お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

少年よセカイを開け:3

はふー。やっとここまでこぎつけました。陰謀からむとやっぱり大変-。







 応えた声に、沖田は目を見開く。口元が弛むのが抑えきれない。
 予想通りだ、ザマァミロだ。浪士どもはまだ自分を取り巻いているというのに、笑いが止まらなくなる。現れたそのたった一人が敵対するか味方に回るかも判らないのに、それだけで身体中に力が漲る。
「本当に来やがったのか」
「言っただろう。全力で貴様を叩っ斬ると。これ以上貴様の好きなようにはさせん」
「俺に会いに来たってのかぃ」
「自惚れるな。斬るためだ」
「周りはそうは見ねぇぜ。どう見ても、そこの仔狗の為にしか見えねぇさ」
 桂が何か口にする前に、周りが吠えた。
「やはりそうなのか、桂っ」
「打倒天人の理想を捨てて無血革命など掲げただけでは飽きたらず、狗などと馴れあおうというのかっ?」
「そこまで堕ちたか、攘夷の暁がっ」
「では聞くが」
 沖田の後ろから静かな声が、凛と響く。高杉はもちろん、喚いていた浪士たちも上げようとしていた声を収めた。
「ターミナルや天人の大使館などを爆破し、犠牲者を出していくことで、望むものは得られるのか」
「当然だっ。地球上にいる天人など、全て皆殺しにしてしまえばいいっ」
「たとえ今この国にいる天人を全て滅ぼしたとしても、彼らの渡航手段を絶つことはできぬ。戦時中よりさらに航行技術は上がっているのだぞ」
「ターミナルも落とされ、来れば命を取られるという場所に誰が好き好んで来ようというのだっ」
「そんな、いつ命を奪われるか判らん国に、しようというのか。江戸の民をそのような場所に住まわせようというのか」
 唾を飛ばすほどの舌鉾が、一瞬止まる。足音を立てず、気配だけが沖田に近づき、そして通り過ぎて前に出る。すぐ前に立っている羽織姿に、沖田もテロリストどもも目を奪われた。背を向けているのに、睨みつけられているような感覚を覚える。うまく呼吸できない。テロリストどもは尚更だろう。
「この国の人間は、天人どもに迎合することを選んだ。かつての戦いで命を懸けた奴らの痛みも、存在すら忘れてな」
 停止した空気を動かしたのは、高杉の声だった。ほっと、周囲が息を吐き出すのを感じ取る。
「だから、どのような恐怖を感じても構わんと?」
「自分で天人どもと共に在ることを選んだんだ。それがどういうことか思い知るのも、自業自得だろうさ」
 桂は何か言おうとしたのだろうか。応える言葉は、そうだそうだと付和雷同する周囲に遮られた。
 まっすぐな琥珀と、押し潰すような深緑の、視線が絡み合う。沖田からは背中しか見えないのに、それがはっきりと判った。
「んなこた関係ねぇ」
 割り込んだ沖田に、桂と高杉以外の視線が向く。わざとかと問いつめたいほどまっすぐにこっちを見ない隻眼を睨みつけて、言葉を続ける。
「てめーらの勝手にはさせねぇ。江戸を騒がす奴らは、俺ら真選組がみんな叩っ斬ってやらぁ」
 抜き身の刀を両手で握り、下方へと下げる。一見無造作に見えるが、次の動作に瞬時に移ることのできる構えに、浪士どもも刀を構えた。桂は動かない。喉を震わせる高杉を、ただ見据えている。
 切っ先を動かして、高杉に向ける。緑色の眼がわずかに動いて、やっとこっちを見た。
「テメェごときに、それができると?」
「やる。やってみせてやらぁ」
 ふ、と、笑いと共に紫煙が吐き出される。視線は再び桂へと向けられた。細められる瞳が何を語るのか、沖田は読むすべを持たない。
 桂は違うのだろうか。
「たった一人に何ができるっ」
「高杉さんの罠にはまった狗が、ぬけぬけとっ」
 吠えるテロリストが、遮るように沖田の前に出る。人の垣根の向こうで高杉は、こっちに背中を向けた。
「待ちや」「高杉っ!」
 鋭い声に、一瞬だけ着流しの背中が立ち止まる。顔の右半分だけがこちらを向く。口の端が持ち上がる。桂が一歩踏み出す、その前には人の壁。
「どけぇっ!」
 壁が揺れる。割れて道を作るかと思われたが、それは期待のみに終わった。
 人垣は、桂と沖田を取り囲むように動いた。ぶっちゃけ邪魔だ。沖田は腰を低く落とした。ちらりと桂を見やる。細い手が刀の柄を握り、る。細い手が刀の柄を握り、まなざしはもういない派手な着流しの背中を追う。
「どけ」
「だ、誰がどくか」
「ならば、押し通るまで」
 言葉と共に動く、その前に沖田は飛び込んだ。てっきり桂が来ると踏んだであろう浪士は、神速を眼で捉えることもできずに倒れる。
「沖田、」
「どかねぇってんならいいさ。どうせ全員捕らえるんだからなっ」
