お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

かみさまのいうとおり:1

12月の小説更新が全くできてないことにちょっと危機感覚えました。「少年よ、セカイ~」は、ほとんど11月の更新ですので。
まだあと半分近く残ってるのですが、とりあえずイントロだけ。

リク「銀さんと桂さんの中身が入れ替わっちゃう話。新八神楽真選組マダオも巻き込んで、コメディたっぷり銀桂、時々沖桂」








 十一月某日、深夜22時過ぎ。
 小さく並ぶ岩の上に腰を下ろして、銀時は深ーいため息をついた。白に近いほどの薄紫の着物がよじれるが、知ったことではない。そもそもあれだけ歩き回って働いて、皺にならない方がどうかしている。
 疲れた。めっちゃ疲れた。幾ら酉の市だからって、一応週半ばの平日なのだ。いくらこの神社がかぶき町の氏神様とはいえ、ここまで混むことはあるまい。
「つかさー、たかが熊手じゃん。今時百均でも売ってんじゃん。それがちょっと、おかめやら小判やら何やらくっつけて派手にしてさ、ついでにでかいってだけじゃん。それをわざわざ買いにきてさ、ついでに参拝してくのはまだいいよ。何だってここで飲んでくわけ。境内でしょーが。飲み屋じゃねーんだから。どうせこの後飲み屋で二次会やるんだから、最初からそっち行けっての」
 忙しさのピークはとっくに過ぎた。山車や神輿はないものの、一種のお祭り状態である酉の市も、さすがに神社で長々と宴会をやっているわけにもいかない。銀時の手伝っている(手伝わされている)出店を始め、あちこちの屋台はもう店じまいの準備に取りかかっている。屋台の通りから外れた、赤い鳥居の連なる小さな祠の側だ。銀時一人さぼったところで、普通なら気づかれるはずもない。のだが。
「こら、何をさぼっている」
 咎める声は、一息つく間もなく降ってきた。顔を上げるでもなく、誰か判る。厄介なヤツがやってきた。めんどくさくて気の抜けた返事だけを返すと、すぐ隣にビールケースが置かれた。それも二つだ。空とはいえ、いっぺんに持ってきたのか。
「まだ片付けは済んでおらんぞ。とっとと手伝えパー子」
「パー子さんは開店休業中でーす」
「ふざけるな」
 ぽかりと、拳骨が降ってくる。大して力も込めてない上にウィッグのおかげで全然痛くはないが、わざと恨めしそうな目で見上げてやった。
「まだ就業時間中だ。タイムカードを押すまでが仕事だろうが」
「何その言い回し。おうちに帰るまでが遠足ですをもじって上手く言ったつもり? 全然上手くねーんだよそのまんまじゃねーか」
「そのまんま、むしろ事実だ。ほら、働かんと終わらんぞ」
 夏なら虫でも寄ってきそうな小さな豆電球の下、ゆるく束ねられた黒い髪は美しく艶を放つ。薄く塗られた白粉も、引かれた紅も滲む様子はなく、今日の大忙しの原因の一つを銀時は見た気がした。
「ヅラ子、あとよろしく。パー子はもうダメだわー」
「ダメじゃない。ほら立て、立つんだパー子」
「そんな、丹下段平風に言ってもむりー」
「無理じゃない。そんなだから、リーダーに満足にものを食べさせてやれんのだ。行くぞ」
 言うなり、桂は銀時の耳のそばの髪を引っ張った。残念なことにちょうどウィッグと地毛の境目だ。止めろ痛い引っ張んなと騒いでも、聞く耳も持たない。
「だーから離せってのっ。これじゃ動けねーだろっ」
「やっと働く気になったか。ならこれを持って行け」
 と指し示されたのは、さっき桂が持ってきたビールケースかける2だ。空っぽとはいえ、当然重い。
「何だその顔は」
「パー子もう糖分切れー。せめて何か食わして」
 いつもなら、仕方ないとんまい棒チョコバーでも取り出すはずが、今日ばかりは厳しい顔で首を振った。
「えー何で」
「つまみ食いばかりして、リーダーに申し訳ないとは思わないのか。かわいそうに、今頃食べるものもなくひもじい思いをしているやもしれんというのに」
「ちょ、待てよ。さっきから何神楽のことばっかり」
「聞いたぞ。僅かに残った金を持ち出して、パチンコですったそうだな」
 抑える間もなくゲ、という声は口から漏れ出た。普段は垂れ気味の切れ長の眼が、怖いほど吊り上がる。
「まさかとは思ったが、本当だったのか。育ち盛りのリーダーを飢えさせて、何のつもりだ」
「待て、話を聞けっての。持ち出したつってもちょっとだけだぞ? あれっぽっちじゃ米もちょっとしか買えねーの。だから、増やそうとしただけだろ」
「そんな言い訳が通ると思うな。リーダーもかわいそうに。ちょっとは甲斐性というものを身につけないか」
 くどくど言われ、さすがの銀時も我慢が聞かなくなってきた。桂から食べ物をせしめるためにオーバーに泣きついただろう神楽も神楽だが、鵜呑みにするコイツもコイツだ。
「おめーはアイツの胃袋を熟知してねーから言えるんだよ。何だよ神楽神楽って、たまにしか顔出さねー親戚か、かわいいとこだけ見てお小遣いやって満足して、普段の小生意気さを見ようともしねージジババか」
「親戚でもジジババでもない、桂だ。飢えさせているのは事実だろうが。俺がお前の立場だったら、決してこんな目には遭わせぬぞ」
「偉そーに言いやがって。あーそりゃそうでしょーよ、お前は甲斐性ありまくりだもんねー、攘夷の傍らオカマのカッコウしてこんな仕事までしてるもんねー。仕事選べよ、かわいい部下達が泣いてんだろ」
「そうでもない。ヅラ子のバイトは人気でな、日に必ず誰かは顔を出すほどだ」
「アホかおめーらはっ。俺が党員だったらめっちゃイヤだぞんーな党首。つーか絶対やらねーぞ俺だったらっ」
「そうやって我が侭言うからリーダーが飢えるのだろうが」
「あーそうかよ、じゃぁおめーがやれよ俺の苦労も知らねーでっ」
「望むところだっ」
 その後はもう険悪な雰囲気で、一緒に屋台を出していたかまっ娘の面々がおろおろと心配するほどだった。空気を変えようと姐さんの一人が、「ここの祠のお稲荷さんがね、何でも油揚げをお供えするとお願い事を叶えてくれるそうで、実際にお参りした人が暗闇にぼぅっと光ってケケケケケ…と笑うお稲荷さんの像を」とかいう、怪談めいたことを言い出したものだからさっさと帰ってしまった。
 元凶の神楽はとっくに押入の中で、ケチった光熱費で当然家の中は寒い。暗闇の中蒲団に潜り込んで、本当なら今頃と思っても、後の祭りというやつだとはどうしても認めたくなかった。


