お知らせ

●6月24日の東京シティに、桂さんお誕生日二日前企画のアンケート本を作ります。つきましては、皆様にアンケートをお願いします。名付けて、「銀魂キャラクターなりきりアンケート「ヅラに誕生日プレゼントを用意しよう」です、よろしくお願いしまーす。
●桂マイナーcpアンソロ、2011年6月シティのコタ誕で発行しました。
●アンソロ本文に、誤字を発見しました。
お取り替え、てか修正については こちら をごらんください。
今現在、修正関連のお知らせはhotmailには届いておりません。「送ったけどやぎさんに食べられたっぽいよ!」という方がいらっしゃいましたら、拍手か こちら までお願いします(爆)

やさしい鎖

九月九日は松平のとっつぁん&京次郎さんの誕生日でもあり、うちのサイト始動日でもあり、マイエンジェルの誕生日でもあります。
5万ヒットも先送りしてるわけですし、何か記念的なことができる余裕もないのですが、せめてもというわけで、猫の怨返しネタなど。
……すいません、クロニクル原稿がんばりますー。







 じーーーっと佇む姿をつい見つけてしまったことを、銀時は激しく後悔した。道のど真ん中で中腰になり、固まったように動かない腐れ縁がいったい何をしているかなど、視線の先を見ずとも判る。
 ため息をついて通り過ぎようと試みる。奴は背中を向けてるし、こっちに気づくはずがないつーか気づくなと念じてはみたが、二、三歩後ずさりした途端、桂は顔を上げて振り向いた。
「おお、銀時。奇遇だな」
「冗談じゃねーよ……」
 体を起こした途端、桂とにらめっこをしていた黒ぶち模様の猫は一目散に走り出した。残念そうな声が、形のいい口から漏れる。
「もう少しで、ふにふにさせてもらえたのに」
「だったらこっちに気づくんじゃねーよ」
 がつんと思いっきり殴ってもまだ未練たらたらと猫の後ろ姿を見つめているのに、無性に腹が立った。


 桂のふわもこ肉球好きなど、今に始まったことではない。小さい頃などそりゃもう、猫を見かけては追いかけ回していた。野外授業の途中でもそわそわしっぱなしで、師の苦笑を買ったものだ。
「あの頃から全然成長してねーな」
「そんなことはない、分別はついたぞ」
「道のど真ん中で猫と睨みあいすることの、どこに分別があるんだよ」
「無闇に追いかけたりはしなくなっただろう。肉球にも肉球の都合というものがある。それを無視したりは、しなくなったぞ。あまり」
「してんじゃねーかよ」
 もう一度後頭部をはたく。痛いではないか、と口を尖らせながらも、視線は銀時ではなく道ばたに寝っ転がる猫に注がれたままだ。
「だいたい猫ってーのは、自分を構おうとする奴に寄ってこねーの。お前がいくら寄ってっても、逃げられるか引っかかれるかしかねーぞ」
「引っ掻かれるのなら本望だ。一瞬でも、肉球に触れることができる」
「……引っかくのと猫パンチは違うからな」
 こいつと会話するのは本当に疲れる。そう思った途端披露はどっと押し寄せてきて、ぐったりと肩を落とす。
「長閑だな、銀時」
「のどかっつーかのんきなのはお前だろ」
 普段は見ないほど幸せそうに眼を細めている男を見ていても嬉しくもなんともない。つまらなそうにあくびをして、視線を前へと向けた。
 長屋と長屋の間の割にはその道は広く、惜しみなく降り注ぐ午後の太陽に、よく暖められている。その日だまりに、転がる猫は一、二、数匹。猫ってこんなに無防備なイキモノだったっけかと、銀時は軽く思案した。
「……って何やってんだよ」
 いつの間にか、近くで毛づくろいしていた黒地に白のたびをはいたような模様の猫の側にうずくまり「ふにふにしてもいいですか」などとほざいていた後ろ頭を蹴飛ばす。当然猫は逃げ、責めるような眼で見られたが、銀時は恐れ入らない。
「何アホなこと言ってんだよ。お前は幼稚園児か、通信簿に思いつきでものを言いますとか書かれるガキか」
「餓鬼じゃない、桂だ。今のは不可抗力だろう。貴様はあのもふもふと肉球を前にして、ふにりたいという誘惑に打ち勝てるというのか?」
「ふつーは打ち勝つものなんだよ。……何見たこともないイキモノ見るような眼で見てんだよ」
 今度は顔面から殴りつけた。鼻を押さえてうずくまる桂の首根っこをつかんで、ずるずると引っ張る。こいつのアホな言動に、これ以上つきあってられるか。
「平和なものだな」
 桂にとってのパラダイスから引きずり出されようとしているのに、抵抗もせずそう呟かれる。
「何が」
「猫というものは、見る者の心を和ませる。よく言うではないか、眠る猫を見ると、自分も眠くなると。きっと、心を穏やかにする何かを、発しているに違いない。マイナスイーオン的な」
「英会話習ってどーすんだよ」
「猫とは、いいものだなぁ」
 その声音が普段から想像もつかないほどのんびりとしていてまるで猫のあくびのようで、思わず銀時は首根っこではなく髪を引っ張った。
「銀時痛い痛い」
「うっせー。何寝ぼけたような声出してんだよ。猫かおめーは。猫になりたいのか」
「あぁ」
 それは、ため息というにはあまりにもはっきりした声で。ばっと銀時は、振り向いた。
「なれるわけもあるまい。馬鹿か貴様は」
 そう言いながらも、焦がれるように眼を細める桂が実際どんな心境だったのかなどと。銀時には知るすべも、権利もない。


