お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

学園HEAVEN!?:後

後編ですー。あれ、なんでこんなにかかってるんでしょう?







「さすがじゃねーですかぃ、坂田センパイ。土方さんでもこいつかわすのはそうそうないですぜ」
 きれいに着地すると、薄茶頭こと沖田はしゃきっと右手を挙げる。
「んじゃ、急ぎますんで」
「こらこら待てーい」
 その襟首をがしっと掴む。踏ん張るかと思った体は抵抗もなく、首根っこ捕まれた猫よろしくぶらーんとぶら下がった。
「何ですかぃ」
「急ぐってどこ行くのかね総一郎くん? 第一屋上は立ち入り禁止だし、廊下は走っちゃいけないよ?」
「立ち入り禁止守ってんのもそうはいないってこと、アンタも知ってるでしょう? ついでにここは廊下じゃなくて階段だし、俺の名前は総悟でさぁ。それに」
 ニっと口端を持ち上げる。童顔のために愛嬌あるいたずらっ子のような表情だが、その裏に隠されたものを、すべてではないが知っている。
「センパイの聞きたいのは、それだけですかぃ?」
「……どーゆー意味よ?」
「センパイは、本当は誰を捜してここまで来やしたか?」
 やなヤローだ。こっちの内情を、おそらく正確に気づいてやがる。
「桂センパイは、上にはいやしませんぜ」
 笑みを深くすると、沖田は銀時の手を払った。軽やかな音を立てて着地する小柄な後輩を、今度は追わずに間合いから逃す。
「じゃぁ、どこに」
「さぁ?」
 んじゃ、急ぎやすんで。
 ひらひらと手を振って、沖田は階段を駆け降りていく。数秒ほどその後ろ姿を見送って、やおら銀時は頭をがしがしと描き毟った。
 沖田の言葉を額面通りに受け取って、後悔したことがないわけではない。土方に比べたら銀時の実害はその半分もないだろうが、それでもある一点に関することだけは別だ。
 わずかに迷い、銀時は階段を登ることを選んだ。言葉が信じられないなら、この眼で確かめるのがいい。
 今回は、沖田は銀時を騙したわけではなかった。そして、消去法から銀時は、ことの真相を掴んだのだ。


