでないのにご丁寧に拾いやがって。鳳様を祀るあの神社の、大本がお稲荷さんだとは聞くが主祭神の座を譲ってモーロクしたんじゃねぇのか。あ、これは出来心なんで祟らないでください。
「ふぇっくしゅっ」
「そんな軽装でいるからだ」
「お前が俺のはんてん持ってったんでしょーが。返せ」
 近づくついでに抱き寄せた。滑らかな髪に顔をうずめる。さらさらの感触を何度も羨んだ。けれど、桂の身体を奪ってまで欲しいわけじゃない。自分のものでは、物足りない。
 今までの違和感を埋めるように、その匂いを肺の奥まで吸い込んだ。


「時に銀時」
「んー?」
「お前、会合に出て我が党の機密を知ったわけだな」
「え、何その流れ」
「秘密を外部に漏らす訳にはいかん。かといって、お前を斬る訳にもいかん。この矛盾を解消するには、お前が我が党に入り俺の左腕として」どげし。
「あーもうせっかくの雰囲気が台無しだよこのぼけヅラっ」



                     ~Fin~
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by wakame81 | 2010-01-04 22:49 | 小説。  

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