 それが合図のように、向こうも動いた。数こそ多いが向こうの腕はたかが知れたもの、そしてこの狭い廊下では各個撃破してくださいと言ってるようなものだ。
「これが罠かよ、過小評価してくれたもんだなぁっ」
 二人を続けて斬った時だ。不意に敵が退った。その意図を悟る間もなく、壁から白い煙が勢いよく吹き出す。
「っ!」
 とっさに顔を庇う。が、眼を鼻を喉を、強い刺激が刺す。痛みに瞼も開けられない、いやそれ以上に、これが強い毒物のたぐいであれば。
 ぞっとしている場合ではなかった。殺気が間近へと迫る。勘だけで剣を振るい、襲いかかる刃をかわす。
(桂は)
 探れば驚くほど近くにいた。顔のシルエットがおかしい。何とか眼をこじ開けて、その頭につぶらな眼と嘴のついたヘルメットが被せられていることに、声を上げる。
「何だそりゃっ?」
「特注のエリザベスガスマスクだ。欲しがってもやらんぞ」
「てめ、見越してたのかっ?」
「狭い通路の多いホテルで罠を張ることを考えれば、自ずと対策は立つだろう」
 悔しいが、桂の言うとおりだ。かといって沖田の分まで準備する義理も理由もない。
「仕方ねーな、ケチ」
「ケチじゃない、桂だ」
 気配がガスの中へ紛れる。沖田は一番近い殺気へと踊りかかった。一撃で倒し、マスクを奪う。毒があるかは知らないが、少なくともこれ以上のダメージは防げる。
 或いは第二の罠が、と警戒したが、それ以上の仕掛けは来なかった。程なくして沖田は行く手を遮っていた浪士たちをすべて打ち倒す。このまま進むか残りも倒すか、と後ろを振り向き、そして絶句した。
 桂と相対していた浪士がちょうど倒れ伏す。それが、最後の一人だった。そして桂の足下には、沖田が斬った以上の数が床に伏せている。
 桂の動きを感じたのは、ガスが出てきたあの時だけだ。あとは、意識することもなかった。そういえば後ろから斬りかかる奴が殆どいなかったのを思い出す。背後のセンサーに、誰一人引っかかなかったのだ。
 前に進むことだけを考えていた沖田の意識に触れないほど、丁寧にフォローをしていたというのか。
 チン、と、涼やかな音が響く。血を払い、刀が鞘に納められた音だ。は、と我に返り、前を向く。そうだ、高杉を追わないと。
「もう遅い」
 低い声が沖田を止める。
「奴はもう脱出した頃だろう。追っても無駄だ」
 反論しようとして口を開き、けれど言葉を紡ぐこともできなかった。時間はそう経ってはいない、けれど桂が言うならそうなのだと、何故か強く感じられた。
「知ってたくせに、ずいぶんとのんびりしてたもんだなぁ」
 琥珀が鋭く向けられる。責めるようなまなざしに、こちらも刀を納めて両手を挙げた。
 判ってる、沖田がいたからだ。先へ行けと、ここは任せろと言うこともしない沖田のために、足止めを食らわされたのだ。
 舌打ちをうつ。格好悪いどころではない。こうまで無様な姿をさらすことになろうとは。
「……貴様は」
 問う声は低く、糾弾されているように感じる。
「何のために強くなる」
「なんの、って」
「俺を斬り、高杉を狙うことに何の意味を持つ。最強の名が欲しいのか。強者と斬り合うことにそんなに喜びを感じるのか」
 後者の通りだ。けれど、責め立てる目つきに素直に頷くことができなかった。
「それだけじゃねぇや」
「ほう。例えば、護りたいものがある、と」
 反射的に思い浮かんだのは、豪放で人懐こい笑顔だ。
「たりめーだろぃ」
 それを護るためなら自分は何だってできる。強い意志を込めた眼は、けれど桂を唸らすにはまだ足りない。
「なら、いかにしてそれを護る」
「いかに?」
「その、肉体を生命を護れればそれで良いのか。それだけで、その意志は達成されるのか」
「違うってのかよ」
「だとすれば」
 紡ぐ声は、低く深い。海の底のようだ、と思う。
「貴様が俺に追いつくことはなかろうよ」
「んだとぉっ?」
「何のために剣を取る。何のためにその旗はある。身の回りの安寧も良いだろう、だがそれだけならば、貴様等はその程度というだけのことだ」
 声音は静かだというに、打たれた衝撃はとても重かった。言い返す言葉を探して、いや反論したいのかも判らず、ただ沈黙が降りる。
 ゆっくりと息を吐き、去っていこうとする背中を見つめる。小さくなるそれを追う意志すら、根こそぎ奪われたようだった。



                                           ~続く~
[PR]

by wakame81 | 2009-12-03 00:49 | 小説。  

<< 少年よセカイを開け:4 少年よセカイを開け:2 >>