 力任せに引き戸を開けた銀時は、だがそこですべての勢いと気力を殺がれた。
「あ、銀ちゃん」
「銀時。どうした?」
「そりゃぁこっちが聞きてぇよ……」
 国語第三準備室、別名漫才研究会部室。ほとんど物置と化しているその小さな部屋は、部ともいえない小さな同好会の、秘密基地となっている。そこで、何故か桂は後ろ手に手錠をかけられて卓上ライトを向けられ、サングラスをかけてぶかぶかのコートをまとった神楽に八橋をあーんさせられていた。
「……なにやってんの。」
「何って、見てわからんか。そのまんまだろう」
「わかんねーよ。何から何まで意味不明だよ」
「仕方ないアルな。このグラさんが教えてやるネ。修学旅行のオミヤゲを食べさせてやってるアル」
「なんで土産渡すのに、手錠かけて縛りつける必要があんだよ。なんだよその格好、どっかのハードボイルドでもキメてるつもりか?」
「さすが銀時、よくわかってるではないか」
「マジでか」
 脱力して座り込む。その間に二人は、「いい加減、吐くアル。言わなきゃなんにも伝わらないネ、お前の苦しみも、本当の想いも」「リーダー……」「リーダーじゃない、デカチョウと呼ぶアル。さ、これでも食うヨロシ」と、謎のコントを繰り広げている。
 というか、すっかり勘違いをしていた。普段高杉は神楽をガキとは呼ばない。小娘扱いである。それに、しっかり騙された。
「わざとだなあのヤロウ……」
「美味い、美味いですデカチョウ」
「そうだろうもっと食うネ。これが、幸せの味ってもんよ」
「死んだ祖母にも食べさせてやりたかった……」
「てかいつまでやってんだよその三流芝居」
「芝居じゃないアル、コントネ」
「銀時。ここは漫才研究会だぞ。ただ遊んでるのではない、練習をしてるに決まってるだろう」
「遊んでるだろーが思いっきり。すでに刑事ものでもなんでもなくなってるよ」
 言いながら乱暴に、おもちゃの手錠を外した。なんで邪魔するネ、痛いじゃないか銀時、という苦情のたぐいは無視して、赤くなった手首をつかみ、引っ張りあげる。
「銀時」
「うっせぇ、とっとと帰るぞ」
「銀ちゃん、何勝手にヅラつれてくアルか」
「お前んなことしてるヒマあんの? レポートどうすんだよ」
「ヅラが手伝ってくれるアル」
「バカですかー。行かなかった三年に手伝わせてどーすんだよ。とっととクラス戻りなさい」
 ふくれっ面の神楽をおいて準備室を出る。
『かわいい恋人がいるのに』
 お妙の言葉を、不意に思い出してしまった。そりゃ、最初に他の女の子についプレゼントを受け取ってしまったのはこっちだけれど、それは甘味につられたからで、決して浮気なんかじゃない。苦労してるのは、こっちの方だ。今だって、いつ桂の居場所を嗅ぎつけた沖田が襲撃してくるか判らない。
「銀時、どうしたんだ。何を怒っている」
「そりゃ、怒りたいのはヅラのほうだろうけどさ」
「何で俺が怒るんだ」
 その言葉に、ぴたりと足が止まった。
「というか、なんでそんなに不機嫌なのだ。月詠さんからケーキをもらったのだろう? それと、ヅラじゃない桂だ」
 ゆっくり、というより油を差してないロボットのようなぎこちなさで振り向く。窓から差し込む朱の光に染まった琥珀は、まっすぐに銀時を見つめる。
「ケーキのこと、知って? て、何で、え、怒らねーの?」
「だから何でだ。ケーキのことを知っているのは当たり前だろう。同じクラスなんだから」
「んで、なんでお前は怒らねぇの」
「何で怒る必要があるのだ。俺が怒ってるとしたら、リーダーを置き去りにしたことで」
 いやちょっと待て。
 月詠が銀時に好意を抱いているらしいことは、けっこう公然の秘密だったりする。それで行動を起こされて、銀時の恋人的立場なら、妬いたりするもんではないだろうか。よしんば月詠の真意に気づいてなくても、他の女からの贈り物を受け取るだけでも妬く女はいるだろうに。
「何で妬く必要があるのだ」
 説明を受けた桂は、きょとんと首を傾げてみせた。
「良かったではないか。小学校三年の時の、七夕のお願いごとが叶ったのだろう」
「んなこといつまでも覚えてんじゃねーよっ。てかそれ二年ときのだろ、三年ときは入院した先で看護婦さんにこっそり甘いものもらいたいだったわっ」
「あれ、そうだったか?」
 首を傾げながら桂は、でも嬉しかったのだろうと続けた。何だろうコレ、ひょっとして「誰が銀時を好きになろうと、銀時は自分を愛してくれると信じてるから」的展開になろうとしてる?
「こういうイベントは、相手が女子ならではだからな。俺ではつまらんだろう」
「つまんなくねーよ。男のロマンのわかんねーヤツだな」
「だから、女子からもらうのが良いのだろう? 俺とて男だ。どうせもらうなら、年上のできれば奥さんからのほうがいいと判っている」
「全然判ってねーよ」
 手首を掴み続ける気力もなくして、銀時はその場にしゃがみ込んだ。今度ばかりはダメージがでかい。胃袋が弱っているのに走り回って、その挙げ句がこれか。
「……何で俺ぁ、おめーなんかと付き合ってんだろ……」
「知らん。俺はお前ではないから、お前の理由など判るはずもない」
 労りの「い」の字もない言葉が、降ってきた岩かタライのようにのしかかる。本当になんで……とため息をつく耳に、至近距離でそれは届いた。
「俺とて、何でお前なんだろうと思う。好みのタイプはもっと年上の、酸いも甘いも噛みしめた未亡人あたりだと思ってたのに」
 慰めようとも思ってない言葉、なのに、少し低く柔らかい声音が、ひどく心地よく耳を撫でる。
「だが、不思議だな。お前がこうやって、うなだれたり落ち込んだりへこんだりするのが俺の前だけだと思うと、何だか嬉しい」
 まるで、独占しているみたいだ、と。
 顔を上げれば、すぐ目の前で琥珀が笑った。頭をぽふぽふと、叩くように細い手が撫でていく。
(……俺だって)
 猫を見かけたとか犬を撫でさせてもらったとか昨夜の飯がそばだったとか、そんな些細なことを眼を細めながら、真っ先に報告してくるのが自分なのだと思うと。いちご牛乳とパフェのフルコースを満願全席で並べられても敵わないほど、幸せな気持ちになるし。
 好きだ。と、感じる。
「……ヅラ」
「ヅラじゃない、かつうわっ?」
 膝を抱えてちょこんと座り込んでいるのを押せば、笑ってしまうほど呆気なく桂は後ろに転がる。起き上がるのを防ぐように、己の身体を前につんのめらせる。床と銀時の腕に挟まれて桂は、後頭部がいい音で鳴ったのにも気づかないようだ。切れ長の瞳が、わずかに丸くなる。
「ちょ、待て銀時」
「待てねー」
「いやそのちょっと待て顔を近づけるな」
「近づけなきゃキスできねーじゃん」
 押し上げようとする手をどかして、ゆっくりと顔を近づける。怯えたようにぎゅっと閉じた眼に笑って、自分も瞼を伏せる。薄い唇に、触れようとして。
「不純同性交友禁止。」
 だみ声と、唇に押し当てられた固い感触にいきなり邪魔された。
「アンタ達の仲を認めるときに、アタシはそう言ったね?」
「げっ、ババァっ」
「理事長と呼びな」
 バコンと一発殴られて、桂から引き離される。紺の留め袖の後ろから、悪ガキコンビがぴょこぴょこと顔を出した。
「どうせこうなるって思ってたネ」
「まぁ、そーゆーことで。センパイ」
「……お前らなーっ」
 怒れば、二人そろって桂の後ろに隠れる。こういう時だけ息があうのがまたムカつく。桂が後輩達の味方に回るのは、いつものことで。
「てか俺はいつになったらヅラといちゃつけるんだぁぁぁっ」
 答える神様は、ここにはいない。



                                      ~Fin~
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by wakame81 | 2009-11-18 23:53 | 小説。  

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