お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

少年よセカイを開け:2

終わりが近いと思ったら、全然終わりませんでした(爆)。全部で4回くらいになるかな?







 偉そうな口利くなぁ。
 本物の田中古兵衛に対する最初の感想は、まずそれだった。
 元々暁党とは、桂一派の中で党方針の穏健派への移行に不満を覚えた連中が離脱して作った党だという。そんな成り立ちがあるなら、桂に対して思うところがあるのは予想のうちだが。まぁ口を開けば、出るわ出るわ、腑抜けただの甘っちょろい理想だの、終いには英雄だというのもただ見栄えがいいだけのお飾りとまで言い放った。それを聞いた途端、沖田の中で何かがふち切れ、思わず刀を奴の目の前に放っていた。
『てめーも名のある人斬りってんなら、抜いてみろよ。それとも、せっかくの脱獄のチャンスも生かせないただの腰抜けかぃ?』
 最強の使い手と呼ばれながらそうは見えない優男の挑発に古兵衛はまんまと乗り、そして敗れた。子供にしか見えない相手に、しかも木刀に対して真剣で挑み倒された男の傷口に、塩を擦り込むのは簡単だった。自分を破った沖田すら手玉にとる実力の持ち主が、桂なのだと。しかもその剣の腕は、桂の力の一端にしか過ぎないのだと。
『そんなことも見抜けねぇ奴が、四大人斬りだとよくも言えたもんだなぁ』
 その一言で、古兵衛は折れた。あっけなかった。まだ、間違えられた田中加兵衛のほうが手強かった。
 沖田の勝手な行動に駆けつけた土方も、決闘を止めることはしなかった。つまり、その程度の奴なのだと、土方自身も見抜いているのだ。
「なのになーんで、勿体ぶるかねぃ。どう思う、ザキ?」
「ちょ、話しかけないでくださいよっ」
 公園のベンチの背中越しに話しかけられ、山崎は小声で怒鳴り返した。すぐに我に返り、手元の通信装置をいじくる。その左手には拾ったボロボロの競馬新聞、けれど旧式のラジオのようなそれがノイズ混じりに呟いているのは、レース結果ではないことを沖田は知っている。
「いい馬来たか? オッサン」
「オッサ……」
 何週間洗っていないのか、汚れて異臭すら放つ服をまとった山崎は一瞬絶句した。そう歳の離れてない沖田にオッサン呼ばわりされる覚えはないと言いたげな顔だ。
「んで、馬は?」
「まだだねー。ずぅっと張ってるんだけど」
「ふーん」
 缶コーヒーを煽るふりをして、沖田は目線を上に上げた。視界に映るのは、向かいに建ち並ぶビルだ。どれもそう高くはない。ここら辺は十年近く前に、古い町並みを壊して再開発の手が入ったところで、それぞれアパートだったり小さな企業の事務所が入っていたりする。うち一つのビルに、テロリストどもが巣くっている。
「テローシュボーシャもバクダーンノバショも、全然かぁ」
「全然だね。当たったら一儲けなんだけどなぁ」
 進展なしである。それでも、別に失望はしない。ターミナル付近の道路工事の車両に見せかけて、爆弾を積み込んだトラックを突っ込ませるという手口が判っただけでも、沖田には充分だ。
「そうだオッサン。空き缶とか集めてねーの? そうならこれやるけど。ゴミ箱まで行くのめんどいし」
「え、くれるんだ? 嬉しいなあ」
 飲み干した缶を手に、ベンチを立つ。しゃがみ込んだままの山崎に近寄り、口端を持ち上げて見せた。
「何で土方さんはためらう」
 囁きに、山崎の頬がかすかに強ばる。受け取り損ねた空き缶が落ち、転がっていく。
「ザキ」
「あ、缶……」
「ザキ」
 視線を逸らそうとして、山崎は失敗した。深くなる笑みに唾を飲み、かすれた声を出す。
「……たれ込みが、ありまして」
「どんな」
「罠、だと」
 告げられた言葉を口の中で繰り返し、眼を瞬かせた。
「誰からそれを」
「監察の情報網は、匿名が許されています」
 それは知っている。だが山崎の眼は沖田にではなく、はためく新聞や遠くへ行ってしまった缶や手元のラジオや近くの木の梢などをさまよう。
「桂、か」
 今度こそ山崎は言葉につまった。風に煽られた新聞が手から飛んでいきそうになる。それを捕まえて煤けた左手に押しつけ、沖田は屈めていた腰を伸ばした。
「んじゃ、これ礼な」
 空き缶を拾いに行き、モーションかけてぶん投げる。取り損ねた山崎の額がカコーンといい音を立てたところまで見届けて、沖田はそこから離れた。
「桂、ね」
 成る程、それならつじつまが合う。はったりという可能性もあるが、信憑性は高い。土方が突入をためらうのも判る。
 問題は、桂がなんでそんなことを親切にも教えてくれるかだ。
「ここで俺らの足止めさせるとして、作戦が別のものに変わってるとか? それとも、突入してきた俺らを一網打尽にしようとしてるとか」
 真選組がどうなろうと、桂には関係ないのだ。それとも、昔同志だった奴らに何か思うところがあるとか。だとしても、事がここに至る前に手を打つだろう。四大人斬りのうち一人を有するとは言え、あの程度の奴らに。いや。
 桂が決して無視できない相手が、たった一人だけいる。奴なら。
 もう一度、目標のビルを見上げた。沖田から見て右隣のビルとは、細い道路を挟んで少し距離を取っている。左隣は、非常階段どうしがくっつきそうなほど近い。
 頭の中で、作戦を組み立てる。テロリストどもの罠がどんなものであれ、仕掛け終えるまでこっちが待ってやる必要などない。警戒している暇はない。懐から無線を取り出し、スイッチを入れる。無茶な要求に通信先は蜂の巣をつついたような騒ぎになったが、知ったことではない。
「んじゃ、あと20分で始めやすから」
 土方の怒号が電波の先で響いたが、無視して通信を切った。公園の時計の針は、もうすぐ十二時を指そうとしていた。