「つーか、今思いっきりなっちゃってるんですけど」
 茂みの下に潜り込み、丸くなる桂の姿を見下ろしながら銀時は呟く。
 まっすぐだった背中は丸くなり、しなやかな身体を黒くまっすぐな毛が覆っている。すっかり変わり果てちゃってと思いながらも、どこかでこいつらしい姿だと思う自分がいる。長く伸びた艶やかな黒いしっぽの毛など、そのまんまではないか。
 猫の恩返しならぬ怨返しをくらって大騒ぎしたのがつい先刻、今、桂は身体を縮こませて眼を閉じ、小さく喉をならしている。撫でられているわけでも、嬉しいわけでもない。猫は、傷を癒すときにも、喉をならすのだという。
 ホウイチにタイマン挑まれた時、桂は甘んじて猫パンチもとい攻撃を受けたのだという。打たれ強さに敬意を表されたのか、殴られながらうっとりするようなマゾっぷりに引かれたのかは判らないが、一応この街にいることを許されたらしい。その話を聞いたとき、こいつのアホっぷりは筋金いりだと呆れかえったものだ。
 猫になっても、変わらない。そう思ったはずなのに。
「…………お前、本気で猫になっちまうのかよ」
 自分の方が、猫化したのは遅い。銀時のタイムリミットはまだ先のはずだ。けれどそれ以上に、時間がないことを感じていた。
 自分だけ人間に戻っても、意味などない。
「猫なんかになるなよ。日本の夜明けを見るんだろ」
 たとえ、桂が心の奥底で何を思っていても。攘夷を捨てることなどありえないのだから。
 つん、と指先でつっついてみる。寝ているかと思った桂は、ふと眼を開いた。
「……何だよ、起きてたのか」
「いや、猫になった夢を見ていたニャン」
「夢じゃねーよむしろ夢だとよかったよ。てかニャンはやめろっつったろ」
「今のは、お前か?」
 猫になってもまっすぐなまなざしを向けられ、密かにうろたえる。まさか、あの独り言を聞かれたのではないだろうな。
「……今のって」
「もし今の猫パンチがお前なら、もう一度頼む。今度はもっと強く」
「ってアホかぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 手加減いっさいなしで殴っても、桂は幸せそうな顔をするだけだ。蹴り飛ばしても足の肉球にうっとりとするだけで、銀時の苛つきは収まるどころではない。
「もーお前は一生猫でいろっ。好きなだけテメェの肉球ふにふにしてろっ!」
「それはつまらんではないか。人様の肉球だからこそふにりがいがあるのだ。自分のでは自ぃ」
「うっせぇ黙れぇぇぇぇっ!!」
 地面にめり込む勢いで踏みつける。
 攘夷なんて諦めちまえと普段あれだけ思っているのに、こういう時にそれに頼ってしまう、頼らざるを得ない自分への苛立ちをすり替えながら。




                                  ~Fin~
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by wakame81 | 2009-09-10 23:51 | 小説。  

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