 翌日。午前5時半。
 空がまだ白む兆しを見せていない頃、いつものように桂は目を覚ました。顔に当たる冷たい空気を感じて、蒲団の中でぶるっと震える。起きねばな、と思うのだが、この時期はいつもいつも、誘惑との戦いだ。例によってやることリストを思い浮かべ、それを二度ほろ繰り返して、えいやっと勢いをつけて身体を起こして。
「あり?」
 そこが今寝床にしている隠れ屋でないことに、やっと気づく。見覚えはありまくり、自分はいつの間に万事屋に来たのだろう。
「銀時?」
 彼の寝室だというのに蒲団は一組で、そして主人の姿はない。便所だろうかとぼんやりと考え、肌寒さに身を震わせる。自分の服を探すが、見当たらない。首を傾げながら、勝手知ったるとばかりに綿入れを取り出した。
 銀時の元にいるのなら、アレはないだろう。なら、時間に余裕はある。
「一宿の恩、というからな」
 便所に寄ってから台所へと向かい、冷蔵庫を覗く。お釜にご飯の残りが少し、味噌と干涸らびかけた大根が半分。雑炊ならたっぷり食べられるだろうと、鍋を取り出す。それにしても。
「厠にもいなかったし、どこへ行ったんだか銀時は」
 少しむくれた顔で呟く桂は、暗い中洗面所の鏡に映ったのがよく見知った白銀のふわふわ頭だったことに気づいていない。