 十二時十七分。
 ターゲットと隣り合わせたビルの非常階段を、途中まで登ってから踊り場で足を止めた。懐には買い求めた花火を改造した、即席爆弾がある(よい子は真似をしてはいけません)。ライターもよし。
 今いる場所からは、大通りに面した側しか見えない。けれど、先ほどから確かに交通量が減っている。封鎖は間に合ったようだ。認めたくはないが、土方の手際は相変わらず素早い。
 十九分。
 階段の柵を乗り越え、目指すビルへと移る。息をゆっくり吐く。袖からライターを取り出し、安全装置を外す。それを左手に、右手は非常口のドアノブに手をかける。
 時計の長針が、カチリと「4」を指す。
 パトカーのサイレンがけたたましく鳴り響き、正面玄関に突っ込む。十台近くが、ビルの正面玄関と裏口を固めた。ばらばらと、武装した仲間が飛び出してくる。近藤もいる。土方も側にいる。後ろにいるのは一番隊の部下たちだ。目を閉じる。遠くても、剣戟の音を感じる。そして、壁一枚向こうに、慌てふためく気配。
 息を吸う。吐き出す。三、二、一。
「御用改めであるっ!」
 怒鳴ると同時に扉を開ける。数メートル離れたところに人相の悪い男が一人、その腰の刀を見止め、駆け抜け様に斬る。
「なっ?」
「曲者だぁっ」
「どっちがクセモノでぃ」
 曲がり角の先から出てきた男二人をそれぞれ一太刀で斬り伏せる。見取り図はまだ手に入れてない。沖田が知っているのは、このビル丸ごとが攘夷浪士どもの巣窟となっていることだけだ。
 それだけで、充分だ。
 さらに数人を斬り捨てる。駆け抜けた先が吹き抜けになっていた。そこに、真選組のバズーカよりも大きな大筒を、下に向けている男たちを見つける。
「罠ってこれかぃっ」
 だとしたら、見くびられたものだ。足を速める。沖田に気づき、斬りかかる男たちの間をくぐり抜ける。弾が込められ、導火線に火の点された大筒を、飛び込んで真っ二つに叩っ斬る。
「何ぃっ?」
「バカなっ」
 大筒を抱えていた男たちを沈黙させるのに、そう時間はかからない。手すりに立って、下を見やる。正面からのぶつかり合いで、あの荒くれ連中が後れをとる相手などそうはいない。あと罠があるとすれば、ここまでへの道にガスや電流を仕掛けるくらいか。
「だとしたら、制御室があるよな」
 最上階へ目を向ける。ここにはもう、用はない。階段へ向けて走る。数分後、沖田は最上階の制御室も制圧した。後は、暁党の首魁と、奴らを炊きつけたあの男だけだ。
「どこにいやがる、……っ!」
 視線を感じた。狭い部屋の中にいるのは、沖田の他には屍累累しかいない。どこから。
 は、と振り返る。窓の向こう、沖田が乗り込んだのととは逆隣のビル、その最上階に、いる。片手で煙管をくゆらせ、一つしかない眼を細め、口の端をいやらしく持ち上げて、沖田を見ている。
「いやがったな、高杉晋助ぇっ!」
 こっちは瓦屋根だ。屋上への道は、外の非常階段しかない。屋根伝いでは時間がかかる。回り道などしてられない。一度刀を鞘に収め、息を整える。イメージを固める。いける。斬れる。
「でぇぇぇぇぇぇいっ!」
 斬撃は強化ガラスを砕き、隣のビルの外壁にもひびを入れた。ここで即席の爆発物を取り出し、火をつけて投げつける。同時に床を蹴り、再度居合いを放つ。跳び移った先に攘夷浪士の影はない。が、構うものか。確かにここに、高杉がいたのだ。
 階段を見つけ駆け上る。踊り場を回り、最上階へと走る。
「出てこい、高杉ぃっ!」
「キャンキャンとうるさい仔犬だな」
 ホテルだろうか、狭い廊下の奥から、ゆっくりと紫の影が姿を現す。思わず息を飲んだ。向こうは煙管を持ったまま、こちらは抜き身の刀を手にしているというのに、この距離で途方もない威圧感に襲われる。ちりちりと、首の後ろが焼かれるように痛い。
「弱い犬ほどよく吠えるたぁ、本当だな」
「言ってろ。てめーの罠は食い破ったぜぃ。後はてめーだけだ、神妙にしろぃ」
 高杉は喉を震わせた。煙管を口にくわえ、紫煙を吐き出す。
「よく吠える上に鼻も利かねぇか」
「何のことでぃ」
「罠を破った? 後は俺一人? ククッ、とんだ節穴だなぁ」
「!!」
 言葉を失ったのは侮辱された怒りのためではない。肌を指す空気の意味を、ここに来てやっと悟ったからだ。
 少なくない気配が、前後で蠢く。高杉の後ろから、沖田の背後から現れたのは、どいつもこいつも目つきの悪い浪人どもだ。刀を握る手に力を込め、取り囲むテロリストどもを睨む。
「罠はここさ、仔狗。一つ目を見破ったまでは良かったが、詰めが甘かったな」
「それは貴様もだ」




                               ~続く~
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by wakame81 | 2009-12-02 00:46 | 小説。  

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