 午前6時半。
「かーつらぁぁぁぁっ!!」 ちゅどーん。
「どわぁぁぁぁあっ!?」
 砲撃に飛び起きた。何だあれひょっとしてこれあの時か、てか夢、万事屋銀ちゃんとこの砲撃とどっちが夢っ?と混乱している銀時の目の前に、飛び込んで来たのはバズーカを放り捨てた薄緑の袴の少年だった。それも、思いっきり見覚えがある。
「沖田っ?」
「もらったぁぁぁっ」
 やる気のない目をきらきらとさせて、抜いた白刃が迫る。頭で考えるより先に身体が避けた。さらに後を追われる。というか、何で沖田が万事屋を襲撃して、自分が斬られそうにならなきゃいけないのか。
「逃げんじゃねぇ、かーつらぁっ」
「って」
 ヅラ?どこに、と視線を巡らす。長い黒髪が目の端に映るが身体が見えない。とにかくここにいるのかお前のせいかっと怒鳴る余裕もない。逃げ回る銀時の手が寝床の側にあった刀を掴んだ。
「つーか、止まりやがれっ」
 判断の利かない頭で手加減できる相手ではない。薙いだ一撃を刀で受けるも威力を流し損ねた子供の身体が吹っ飛び、障子に激突する。
「あのね、総一郎くん。これはないんじゃない? 俺とお前の仲で俺んち襲撃って」
「俺とてめーとの仲だから、襲うんじゃねーかぃ」
 いつもより言葉遣いがぞんざいすぎる。それでも嬉しそうに笑って、沖田は立ち上がった。
「今日は、死合ってくれる気になったんか。珍しーじゃねぇか桂」
「死合うってね」
 ほらヅラ君呼んでるよ、と辺りを見回すが、やっぱり黒髪だけで本人がいない。あれ?と眉を寄せて沖田を見ると、赤茶の瞳はまっすぐこっちを捉えていた。
「あれ?」
「何があれ?でぃ。今更やる気なしってのはなしだぜ」
「いや、その」
 ヅラが、と言おうとした口は、途中で言葉を見失った。
 沖田の後ろ、外れた障子の向こうの窓ガラスに映っているのはたった一人、黒い髪を流して刀を持った男だけだ。銀時が首を傾けると、男も傾ける。銀時が手を振ると、男も手を振る。隣にいるはずの自分の姿がない。というより。
「……まさか」
 試しに黒髪を引っ張ってみると、痛みを感じたのはまごう事なき自分の頭で。
「え、ちょ、うそぉぉぉぉぉぉっ!?」
「何がうそーーーでぃ。ほら、行きやすぜっ」
 しゃがみ込んだ姿勢からの動きが速い。もっと衝撃の事実に気を取られていた銀時は反応しきれなかった。初撃をかろうじてかわすが、次が逃げ切れない。そこへ。
 どかーーーーん。
『桂さん、大丈夫ですかっ?』
 口からバズーカ突き出して飛び込んできたのは白ペンギンだ。砲撃の隙に沖田の間合いから転がるように離れる。もうもうと煙があがる向こうで、剣気が不意に収まった。
「ちぇーっ、いいとこだったのに」
『ふざけるな、一昨日来やがれ芋侍』
「うっせーよオバQ」
 小さな金属音を立てて、沖田は刀を納める。銀時との間に転がっていた真選組のバズーカを拾い、肩に担ぐ。
「ま、今日はてめーに刀抜かせただけでよしとするかぁ。腹も減ったし」
「お前も朝飯前かよ。何、軽いジョギングのつもり?」
「俺はいつだって本気でさぁ。そうでねーと、相手してくんねぇくせに」
 楽しそうに眼を細めて、沖田は背を向けた。んじゃまたなーと、左手がひらひらと動く。その後ろで、『がっでむ』と看板を掲げたエリザベスが、等身大ナメクジでも殺しそうな勢いで塩を撒き散らす。
『また、隠れ屋が壊されてしまいましたね。そろそろ潮時では』
「最終的に壊したのはお前だろ。またってことはいつもなのかよ。てゆーかさ」
 ずたぼろになった部屋と、壊れた窓ガラスの向こうの景色を眺める。銀時には見覚えがない。
「俺すら知らないヅラの隠れ屋を、何でアイツが知ってんだよ……っ?」



                         ~続く~
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by wakame81 | 2009-12-31 17:24 | 小説。  

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